第19話 冒険者の一団4
「結構、危なかったんじゃない?」
ダンジョンルームに戻ると、ハルカから図星を突かれた。
本当に命のやり取りを行ったのだ。
さっきのは初めての正面戦闘であった。しかし、不思議と心は落ち着いていた。
「魔法の年季が入っている人でしたね。自分のバインドに対して即座に対応されるとは思わなかったですよ。それよりも他の人達の状況を教えてください」
まず、三十人だったが、各層に三人ずつ【転移】していた。
【
八層の三人は、魔人族に見つかりタコ殴りにされていた。それにあの環境である。まともに動けないでいた。
【空間断絶】の魔力が切れたら終わりだろう。その前に、酸欠か肺が凍って死にそうだが。
魔人族は【空間切断】だけを注意すれば、被害は無いと思われる。
あ、テオドラが大量の水を冒険者に放水し始めた。
冒険者は、凍ってしまいそのまま息絶えてしまった……。
テオドラには、今度ウォータージェットとか教えてみようかな。酸性の水とか、即死系の水とかも良いかもしれないな。
残りは、獣人とエルフを除いた十人か。
荷物持ちの獣人は、他の冒険者に見つかったが、移動しようとしかなった。見捨てられても自分の命令を聞いてくれるのか。
いや、奴隷魔法が消えた事を感じ取っているのかもしれない。
目的のエルフは、十層にいる。
十層の残り二人が面倒だな。
『ハルカ。十層の出口に【転移】してください』
『え? そこだけど?』
……。そういえばそうか。
ダンジョンルームから出て、ダンジョン十層に出る。
拡張現実〈AR〉を起動して、冒険者を確認する。時間を掛けすぎてしまった為か、三人は合流していた。
エルフだけは、無傷で確保したい。
少し難易度が高いな。
冒険者は、ダンジョン十層からの脱出の為、九層と繋がっている階段を探していた。
自分は、階段の場所を知っているので先回りする。
「エアロバインド!」
ダンジョン十層の気圧を上げた。ちなみに自分は、風魔法の同時起動で快適な空間にいます。
冒険者を拡張現実〈AR〉で見ると、嘔吐を繰り返していた。気象病の症状だな。
だが、エルフは何事も無く立っている。種族特性なのだろうか?
慣れる前に、終わらせてしまおう。
油断せずに、定空珠を起動させる。
そのまま突撃した。
冒険者を視認する。
エルフ以外の二人はまだ、うずくまっている。
ここで、矢が飛んできた。
慌てて躱す。かなり正確な軌道である。
エルフが、自分を視認すると矢を放ってきたのだ。
面倒な状況になった。
エルフが、冒険者二人を守る位置に立って矢を向けて来る。自分は、一度立ち止まり距離を維持した。
「槍を持った冒険者は討ち取りました。隷属魔法は消滅していると思います。話を聞いて貰えませんか?」
「……」
無言で矢を放って来た。
信用が足りていないのだろうな。さてどうするか。
近づけば、矢を喰らうだろう。
火魔法:炎柱
あまり時間を掛けたくなかったので、簡単に行くことにした。
草原に炎が広がって行く。ダンジョン九層へ繋がる階段の前にも炎の壁を作った。
炎はエアロバインドにより、酸素濃度も高く一瞬で燃え広がって行く。
さあ、エルフはどうするかな?
自分はダンジョンルームに繋がる階段の前で待つ事にした。
今は、拡張現実〈AR〉でダンジョン十層の冒険者の位置を確認していた。冒険者の二人は、【空間断絶】で炎と熱を防いでいた。その後、炎の勢いが弱まると、【瞬間移動】の繰り返しでダンジョン九層の階段まで移動していた。この二人には帰って貰おう。
エルフは、炎を避けながら自分に近づいて来た。まあ、炎の壁で道を作り誘導しただけだが。
エルフが、視認出来る距離まで来た。
弓に矢をつがえている。
「……」
数秒の沈黙。
その後、エルフが弓矢を下げた。降参したのだろう。
この炎のフィールドで、弓矢で戦う無謀さは、本人が一番理解しているだろう。
水魔法で雨を降らし、ダンジョン十層の炎を消す。
『ハルカ。獣人をダンジョン十層に【転移】して貰えますか?』
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