第29話 新魔法
自分は考えていた。
『空間』とは何か? 『魔力』とは何か? そして、『四大属性魔法』の定義だ。
アインシュタインは、光の速度のみ一定であり、その他の物質や空間は、歪んでいるとか言っていたと思う。空間の歪みが、〈重力〉であり、質量と空間、そして時間は連動している……だったかな?
一応、授業で相対性理論とかも聞いたことがあった。まあ、理解は出来なかったが。
その時に、〈重力子〉や〈ヒッグス粒子〉について、嬉々として語っている講師が印象的だったな。あの講義は、ほとんどの人が理解出来ていなかったと思う。
まあ、好きな人は好きなのだろう。
余計な思考が過ぎったが、考えを戻そう。
まず、魔力だ。魔力とは、一種のエネルギーであり、精神と繋がっていると考えられる。
自分の〈バインド〉が特に顕著だと思う。『止める』ことをイメージして奇跡を発現させている。
魔法とは、本来であれば、精霊に魔力を譲渡して、奇跡を発現させる。
だが百年前の日本人は、魔力を直接操作して〈空間への干渉〉を創造したのだと思う。
なぜ、精霊を使わない奇跡を起こそうと考えたかは分からないが、今はもうどうでも良い。
例えば、今自分が『時間魔法』を創造したとしよう。それで空間魔法の使い手を圧倒しても、精霊の機嫌は取れないと思う。
命題というか、依頼は〈この世界の人々に四大属性魔法を使わせる〉ことだ。
一番簡単なのは、定空珠の効果範囲をこの世界全てに設定することだった。だが、それは止めた。
それで、この世界の人々が四大属性魔法を使い出すとは思えなかったのだ。多分だが、『新しい魔法』を考案すると思う。
「最悪なのは、ブラックホールの作成かな……」
〈魔力〉という得体の知れないエネルギーは、何に化けるか分からない。
物理法則を無視して、虚数空間とか作れているのだ。ブラックホールの概念さえ理解すれば、作成出来るであろう。
頭をガリガリと掻いた。
「やっぱり、四大属性魔法で空間魔法より有用な奇跡を発現させて、使用率を上げるのがベストかな……」
これで基本方針が、固まった。
◇
炎魔法→光魔法
風魔法→植物魔法
水魔法→回復魔法
土魔法→重力魔法
各属性魔法の上位版をイメージしてみた。まあ、テンプレ的にこんなところだろう。
まず、光魔法は、空間魔法の上位であり、〈空間切断〉や〈空間断絶〉であろうともその効果を打ち消すイメージを持つ。光の速さこそが絶対であるというイメージが構築出来れば最強になるだろう。
植物魔法は、そのままだ。植物の成長を促したり、逆に死滅させたりする。多分だが、魔法が発見された時には資源を増やすことを考えたはずだ。この世界の資源が豊富なのか、科学技術で補っているのかは分からないが、まあ知識として与えてしまえば良い。
回復魔法もそのままだ。ポーションは前世には無かった物であったが、魔法での傷の回復を行う人はいなかった。この辺も魔法として未熟だと思う。
最後に重力魔法だが……、斥力を発生させる方向で行こう。それならば、発展させられても大丈夫なはずだ。
イメージは出来ている。チート達よりもチートだな。
苦笑いが出た。
◇
ダンジョンルームで十日ほど特訓をして準備完了だ。
「よくそんな魔法がイメージ出来るね。ソラの前の世界では、魔法は無かったのでしょう?」
「魔法は無かったですけど、神話の話は残っていました。それと自分の生きた時代には、仮想空間というものがありましてね。アイディアを貰っただけですよ。何もないところから考案したわけではないので、それほど難しいことではないです。それと神様からパソコンを貰っていますしね」
「ふ~ん。魔法はないのにイメージはあるのね。不思議な世界だわ」
言われて気がつく。確かに異常かもしれない。『こんな力が欲しい』で魔力や超能力をイメージしており、それがファンタジーな世界観として世界中の人に伝わっているのだ。ギリシャ神話とか北欧神話など数千年前の人はどうやって考えたのだろうか?
それと自分が好きな封神演義である。古い神と新しい神が混在しているとかで、作成年代が不明だが、『
まあ、もう調べようがない。考古学者でも分からないであろう。
「ハルカ、テオドラ。少し遠征してきます。ダンジョンは、凶悪なトラップを設置しましたが、八層の魔人達のエリアに騎士が到達するのであれば、属性の指輪を渡して帰って貰ってください。特にテオドラは、降伏などしないでくださいね」
「妾は、家臣を見捨てることが出来ぬ……」
「ハルカ。申し訳ないですが、万が一の場合は、ダンジョンルームに魔人達を全て転移させてください」
「……まあしょうがないよね。良いわ。許可してあげる」
「ありがとう」
ハルカに新しい装備を作って貰った。全身黒で統一されており、フード付きのコートを羽織っている。一応、カーボンファイバー製のプロテクターも作って貰った。
黒一色のとても印象に残る服装だろう。いや怪し奴だというイメージを持っても貰う演出だ。これで準備完了だ。
とりあえず、始めの街に向かおうか。
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