第17話 冒険者の一団2

「湖が出来たのじゃ」


 テオドラから報告を受けて、そちらを見る。

 うん、いいね。飛ぶか、筏を使用しなければ渡れない様になった。

 これで、気軽にダンジョンに入る事は出来なくなったはずだ。


「ねえ、ソラ。説明して欲しいのだけど?」


 ハルカが怪訝そうな顔をして、自分を見ていた。


「あの冒険者達は、何で歩いているのか分かりますか? 【飛翔】もしくは、【転移】で来れば時間の短縮になると思うのですが」


「質問したのは、私なんだけどな。まあ、いいわ。まず、【飛翔】だけど、全員が出来るわけではないの。空間魔法の中でも、難易度が高い部類に入るのよ。今日は、三十人いるけど一人でも【飛翔】を覚えていなければ、歩きになるわ。それと【転移】だけど、目印マーキングが必要ね。これも一人でも出来ない人がいると、集団行動には不向きね」


「一番初めに、『アースバインド』で倒した冒険者は? 【集団転移】だったと思うのだけど」


「応用魔法ね。レベルの高い空間魔法使いは、パーティー全員に魔法を掛けることが出来るの。範囲化と言うのかしら? 【転移】に特化した空間魔法使いだと思うよ」


 思ったより不便なのだな。いや、この冒険者達はレベルが低いのだろう。

 【飛翔】の出来るパーティーが来た時が、このダンジョンの危機になるのだろうな。言ってみれば、今回の冒険者は、まだ雑魚である。一人くらいはレベルの高い冒険者がいるかも知れないが、まあ、問題ないだろう。


「ハルカ。エルフと獣人だけダンジョン十層に【転移】させることは出来ますか?」


「それはダンジョンのルール的に無理ね。そうね一番簡単なのは、トラップを踏ませる事かな? トラップを踏ませた後にランダムにダンジョン内に【転移】させれば、孤立させることは出来るわ」


 ダンジョンマスターも万能では無いな。

 いや、トラップか……。ダンジョンらしいと言えば良いのかもしれない。トラップの種類を考えたいが、今は置いておこう。


「それでは、湖の縁に全員が到着したら発動するトラップを仕掛けてください。 【転移】後は、一~十層にランダム配置になるようにお願いします」


「了解!」


 後は、奴隷契約を誰が持っているかだな。

 どうやって調べるか……。





 冒険者が、湖に気がついた。湖の手前で止まったのだ。

 何か話し合いをしている。

 慎重だな。良いリーダーがいるのだろう。だが、ダンジョン地下一層にいると気がついていない時点で、自分の掌の上である。


 冒険者が進みだした。迂回したり、飛ぶという選択肢は無いのか。この後は、筏を作るのだろうな。


 全員が湖の縁で止まり、ダンジョンの入口を見ていた。

 ここで、トラップ発動!


 全員がランダム転送された。


「さて、行くか。ハルカ、あの獣人のところに送ってください。その後は逐次指示を出します」


「うん。気をつけてね」


「気をつけて行くのじゃよ」


「ありがとう」


 二人の声援を受けて、獣人の元に向かった。




 自分は、荷物持ちの獣人の前に【転移】した。


「え!? ひ、ひぃ~!!」


 獣人は、自分を見ると驚いて尻もちをついてしまった。

 まあ、いきなり目の前に現れたら怖いだろうな。


「少し聞きたいのだけど、いいかな?」


「え? 誰ですか?」


 質問をしたのは自分だったのだが……。

 さて、何と答えようか。


「数日前に、このダンジョンで冒険者と戦った者と言えば通じるかな?」


 姿を見せて、二人ほどわざと逃したのだ。それで今回は三十人で来たのだと思う。

 獣人を見ると、真っ青だ。理解しているのだろう。


「ぼ、僕は戦えません。見逃してください」


 土下座してきた。

 ほう? 戦闘の意思は無いのか。話が速くて助かる。


「君は奴隷契約をしているよね? 主人は誰になるの?」


「槍を持った人です。街では古株の冒険者です。外観で言えば、壮年の男です」


 ふむ。分かりやすいな。


「エルフがいたよね。その人の主人も分かる?」


「僕の主人と同じ人です」


 これは楽になったな。一人で済むのか。


「まあいいや。君は助けてあげる。でも、ここから動かないでね」


「は、はい。動きません!」


 ハルカに合図を送ってその場を後にした。


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