第21話 ある貴族の思惑
◆虚空のダンジョンに近い街の領主視点
ダンジョンに異常があると報告を受けた。
あんな初心者冒険者でも最下層に行けるダンジョンに異変?
にわかには信じられなかったが、確認しないわけにはいかない。
戻ってきた冒険者達と、リーダーとなりえるベテラン冒険者を組ませて、ダンジョン調査に当たらせた。
結果は散々であった。三十人中十七人しか戻って来なかったのだ。
そして、街一番のベテラン冒険者を失ってしまった……。この街の冒険者の纏め役だったのだが。
これから、治安が悪くなることが予想出来る。何とかしなければ。
だが、収穫もあった。四大属性の指輪だ。
持ってきた、エルフと獣人は、ダンジョン内の『元日本人』を名乗る男に奴隷契約をされており、指輪を献上することを命令されていた。
私は、魔力が無い。軽い気持ちで指輪をはめると、その有用性が理解出来た。
これを、量産出来れば、高く売れる。いや、爵位を上げられる。そうすれば、こんな辺境等とはおさらばだ。
まてよ、世界の半分の人は、魔力が扱えないのだ。
特産品になるかもしれない。
冒険者が集まり、この辺境の街が、大都市に生まれ変わる可能性もある。
この後の行動は、慎重に取らなければならない。
私は成り上がるのだ。
とりあえず、風魔法の指輪は、私が使うことにした。そして、土魔法の指輪を王家へ献上することにした。
そして、冒険者達への聞き取りだ。
見たこともない装備の人族と思われる人物が、ダンジョンに住み着いたことしか分からない。
そして、『元日本人』か……。百年前の英雄の言葉を借りているだけかも知れない。
ダンジョンに住み着いた盗賊……。それが私の結論であった。
ただし、ダンジョンマスターと意思疎通が出来ているならず者。面倒である。
思案の末、冒険者には情報を公開することにした。戻ってきた、十七人が話し始める前に、領主からの報告として、冒険者に情報を提供することにしたのだ。
冒険者は、指輪の効果を聞くと、その価値を理解してダンジョンになだれ込んだ。
これで、治安悪化も防げるだろう。
冒険者は、実力の高い者しか名乗れ無いのだが、資格を取ると横暴な態度を取る者がほとんどだ。
お金を落として行ってくれるので、無下に追い出す事も出来ない。
この後は、王都から『騎士』が来るであろう。冒険者よりも更に上の実力を持った人達である。
その受入準備を始めなければ。
ここで面識を作り、中央へのコネとするのだ。
◇
◆ソラ視点
「ねえ、ハルカ。最近、冒険者が多くないですか? ダンジョン内で殺し合いをしているのですが」
「そうなるように仕組んだのは、ソラでしょ? この後、どうするの?」
「とりあえず、八層には魔人族が住んでいるので、七層を攻略困難な階層に改造したのだけど、ここまで来ると数人は攻略出来そうで怖いですね。本当に予想外でした」
「七層は、底のない大穴にしただけだけど? それが攻略困難なの?」
「無限に落ちていく大穴ですからね。飛ぶか、壁を伝わる以外に攻略方法は無いです。また、壁に張り付いて動ける魔物も配置したので、まず普通の人は攻略困難かな」
「ソラは、『飛翔』を持っている冒険者は来ないと思っているのよね?」
「今は、来ないだろうけど、もうすぐ来ると思います」
「その時はどうするの?」
「四大属性の指輪を渡して帰って貰おうかと。七層の出口に置いておけば良いかな? 八層に立ち入るなら、戦闘ですね」
「『飛翔』持ちが来るたびに指輪をあげるの?」
「そうなりますね。かなりの数を世界中に届ける計画です」
「ふーん。魔法を使えない人達を味方に引き入れる計画ね」
「ちょっと違いますけど、今はその認識で合っています」
ハルカが、首を傾げた。
「のう、妾からも良いかの?」
「テオドラ? 自分に質問ですか?」
「エルフと獣人はどうするのじゃ?」
「セシリアの方は、エルフの長となっている人を探すように命令しました。こちらも待ちですね。ルイスの方は、王都に行って情報収集して貰っています。そのうち帰ってくるでしょう」
「……分からんのじゃ」
「戻って来たら分かります」
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