第22話 王城

◆王様視点



 辺境の街より、献上品が届いたと知らせを受けた。

 献上品など、毎日大量に送られて来る。それなのに報告してくるという事は、珍しい品なのだろう。

 期待はせずに見ることにした。


 献上品は、指輪であった。

 宝物庫の管理者が、何かを言っている。


「その指輪をつけると、魔法が使えるようになります」


 ──ガタ


 前後の言葉は聞き取れなかった。いや、聞こうとしていなかったのだが、その言葉だけが頭に入ってきた。反射で立ち上がってしまった。

 そのような宝物など聞いたことが無い。考えながら、歩き出していた。

 王女の部屋に向かう。


 ドアが開かれたので、部屋に入る。


「あら、国王様。こんな時間にどうされたのですか?」


「ああ……。いや、突然済まなかったな。珍しい物が手に入ったのでそのまま来てしまった」


「珍しい物ですか?」


「この指輪をつけてみよ」


 王女は、首を傾げたが指輪を指にはめた。

 そして、驚愕の表情を浮かべる。


「え? 魔力が集まってくる?」


 次の瞬間、土魔法が放たれて、その部屋の床が抜けた。





「この指輪が出たダンジョンは、何処か?」


「虚空のダンジョンと連絡が入っております」


「聞いたことが無い。何処だ?」


「西の辺境にございます」


「騎士を向かわせよ。そのダンジョンは、王家直轄とする」


「あの指輪を解析すれば、量産が可能になるかもしれません」


「ならん。王女より取り上げることは禁止とする」


「はは、承知いたしました。では同等品の確保を最優先といたします」


「うむ、征け。持ち帰った者には何でも与えると伝えよ」


「はは!」


 あの指輪は、この世界を変える力があるやもしれん。

 何としても管理せねば。

 もはや敵はいないと思ったが、意外な場所から現れるやもしれんな。


 国などという組織は、僅かなゆらぎで倒れる。エルフの国が良い例だ。この世界を我が物顔で闊歩していたのに、異世界転移者一人に惨敗し、今や国を失うほどに失墜した。

 場合により、予も赴く必要があるな。いや、『勇者』を出すか……。




◆騎士視点



「西の辺境にあるダンジョンに行けと?」


「は! 王命とのことです」


「人数は聞いているか?」


「いえ、騎士を向かわせるようにとの指示がでたのみであります」


 ありえない。この国には、不満を持つ者が多くいる。その抑止力として我々騎士が控えているというのに。


「何があったのだ?」


「魔法が使える指輪が、ダンジョンから産出されたとの噂があります」


 考えてしまう。

 そんな物は聞いたこともない。ダンジョンからとは言え、そんな物はエルフ族ですら持っていなかった。

 しかし、そんな物があるのであれば、この世界の半分が王家に牙を向けるだろう。

 魔力至上主義を掲げ、他種族を奴隷としているのだ。この歪んだ政策はいつか破綻するとは思っていたが、そのきっかけになるかもしれないと言う事か。


「今動ける騎士は何人いる?」


「二十人とのことです」


「私を含めた十人で向かう。『飛翔』持ちから選抜せよ」


「は!」


 王命としては、産出した指輪の回収とダンジョンの踏破が目的となるだろう。

 しかし、辺境のダンジョンでとんでもない物が出たものだ。

 この国にはいくつかのダンジョンがある。たまに世界を変えてしまう物が産出されるが、今回はそれが出たのだろう。


 後は、他の街にいる騎士にも連絡しておくか。

 手紙を持たせれば良いだろう。


 勇者は、だな。

 歴代最強の呼び声高いが、強すぎて恐れられると言うのも厄介なものだ。実際、暴れられたら騎士全員で掛かって止められるかも分からない。

 目が冷めたら、誰も知り合いのいない世界など、地獄だと思うが、それが前国王が下した決断だ。

 私が生きている時代に勇者の封印が解かれない事を祈ろう。

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