第16話 冒険者の一団1
まず、水の精霊の機嫌を聞いてみた。
テオドラが言うには、多少喜んでいるとのことだ。
精霊の希望はないかと聞いてみたのだが、四大属性魔法を使って欲しいとのことだった。
テオドラに大量の水を作って貰うか。沼と言わずに、川や湖なんかも良いかもしれない。
ダンジョン地下一層の改造案を考えて行く。
ただし、ハルカとテオドラは何か知っていそうだな。驚いた表情をしていた。
「それで、これからどうするの? エルフのお姫様を助けに行くのでしょう?」
ハルカが、刺々しい言葉で問いかけてきた。お姫様とは決めつけないで欲しい。一般人でも助けるつもりでいる。
「助けたいけど、居場所が分からないのでね。どうしようか悩んでいます」
「それでなのじゃが、提案がある。魔人族には飛べるものがおるのじゃ。上空から探してはどうじゃ?」
思案してしまう。
飛ぶ斬撃とか来る世界ですよ? 飛んでいても危ないと思う。
エルフ族を探す方法が必要だな。【広域探索】とか欲しい。
地図を広げて、エルフの居そうな場所を聞くが、ここからは遠い。
その日は、大した進展は無く、話し合いは終わった。
最後の方では、ハルカとテオドラが結構会話していたので、打ち解けたみたいで良かった。
それと、ハルカに四大属性の指輪の複製を頼んだ。
ただし、魔力の最大保有量は、自分の半分程度にして欲しいとの制限を設けての複製を依頼した。
少し時間が欲しいとの事なので、出来上がったら見せて貰うことにした。
それと、定空珠の複製だ。
指輪が出来たら、ハルカにも定空珠を使ってもらおうと思う。多分だが、ダンジョンの層単位に効果を及ぼす事が出来るはずだ。
少しずつだが、準備を進めていく。
◇
気持ち良く寝ていた時だった。また起こされた。
目を開けると、ハルカの顔が目の前にあった。
「何かあったのですか?」
まだ、覚醒しきっていない頭を回して質問する。
「何日寝てるのよ! ダンジョン地下一層に冒険者が入ってきたわ。どうするのか教えてよ!」
数日寝ていたのか。
拡張現実〈AR〉を起動して、冒険者の動向を確認する。
人の街から三十人が、虚空のダンジョンを目指して進んでいた。
まあ、この前の人達であろう。
「テオドラを呼んでください」
「ん? 何じゃ?」
ダンジョンコアの影から、テオドラが出てきた。
驚愕の表情で、ハルカを見る。
「ダンジョンルームに入れて良いのですか?」
「あの後少し話したのだけどね。入室許可を与えることにしたの」
二人は、自分が寝ている間に打ち解けたようだ。
何があったかは聞かない。喧嘩しなければ何でも良い。
「テオドラ。頼みたいことがあります。ダンジョン一層の入り口前に大きな湖を作ってください。大きければ大きいほど良いです」
「うむ。やっと活躍の場が与えられるのじゃな。頑張って大きな湖を作るとしよう」
「ハルカも手伝ってくださいね」
ハルカがため息をついた。
「分かってるわよ。テオドラと協力して足止めするわ。でもそうね、大量の水を生成するだけではダメね。川も作りましょうか」
「助かるよ」
二人共良い笑顔である。
「それと、軽く食べられる物をお願い出来ますか?」
◇
ハルカが、ダンジョン一層の入り口の前の土地を大きく窪ませた。そこにテオドラが大量の水を流し込んでいく。
とてつもない量の水を生成し始めた。それこそダムの放流を彷彿とさせる量だ。
それをハルカが、【転送】でダンジョン地下一層に送っていく。
十分もあれば、水は溜まるだろう。
冒険者を確認すると、歩きながら半分の距離まで進んで来ていた。
拡張現実〈AR〉を起動して、冒険者の姿を確認する。
「あれ?」
見なれない冒険者がいた。
「ハルカ。少し良いかな?」
「なになに?」
「冒険者を見たのだけど、見たことないというか見なれない人がいるんだ。教えてくれないかな?」
「どれどれ? あ~、先頭が前に話していたエルフね。それと荷物持ちは、獣人ね」
新しい単語だ、獣人か。
それと、【収納】があるのに、〈荷物持ち〉か。別な意図を感じる。
「獣人はどんな種族なの?」
「人族と同じ土地を好むの。かなり昔は共存していたんだけど、戦争に負けて今は人族に隷属しているわ」
うーむ。人族に嫌悪感を抱いてきたな。
「テオドラが、奴隷魔法とか言っていたけど、あの二人も奴隷なのかな?」
「まあ、間違いなくそうね」
「奴隷の解放方法はある?」
「一番簡単なのは、主人が死ぬことかな。あとは、主人から契約の解除を宣言されると開放されるわ。無理やり契約を解除すると、悪影響が出るわね。具体的には、手足が動かなくなるとかかな。最悪なのが精神汚染ね」
……話が聞きたいな。開放を前提に作戦を立てるか。
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