第32話 新魔法のお披露目3
重力魔法:斥力陣(重力加速度-1G)
自分の足元に魔法陣を展開して、効果範囲を指定した
これだけで準備完了だ。自分に向かって飛んでくる者達を待つことにした。
「三人かな?」
まあ、妥当な人数かもしれないな。しばらく待つと、自分の前に降りて来た。
「……回復魔法の使い手とは、貴様か?」
挨拶もないのか。騎士というのは、やはり傲慢だと思うな。
「町の外に放置されていた人達を治療したのは自分ですが、なにか?」
「着いて来て貰おうか。治療させたい者がいる」
「お断りしたら?」
騎士が剣を抜いてきた。威嚇かな?
「バカなんですか? 医者を怪我させて、動けなくしてから、治療をしろと?」
騎士は黙ってしまった。今までは力ずくで言うことを聞かせてきたのだろうな。
まあ、実力があって騎士の地位に就いたのだ。それと各地の不満を抑えているとも聞いたな。
反乱の抑止力になっているとか。
その絶対的優位を覆してやろう。
光魔法:炎光棒
自分は、棍棒を製作した。
光子を集めて、炎で反射させただけの棒だ。ただし、光子の密度はかなり高いので、物理的にもかなり硬い……、いや、実質的に破壊不可能な棍棒を製作した。エネルギー準位の高いレーザーを固めただけだけど。
前の世界では、科学で不可能だったことも、魔法があると実現出来るのは魅力的だ。物理法則と魔法が組み合わさると、結構危ない物が作れる。まあ、この世界を消滅させかねない魔法も思いついているので気を付けないといけない。
自分も武器を作り出したので、騎士の表情が険しくなった。
「最後通知だ。我々と共に来い!」
「お断りましす」
騎士が、【空間切断】を放って来た。横なぎに自分の脚を狙って来たのだ。
だが、斥力陣に触れた時点で、明後日の方向に弾き飛ばされた。
騎士が驚いている。自分は思わずニヤけてしまった。
「何をした!?」
答えるわけもない質問を受ける。
そのまま、一足飛びで間合いを潰し、騎士の頭めがけて炎光棒を振った。
騎士は、【空間断絶】を展開して防御しようとして来たが……。
──バリン
炎光棒が、【空間断絶】を打ち砕いて騎士の頭を叩いた。
私が思うに空間魔法とは魔力により空間を歪める魔法だ。だが、光の速さこそが絶対である。固めた光子を接触させれば、魔力による空間の歪みは解除される。まあ、単純な物理だ。それを魔法により実現させる。
騎士は、吹き飛ばされて、地面をバウンドしながら車輪のように転がって行った。
正直、笑いが止まらない。
絶対的優位を持ち、余裕を見せている相手を無力化したのだ。
「何をした!?」
だから、答える気はないって。残り二人を見る。
また、【空間切断】を放って来たが、斥力陣が全て弾く。どんなに連打されようが、自分に届くことはなかった。
「重力のある空間というは、厳密には歪んでいるのですよ。まあ、歪んでいるといっても安定はしているのですけどね。その安定を崩すと、空間魔法はその安定性を失います」
「何を言っている?」
「あなたたちの空間魔法はもう攻略されているということです」
「空間魔法は、無敵の力だ! あの強大な力を持ったエルフ族ですら、撃退したのだ!」
それは昔の話だろうに。いや、自分のいなかった世界の話だ。
もう話すこともない。ボコってお帰り願おう。
自分が、炎光棒を向けると騎士が、空に向かって手を挙げた。
上空を見ると、魔法陣が展開されている。空間収納の魔法陣かな?
次の瞬間、大量の土砂が降って来た。
「なるほどね。大質量による押し潰しか……」
しかし、捕まえに来たのに、殺そうとするのはどうなのだろうか?
そんなことを考えていると、土砂に埋もれて視界が遮られた。
「……殺ったか」
「おい! 捕縛して街に連れ帰るのが任務だったんだぞ?」
「我々に盾突いたのだ。一人怪我を負っているし、証拠はある。まあ、技術を盗めなかったのは残念だが、いたしかたあるまい」
重力魔法:斥力陣(重力加速度-10G)
土砂を吹き飛ばして、拘束を解いた。
土煙が晴れると、騎士が驚いた顔で自分を見ている。
「まあ、予想通りですね。回復魔法の技術を強奪しようと考えたわけですね」
騎士達は自分の声に唖然としていた。
「……ゲームの攻略って言うのはですね、厳密には二択しかないんですよ。クリエイターが決めた手順通りに進めて行くか、クリエイターが想像していなかった方法を考案するかの二択なんですよ」
「何を言っている?」
「まあ、独り言です。自分は空間魔法を攻略したと、偉い人に伝えてください」
「空間魔法は、最強の魔法だ!」
固定概念に捕らわれた人だな。低レベルすぎて笑いが止まらない。
間合いを詰めて、炎光棒で攻撃をする。また、【空間断絶】で防いできたが、破壊して騎士を吹き飛ばす。
三人をボコってその場を後にすることにした。
「あ、そうそう。自分はこれから『氷の王女』に会いに行きます。回復魔法が知りたいのであれば、騎士全員でかかって来てください。万が一負けることがあれば、教えますよ」
動けない状態で自分を睨んでいる騎士に、メッセンジャーになって貰おうと思い、そう言い放った。
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