第6話 友達
「ちょっと、後田君」
放課後になって、またしても前野は俺に話しかけてきた。俺は正直、さっさと帰ってしまいたかったが……かといって、無視することもできなかった。
「……何?」
「私がした質問に、君は答えてないよね?」
なぜか高圧的にそう言ってくる前野。いやいや……答えてないんじゃなくて、答えられないのである。
困った俺は少し前野に反抗的な視線を投げかけてから話を開始する。
「……じゃあ、前野はどうなんだ? どうすればいいと思うんだよ?」
俺がそう言うと前野も俺がそんな質問をしてくると思っていなかったらしい。少し考え込んだように俯いたあとで、今一度、その綺麗な目で俺を見る。
「お願いする、とか?」
「……友達になってください、って?」
俺が聞き返すと、前野は当然だという感じで頷いた。どうやら、マジで……俺の前の席のクール系黒髪ロング美少女は友達がいないらしい。
「……えっと、前野は今までそれを誰かにやったことは?」
「ないよ。恥ずかしいじゃん」
「……恥ずかしがっているから駄目なんじゃないか? 思い切って誰かにやってみたらいいと思うけど?」
俺がそう言うとしばらく黙ったあとで、いきなり前野は立ち上がり、そのまま教室をでていってしまった。
……やれやれ。これで本当に誰かに……願わくば男子に、前野が頼み込んでくれれば問題ないだろう。
なにせ美少女に友達になってくれと言われて断る男子もいないだろうし……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます