第31話 新魔法のお披露目2

 回復魔法:生命力変換



 とりあえず軽症者には、ポーションが行き渡ったので、今度は重傷者の対応だ。

 魔力を直接生命力に変換して、細胞を活性化させる。とりあえず、生きているのであれば、回復は出来るだろう。

 特に多いのが、内臓にダメージを負った人達だった。確率はかなり低いが、生き延びられる場合もあるため、苦しんでいても生かしているらしい。外科手術が発達する前の世界は、こうだったのかな……。

 片っ端から回復させて行く。

 ただし、欠損部位の修復はことにした。

 出来なくもないが、魔力をかなり消費してしまう。それに、この世界の人達にも考えて貰おうと思う。



「ふぅ……、終わりかな?」


「うふふ。お疲れさまでした。いえ、ありがとうございました」


 ちょっと疲れたので、本音が出た。それにマリナが反応してしまった。

 視線が合ってしまい、互いに笑い合う。


 それを見たマリナの同僚が、割って入って来た。


「とりあえず、皆で食事をしましょう。炊き出しは始めていますので。それとイチャつくのは、二人きりになってからにしてね」


 マリナが真っ赤になる。

 いや、イチャつくって……。

 空を見ると、日がだいぶ傾いていた。これから起きることを考えると長くは居られないな。


「すいません。予定が大分遅れてしまったので、自分は次の街に向かいます」


「「え?」」


「あまり時間をかけられない旅をしていまして。次は、


 一度驚いた後に、残念そうな顔をする、マリナ。


「あ……あの、せめて食事だけでも」


「そうですね。炊き出しを一杯貰いましょうか」


 マリナが、慌てて炊き出しを持って来てくれた。それを生きよい良く掻き込む。


「ごちそうさま。美味しかったです」


「ソラさんは、世界中を回っているのですか?」


「う~ん、そうですね。世界中を回ることになるでしょうね……」


「また、この街に来られることもあるのですよね?」


「ええ、多分来ることもあると思います」


「その時は、声をかけてくださいね!」


「マリナさんのことは、覚えておきます。次にこの街に来たらお話を聞かせてください」


 マリナは、満面の笑みであった。

 見送りを受けて、街を出る。


「さて……、準備しておくか」


 自分は宝箱からオリジナルの属性の指輪を取り出し、三個指にはめた。

 膨大な魔力が集まって来る。本当は一個で良いのだが、まあ保険だ。

 後は、いつ来るかだな。





 夜道を歩く。今夜は月明りも無いので、本当に真っ暗だ。

 途中で松明を作り、足元を照らしながら進む。


「む?」


 何かが自分を取り囲んだ。数は複数であり、魔力が感知出来る。だが、人ではないな。

 自分が立ち止まると、姿を現した。


「狼じゃないな。狐かな?」


 多分、魔物の分類に入ると思う。尻尾が二つあるし。そして、火魔法を纏っている。

 ちょうど良いや。実践の前に実験になって貰おう。



 植物魔法:草襲葉縛



 獣道なので、足元には草が生えている。その草を操作して、狐達を攻撃もしくは拘束して行く。

 だが、さすがに獣だ。瞬時に危機を悟り、飛んだり跳ねたりして回避している。だが、空中に浮くか距離を取るかしなければ、そのうち捕まるだろう。

 そんなことを考えていると、一匹が噛み付こうと、自分に向かって飛んで来た。まあ、それほど速いわけではない。

 掌底で、飛んで来た狐の鼻を潰す。悶絶して足元に落ちた狐は、植物に拘束されて、体全体を草に覆われた後に動かなくなった。

 周りを見渡す。


「捕まえられたのは、十匹かな?」


 多分、数匹は逃げているだろう。この植物魔法は、スピードが無いな。少し考える必要がある。その後、狐は土に還って貰った。

 歩きながら考える。食虫植物とかが良いかもしれないな。まあ、本来の植物魔法は別な用途がある。

 戦闘に使えるかどうか、事前確認出来ただけでも良しとしよう。


 ──ピク


 反射的にその場を飛び退いた。

 暗くて見えないが、何かが飛んで来たと思う。まずいな、ここは開けた平地だ。暗闇の中からの狙撃は、避けようがない。



 光魔法:照明弾



 まあ、まんまだな。花火を上げ、あたりが見渡せるほどの光量を生み出した。目の前の獣道に一匹の魔物がいる。風魔法を纏っているな。イタチ? 鎌鼬というやつかな? 夜目が利くのであれば、結構危険な魔物だろう。



 土魔法:地雷



 その魔物の足元を爆破した。魔物は吹き飛んで行ったが、追いかけて一応止めを刺した。

 しかし、こんな魔物が街道に出るとなると、一般人は街から出られないのではないだろうか? この世界の常識を調べないといけないな。

 テオドラはどうやって逃げていたのだろうか? マリナさんの生活とか聞いておけば良かったかもしれない。

 ダンジョンから出てからは、疑問ばかりが貯まって行く。


「う~ん。優秀なブレーンが欲しい」


 本音が出た。神様にはパソコンを貰ったが、この世界のことは検索出来なかったのである。意図的に情報を制限していると思う。まあ、歩いて見て回れと言うことなのだろう。


 その後、三回ほど魔物の襲撃があったが、撃退しつつ道を進むと、夜が明けた。

 松明を消して、適当な大きさの石に座った。


「おかしいな……」


 多分、夜中には追って来ると思ったのだが、来なかったのだ。

 しばらく進んで来た道の方向を眺めていると、何かが飛んで来た。


「遅いって……。いや、夜間飛行は出来ないのかな?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る