第4話 準備が意外と面倒なんだね

前回、六甲山に登ったことで多少は登山の楽しさを知っ(てしまっ)た私木舞夢衣。

あれからというものの、続けるか続けまいか非常に悩んでいた。折角久しぶりに興味を持てたのだから無駄にはしたくないと思う反面、めんどくさいなぁ…と思う気持ちもある。正直1回登ったぐらいでは自分から進んで行く気にはなれないのが現状である。


そんなこんなで朝から布団にころがって悩んでいたある日、突然スマホに着信が入った。


〜〜〜♪︎


相手は数少ない友人の稲田知美であった。

「メッセージ送ってるのに全然見てくれないんだから電話しちゃったよ!」

「あーごめん見てなかった」

全然見てなかったなーと思い通知を見たら知美からの新着メッセージが20件以上。送りすぎだこいつ。

「まぁ怒ってないからいいけどねー。通知無視は今に始まったことじゃないし」

「よくわかってるじゃん。私のことをストーキングしてる成果かな?」

「待って待って待って私そんなことした覚えないんだけど……?」

「んじゃ……監視?」

「もっと悪くなってる気がしますムイサン」

「ところで何用?」

「面倒くさくなって話戻したね!?」

「騒がないの。要件ないなら切るよ? 眠いし」

「わー待って待って!! てか起きたばっかでしょ!!」

ちなみに今は朝の9時である。

「とりあえず来週暇ある?」

「あるにはあるけど……何やらかすつもり?」

「何もやらかしはしないよ! 1泊2日で山行こ!」

……。またか……って泊まりがけで?

「……ちょっと考えさせて」

「分かった〜。前日までに言ってね」

そこで通話終了。

どうしたものか…多分荷物とかは向こうがどうにかしてくれると思うんだけど……色々と不安しかない。

ただこれも経験か……特に断る理由も無いしなぁ…。

あれこれ悩んでも仕方ない。

よし。


「おっ、夢衣にしては早いじゃん」

「たまには私だって早いのよ」

「それで、どーする?」

「行く」

「了解!また連絡するね!」

こうして、泊まりがけの登山が決まったのである。


「何持ってけばいいの?」

「うーん……そっちが用意する物と言ったらねぇ…ご飯と水と着替えと……あと寝袋って持ってる?」

「今まで登山の”と”も知らなかった私が持ってると思う?」

「デスヨネー。んじゃ今回は寝袋含め諸々貸すからうちに取りに来てよ。母さんが使ってたのがあったはず。ついでにご飯買いに行こう」

「分かった。あとは?」

「んー……そんなものかなー」

「OK、今から行くね」

「待ってまーす」


そんなこんなで家から歩くこと20分ちょっと。知美の家に到着。

「お邪魔します」

「いらっしゃーい。これが言ってた寝袋ね」

「ありがt……うわっちっさ!!!」

渡された寝袋はなんと縦20cm、幅40cm程に丸められたものだった。私としてはこれの2回りぐらい大きいのを考えていたので、なかなかの衝撃であった。

「発掘した時私もびっくりしたね。ここまでコンパクトになるやつだったら諭吉さんが飛んでいくよ〜」

「ひえぇ恐ろしい話だ……」

登山用品って高いんだなと実感させられた。

……ってか知美のお母さん登山ガチ勢……?


その日の夜。

ご飯! 食器! 水! 着替え2セット! 防寒具! 借りた寝袋! これまた借りたヘッドライト! そして買い揃えた日用品!

全部放り込め! ……ってわけにもいかず、一つ一つ綺麗に詰めていくことにした。難しい作業じゃないけど、面倒くさい。

確か「でかいものは下、重いものは背中側、あとは適当」って言ってた気がする。なのでその通りに詰めてみる。

最下層に寝袋を横倒しに入れ、その上に水を乗っける。水の横に着替えと防寒具を入れその上に食料を置いてOK、完成。他は空いてる隙間に適当に。

おぉ…なんかそれっぽい感じになった。あとは貴重品を忘れずにして準備完了!

あとは明日を待つだけである。不安は残るものの、何とかなりそうな気はする。

特にやることも無かったので、明日に備えてふかふかのベットにinして眠りについた。


翌日の朝、昨夜の不安は早々に的中した。

「……寝坊した〜〜〜!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る