第17話 冒険者の一団2
「湖が出来たのじゃ」
テオドラから報告を受けて、そちらを見る。
うん、いいね。飛ぶか、筏を使用しなければ渡れない様になった。
これで、気軽にダンジョンに入る事は出来なくなったはずだ。
「ねえ、ソラ。説明して欲しいのだけど?」
ハルカが怪訝そうな顔をして、自分を見ていた。
「あの冒険者達は、何で歩いているのか分かりますか? 【飛翔】もしくは、【転移】で来れば時間の短縮になると思うのですが」
「質問したのは、私なんだけどな。まあ、いいわ。まず、【飛翔】だけど、全員が出来るわけではないの。空間魔法の中でも、難易度が高い部類に入るのよ。今日は、三十人いるけど一人でも【飛翔】を覚えていなければ、歩きになるわ。それと【転移】だけど、
「一番初めに、『アースバインド』で倒した冒険者は? 【集団転移】だったと思うのだけど」
「応用魔法ね。レベルの高い空間魔法使いは、パーティー全員に魔法を掛けることが出来るの。範囲化と言うのかしら? 【転移】に特化した空間魔法使いだと思うよ」
思ったより不便なのだな。いや、この冒険者達はレベルが低いのだろう。
【飛翔】の出来るパーティーが来た時が、このダンジョンの危機になるのだろうな。言ってみれば、今回の冒険者は、まだ雑魚である。一人くらいはレベルの高い冒険者がいるかも知れないが、まあ、問題ないだろう。
「ハルカ。エルフと獣人だけダンジョン十層に【転移】させることは出来ますか?」
「それはダンジョンのルール的に無理ね。そうね一番簡単なのは、トラップを踏ませる事かな? トラップを踏ませた後にランダムにダンジョン内に【転移】させれば、孤立させることは出来るわ」
ダンジョンマスターも万能では無いな。
いや、
「それでは、湖の縁に全員が到着したら発動するトラップを仕掛けてください。 【転移】後は、一~十層にランダム配置になるようにお願いします」
「了解!」
後は、奴隷契約を誰が持っているかだな。
どうやって調べるか……。
◇
冒険者が、湖に気がついた。湖の手前で止まったのだ。
何か話し合いをしている。
慎重だな。良いリーダーがいるのだろう。だが、ダンジョン地下一層にいると気がついていない時点で、自分の掌の上である。
冒険者が進みだした。迂回したり、飛ぶという選択肢は無いのか。この後は、筏を作るのだろうな。
全員が湖の縁で止まり、ダンジョンの入口を見ていた。
ここで、トラップ発動!
全員がランダム転送された。
「さて、行くか。ハルカ、あの獣人のところに送ってください。その後は逐次指示を出します」
「うん。気をつけてね」
「気をつけて行くのじゃよ」
「ありがとう」
二人の声援を受けて、獣人の元に向かった。
◇
自分は、荷物持ちの獣人の前に【転移】した。
「え!? ひ、ひぃ~!!」
獣人は、自分を見ると驚いて尻もちをついてしまった。
まあ、いきなり目の前に現れたら怖いだろうな。
「少し聞きたいのだけど、いいかな?」
「え? 誰ですか?」
質問をしたのは自分だったのだが……。
さて、何と答えようか。
「数日前に、このダンジョンで冒険者と戦った者と言えば通じるかな?」
姿を見せて、二人ほどわざと逃したのだ。それで今回は三十人で来たのだと思う。
獣人を見ると、真っ青だ。理解しているのだろう。
「ぼ、僕は戦えません。見逃してください」
土下座してきた。
ほう? 戦闘の意思は無いのか。話が速くて助かる。
「君は奴隷契約をしているよね? 主人は誰になるの?」
「槍を持った人です。街では古株の冒険者です。外観で言えば、壮年の男です」
ふむ。分かりやすいな。
「エルフがいたよね。その人の主人も分かる?」
「僕の主人と同じ人です」
これは楽になったな。一人で済むのか。
「まあいいや。君は助けてあげる。でも、ここから動かないでね」
「は、はい。動きません!」
ハルカに合図を送ってその場を後にした。
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