第24話 迎撃

 気持ち良く寝ていた。

 だが、また起こされてしまった。


「おはよう、ハルカ。誰か来ました?」


「騎士が来たよ。五人が『飛翔』でダンジョンに入って来たの。その後、冒険者を殺し回っているわ」


 慌てて飛び起きる。

 拡張現実〈AR〉を起動して、冒険者の動向を確認する。

 何してんだ、こいつら……。

 本当に無差別に殺していた。


「ハルカ。これは誰? さっき『騎士』って言ったけど、どんな人達なの?」


「この世界では、冒険者の功績が認められると、王族貴族から騎士の称号を受ける人達がいるの。上位空間魔法の使い手よ」


「何で冒険者を殺し回っているの?」


「ダンジョンポイントにしようとしているわ。国に有益と認められたダンジョンは、ああゆう事がしばしば起こるの」


「魔物を持って来ることはしないのですか?」


「それは、人族に聞いてよ」


 頭が痛い。と言うより怒りが込み上げてきた。

 まあ、これがこの世界の普通なのかもしれないが、狩るのであれば、自分が彼等を狩ろう。

 計画変更である。

 ダンジョンの一層に、四大属性の指輪を大量に配置するか。


 そして、騎士達には消えて貰おう。


「ソラ。顔が怖いよ」


「ごめん。今は感情を抑えきれない」


「……うん」



 さて、この世界の上位魔法の使い手との戦闘だ。

 油断せずに行こう。


「ハルカ。七層の出口に【転移】してください」


「本当に大丈夫?」


 大きく、息を吸って吐く。深呼吸だ。


「大丈夫です。頭はクールにですよね」


 ハルカは心配そうな顔で送り出してくれた。





 ダンジョン七層の出口で待つ。多分、一時間もせずに、騎士は来るだろう。

 足元には、四大属性の指輪が入った宝箱も設置済みだ。ハルカに頼んでちょっとした細工もしてある。


 音が聞こえて来た。破壊不可能なはずのダンジョンを壊している音だ。

 こうなると、六層も難易度を上げておいたほうが良いかな。今後、手強い相手が来るだろう。

 拡張現実〈AR〉を起動して、騎士の動向を確認する。もう、目の前だ。



 騎士の一団が、ダンジョン七層の入り口に到着した。計五人。

 一人が、『飛翔』で飛び上がった。

 訓練されている。全員が一斉に飛べば、勝ちが確定したのだが。


 少し下がって、姿を隠す。

 騎士の一人が、七層の出口に到達した。そこには宝箱を置いておいた。

 騎士が、宝箱に触れる。

 ここでトラップ発動!! ハルカに頼んでおいたトラップだ。


 雷が落ちるほどの電力が、騎士を襲った。騎士が感電したのだ。

 目も眩む光と、空気を切り裂く音が、ダンジョン七層を襲った。

 騎士はまだ生きて入るだろうが、丸焦げだ。口から煙を吐いている。



  土魔法:石球



 雷で痺れている騎士を、ダンジョン七層の大穴に落とした。

 暗闇に消えていく、騎士。

 ダンジョン七層の大穴は視認出来なくなった時点で別な空間へ飛ばされる仕組みだ。もう、この世界には帰ってこれない。

 異世界転移を楽しんで来てください。まあ、生きていればだけど。


 さて、残りは四人。どうするか。

 再度、拡張現実〈AR〉を起動して、騎士の動向を確認する。話し合っている。

 意見が纏まったのかな。一斉に剣を抜いた。


 そして、無差別に【空間切断】を放ってきた。

 ダンジョン七層が破壊され始めたのだ。


『ハルカ。現状を教えて!』


『こっちが聞きたいよ。七層が閉じようとしているわ。何が起きているの?』


『騎士が、無差別に七層を攻撃しています。意味が分からない』


『七層を消そうとしているのね。このままでは、七層は消滅してしまうわ』


 この百年で、空間魔法の認識と、ダンジョンへの応用が深まったのだろうな。

 亜空間で出来ているダンジョンを破壊するとか、自分には思いつかなかった。

 だが、思案している暇はない。


『ハルカ。定空珠の複製は終わっていますか?』


『うん、定空珠の複製は終わってるよ』


『定空珠を使用して、七層では空間魔法を使用出来なくしてください』


『了解! すぐに実行するわ』


 ハルカは本当に優秀だな。自分の寝ている間に色々と準備してくれていたのだろう。

 先手を打って動いてくれるのは助かる。


 しばらくすると、七層も静かになった。

 さて、騎士をどうするかな。帰られると面倒だ。



『ハルカ。騎士の足元を崩して、ダンジョン七層に無理やり入るように仕向けてください』


『うん。やってみる』


 少しすると、ダンジョン七層の入り口付近で大爆発が起きた。

 足場が無くなり、騎士達が落ちると思ったのだが。

 まだしぶとくダンジョンに残っている。

 二人が飛んでおり、二人が壁にしがみついている。この四人は、危機に即座に対応した優秀な人材だと言える。

 さすが、王家に認められた騎士といったところか。

 だが、見逃す気はない。


 まず、壁にしがみついている二人には、ヤモリ型の魔物を襲わせる。数十匹に群がれて動かなくなった。

 次に飛んでいる二人を見る。風魔法と火魔法で飛んでいる。



 風魔法:刺弾狂乱二十射



 ダンジョン七層の出口に出て、姿を表す。飛んでいる二人は驚いていた。

 魔法で撃墜しようとするが、当たらない。まず広すぎるし距離がありすぎる。

 仕方がないか。



「エアロバインド!」



 ダンジョン七層の上空の空気を固めて落下させる。

 風船のような物に押される感じで騎士の高度が落ちてきた。

 一人は、風魔法で相殺し始めたが、ここでハルカのトラップ発動。

 突然、竜巻が二人を襲う。


 飛んでいた騎士二人は、ダンジョン七層の大穴に消えて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る