第15話 新しいダンジョンの住人1
テオドラが落ち着くまで待つ事になった。
ここで、【念話】が飛んできた。ハルカからだ。
『この後どうするつもりなの?』
『ダンジョンに住まわせたいと思うけど、良いですか? 魔人達の好む環境を作って貰いたいと思うんだけど……』
『まあ、そうなるよね。それと、あの娘はどうするつもりなの?』
『テオドラのことかな? 新しい魔王になって貰いたいと思います』
『……回答になってないよ。ダメな人』
ここで【念話】が切れた。
何なのだ、まったく。言いたい事があるのであれば、言って欲しい。
暫く待つと、テオドラが戻ってきた。
そして、自分に頭を下げてきた。他の魔人族も同じ動作をする。
「この指輪を譲って頂きたいのじゃ。対価は何でも支払うつもりじゃ。体でも何でも言って欲しいのじゃ」
「それでは、とりあえず全員でここから移動しましょうか。まだ、安全とは言えないので。不満や疑問もあるでしょうが、今は従って欲しいです」
驚く、魔人達。
「保護してくれると言うのか?」
「まあ、そうですね。保護の後に協力して貰うかもしれませんが、とりあえず移動しましょう。それとその指輪は、友好の証として差し上げます」
ザワザワし始めた。
テオドラが、魔人達を諌める。
「承知した。そなたの傘下に入ることを誓うのじゃ。奴隷魔法でも何でも受ける覚悟じゃ」
いや、いらないのだがな。
ため息をついて、ハルカに合図を送るため、手を上げた。
その場にいた全員が、【転移】した。
◇
今は、ダンジョンの八層にいる。
寒い。そして、酸素が薄い。
標高はどれくらいだろうか? 多分、雲の上だと思う。
ハルカは、ダンジョンの八層目を、標高の高い山に変えてくれていた。
魔人達は喜んでいるが、自分は死にそうです。
火魔法で体の周りの温度を上げて、風魔法で酸素を生み出す。それでやっと意識を保っていられる。
魔人族と人族は棲み分けが出来ていると言っていた理由が理解出来た。
それと、山を下れば、動物が住んでいる森も作ってくれていた。これで自給自足が出来るのだそうだ。
ハルカは、とにかく優秀である。自分の足りないところを補ってくれた。
魔神達が、全員頭を下げて来た。
「とりあえず、ここで生活基盤を築いてください」
そう言ったら、また【転移】が起きた。
今度は、ダンジョンの十層だ。草原のエリア。目の前には、テオドラもいる。どうやら、二人だけ飛ばされた様だ。
そしてそこには、怒った表情のハルカが待っていた。腕を組んで仁王立ちである。何か地雷を踏んでしまったらしい。
そして、テオドラを単独で連れてくるのは問題が発生しそうなのだが……。
◇
とりあえず、倒木を椅子にして、三人で話を始める。
「えっと、紹介しますね。ダンジョンマスターのハルカと、魔王の娘のテオドラ。二人共仲良くしてくださいね」
何故だろう? 空気が痛い。
二人共、顔は笑っているけど、目が笑っていない。
「それで、これからどうするつもり?」
ハルカが聞いてきた。
「しばらくは、冒険者の迎撃かな。それでダンジョンを強化して難攻不落の要塞にしようと思います。でもそうですね。エルフ族も見つけて保護したいかな」
――ピキ×2
何だろう? 二人の表情がさらに険しくなった。
「ふーん。次はエルフのお姫様を助ける計画なのね」
何でお姫様なのだろうか? この世界の指導者は女性と決まっているのだろうか?
「この数日で分かったことだけど、精霊の機嫌を取るためには、空間魔法の使い手を倒すだけではダメだと思います。最終的にどうするかは決めていないけど、絶滅しそうな種族を保護して、精霊と会話出来る人を探すのが良いと思えてきました。まず助けたいのは、テオドラのお姉さんですね」
「ふむ。それでなのじゃが、妾は水の精霊と会話できるようになったのじゃ」
驚いてしまった。
もしかして、神様は指輪にそんな機能も付けたのだろうか?
いや、自分は風の指輪を付けた時に会話出来なかった。
何かしらの条件がありそうだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます