第11話 ダンジョン拡張1

「ダンジョンの入口の外をダンジョン化することは可能ですか?」


「入口の外? 出来なくは無いけど、亜空間じゃないから環境を変えることは出来ないわよ? 地形を変える事は出来るけど」


「索敵出来れば良いと思っています。それと、川を作って欲しいかな?」


「ソラは何時も意味不明な事を言って来るわね。まあ良いわ。具体的な話をしてね。詳細を詰めて行きましょうか」


 結果として、ハルカの能力は、ダンジョン内部だけだと言う事が分かった。

 情報が欲しいがここは仕方がない。


 そこで、冒険者が残して行った物資を漁ることにした。

 ハルカに聞くと、【収納】は全員が持っているわけでは無いことが分かった。 【転移】や【転送】に特化した人もいるのだそうだ。このあたりは、後から確認出来るだろう。


 物資の中に期待通りに地図があった。文字は読めないので、ハルカに翻訳して貰う。

 そういえば、冒険者とは会話が成り立っていた。ハルカに聞くと、自動翻訳機能で会話したのだそうだ。

 自分の訛りを笑われなかった理由に落胆してしまう。


 気を取り直して、ハルカに読み上げて行って貰うと、『虚空のダンジョン』が見つかった。

 ここが現在地になるはずだ。


 結構大きな森の真ん中に、断層があり、そこがダンジョンの入口になっているみたいであった。

 森の東側に街があり、ここは辺境と考えられる。街は自分がこの世界に来た場所だと思う。

 そして、さらに東に王都があるらしい。


 人口とか知りたいけど今はいいか。


「ハルカ。外の森をダンジョンに取り込んでください。そうですね、地下一層とでもしましょうか。範囲は、このダンジョンから東側の森の端までをメインにお願いします」


「はえ?」


 間抜けな声を出す、ハルカ。


「もしかして、出来ないですか?」


 ハルカが、ムっとして、唇を結んだ。


「出来るよ!! ダンジョンマスターに出来ない事なんて無いんだからね」


 ツンデレ口調である。自分の知識では、結構過去の遺物です。


 ハルカがダンジョンコアに手を当てて何かを送っている。多分あれが、ダンジョンポイントなのだろう。


 時間として一時間と言ったところだろうか。ハルカがこちらを向いた。


「終わったよ。マップを確認してみて」


 拡張現実〈AR〉を起動して、ダンジョンの全体図を確認すると、ダンジョンから街の近くまでが追加で表示された。


「ありがとう。予定通りだよ。ハルカは優秀だね。自分の言ったことを正確に理解してくれている」


「褒めても何も出ないよ!」


 赤くなって、プイっと横を向いた。

 からかっているつもりはないのだが、どうしてもこうなってしまう。

 それと色々と出してくれたよね?

 まあいいや。さて、確認だ。


 ダンジョン地下一階は距離にして十キロメートルといったところか。そして青く光る場所を探す。

 一ヶ所だけ、大きな青い光の塊があることが分かった。冒険者のキャンプ場所だと思う。

 だが、位置がおかしい。ダンジョンと街を繋ぐ直線上ではないのだ。


 気になったので、そこの映像を写してみた。





「ハルカ。この人達って何? いや、これは人なの?」


 映像に映し出された生物を見て、驚いてしまった。角があったり、翼があったり、胴体に顔がある個体もいる。

 一つ目の顔とかありえないと思ってしまった。


「その人達は、魔人族ね。人族に戦争で負けて逃げ回ているのよ」


 どうゆうこと?

 以下、要点を纏める。



 百年前の戦争は、人族とエルフ族との戦争だった。

 初めは、質の優るエルフ族が優勢だったが、そこに一人の日本人が現れた。

 そして、空間魔法を駆使して戦場を蹂躙して回った。

 問題はここからだった。

 エルフ族が所有していた土地を、人族が奪い取り人族の住みやすい土地に改良していった。

 エルフ族は、深い森の奥の空気の新鮮な場所を好むらしい。

 戦争で数を減らし、また土地を追われてエルフ族は絶滅の危機に瀕しているらしい。

 また、人族に隷属したエルフは、住みにくい街中でひどい目にあっているとのこと。


 魔人族は、エルフ族に味方していたため、人族から土地を追われた。ただし、極寒の地や標高の高い山頂等、人族には好まれない環境に住んでいたので、土地を奪われることは無かったが、住処を破壊されて毒を撒かれたとのこと。


 今のこの世界には、魔神族やエルフ族のような、放浪の旅を行っている民族が多くいるらしい。



 話を聞いて、ため息が出た。

 こうなると、人族の王都を破壊しに行っても良いかもしれないな。


「ソラ。顔が怖いよ」


「ああ、ごめん。少しイラついたかもしれない」


 ダメだな。感情的になって失敗するが最も愚かだ。


「魔人族とエルフ族について聞きたいのだけど、土地を与えてあげれば彼らは立て直しが出来ると思いますか?」


「う~ん。無理かもしれない。そもそも数がそんなに増えない種族なの。魔人族は年に一回くらいしか妊娠出来る期間が無いと言えば伝わるかな。エルフ族は長寿でね、頑張っても数年に一回出産があるかどうかなの」


 寿命は長いが、出産が人族と比べて不利なのか。頑張って数を増やしても殺されて行っては意味がない。

 いや放浪しているのだ。そんな状況で数など増えるわけがない。

 戦争の終結と人族との断絶が必須条件だな。


「ハルカ。あの魔人族をダンジョンで養いたいのだけど良いかな? 精霊の機嫌を取るためには、彼らの協力が必須になると思う」


「え? う~ん。まあ良いけど。どうやって交渉するつもり?」


「直接話して来るけど?」


「ソラの姿を見た時点で襲ってくるよ?」


 そうなるか。

 茶番になるが、少し演出でもするか。



 マップを再度確認して、魔人族から少し離れた青い光を見た。

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