第16話 冒険者の一団1

 まず、水の精霊の機嫌を聞いてみた。

 テオドラが言うには、多少喜んでいるとのことだ。


 精霊の希望はないかと聞いてみたのだが、四大属性魔法を使って欲しいとのことだった。

 テオドラに大量の水を作って貰うか。沼と言わずに、川や湖なんかも良いかもしれない。

 ダンジョン地下一層の改造案を考えて行く。


 世界の終末ラグナロクについても聞いてみたのだが、それは精霊がいなくなった世界のことなので知らないと言われた。

 ただし、ハルカとテオドラは何か知っていそうだな。驚いた表情をしていた。



「それで、これからどうするの? エルフのお姫様を助けに行くのでしょう?」


 ハルカが、刺々しい言葉で問いかけてきた。お姫様とは決めつけないで欲しい。一般人でも助けるつもりでいる。


「助けたいけど、居場所が分からないのでね。どうしようか悩んでいます」


「それでなのじゃが、提案がある。魔人族には飛べるものがおるのじゃ。上空から探してはどうじゃ?」


 思案してしまう。

 飛ぶ斬撃とか来る世界ですよ? 飛んでいても危ないと思う。

 エルフ族を探す方法が必要だな。【広域探索】とか欲しい。


 地図を広げて、エルフの居そうな場所を聞くが、ここからは遠い。

 その日は、大した進展は無く、話し合いは終わった。


 最後の方では、ハルカとテオドラが結構会話していたので、打ち解けたみたいで良かった。


 それと、ハルカに四大属性の指輪の複製を頼んだ。

 ただし、魔力の最大保有量は、自分の半分程度にして欲しいとの制限を設けての複製を依頼した。

 少し時間が欲しいとの事なので、出来上がったら見せて貰うことにした。

 それと、定空珠の複製だ。

 指輪が出来たら、ハルカにも定空珠を使ってもらおうと思う。多分だが、ダンジョンの層単位に効果を及ぼす事が出来るはずだ。

 少しずつだが、準備を進めていく。





 気持ち良く寝ていた時だった。また起こされた。

 目を開けると、ハルカの顔が目の前にあった。


「何かあったのですか?」


 まだ、覚醒しきっていない頭を回して質問する。


「何日寝てるのよ! ダンジョン地下一層に冒険者が入ってきたわ。どうするのか教えてよ!」


 数日寝ていたのか。

 拡張現実〈AR〉を起動して、冒険者の動向を確認する。

 人の街から三十人が、虚空のダンジョンを目指して進んでいた。

 まあ、この前の人達であろう。


「テオドラを呼んでください」


「ん? 何じゃ?」


 ダンジョンコアの影から、テオドラが出てきた。

 驚愕の表情で、ハルカを見る。


「ダンジョンルームに入れて良いのですか?」


「あの後少し話したのだけどね。入室許可を与えることにしたの」


 二人は、自分が寝ている間に打ち解けたようだ。

 何があったかは聞かない。喧嘩しなければ何でも良い。


「テオドラ。頼みたいことがあります。ダンジョン一層の入り口前に大きな湖を作ってください。大きければ大きいほど良いです」


「うむ。やっと活躍の場が与えられるのじゃな。頑張って大きな湖を作るとしよう」


「ハルカも手伝ってくださいね」


 ハルカがため息をついた。


「分かってるわよ。テオドラと協力して足止めするわ。でもそうね、大量の水を生成するだけではダメね。川も作りましょうか」


「助かるよ」


 二人共良い笑顔である。


「それと、軽く食べられる物をお願い出来ますか?」





 ハルカが、ダンジョン一層の入り口の前の土地を大きく窪ませた。そこにテオドラが大量の水を流し込んでいく。

 とてつもない量の水を生成し始めた。それこそダムの放流を彷彿とさせる量だ。

 それをハルカが、【転送】でダンジョン地下一層に送っていく。

 十分もあれば、水は溜まるだろう。


 冒険者を確認すると、歩きながら半分の距離まで進んで来ていた。

 拡張現実〈AR〉を起動して、冒険者の姿を確認する。


「あれ?」


 見なれない冒険者がいた。


「ハルカ。少し良いかな?」


「なになに?」


「冒険者を見たのだけど、見たことないというか見なれない人がいるんだ。教えてくれないかな?」


「どれどれ? あ~、先頭が前に話していたエルフね。それと荷物持ちは、獣人ね」


 新しい単語だ、獣人か。

 それと、【収納】があるのに、〈荷物持ち〉か。別な意図を感じる。


「獣人はどんな種族なの?」


「人族と同じ土地を好むの。かなり昔は共存していたんだけど、戦争に負けて今は人族に隷属しているわ」


 うーむ。人族に嫌悪感を抱いてきたな。


「テオドラが、奴隷魔法とか言っていたけど、あの二人も奴隷なのかな?」


「まあ、間違いなくそうね」


「奴隷の解放方法はある?」


「一番簡単なのは、主人が死ぬことかな。あとは、主人から契約の解除を宣言されると開放されるわ。無理やり契約を解除すると、悪影響が出るわね。具体的には、手足が動かなくなるとかかな。最悪なのが精神汚染ね」



 ……話が聞きたいな。開放を前提に作戦を立てるか。

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