第7話 初戦闘1

 今後グロいシーンが多数出て来ます。対人戦闘がメインになります。

 注意してください。


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◆ダンジョン十層にいる冒険者視点


 今日もダンジョンに籠り、宝箱探しである。

 正直毎日が辛い。俺は魔力量が平均より多く、数種類の空間魔法を覚えたことで成り上がった。

 国に認められて、憧れの冒険者になったのだ。

 危険も多いが、見返りも多い。街中での生活や、農業では一生かけても手に入らない資金を得る事もあった。


 冒険者ランクもそれなりに高い。知名度も若干ある。

 だが、そのプライドが俺の行動を邪魔してくる。


 このところ、三回続けて依頼書クエストを失敗している。ランクダウンの危機に瀕していた。

 そこで一番簡単な、攻略済みダンジョンの宝箱回収を選択した。

 これは、クエストでは無いので、失敗は無い。長期間拘束されることになるが、出て来たアイテムを国に献上すれば、功績になりランクダウンは免れる。

 似た境遇の冒険者達で即席のパーティーを組み、現在に至る。

 ちなみに以前組んでいたパーティーは、クエスト失敗時に二人死亡しており、解散してしまった。

 酷い喧嘩別れをしたので、もう組むことは無いだろう。



 攻略済みダンジョンの宝箱回収は、最長で一ヶ月はかかってしまう。似たような境遇のパーティーがいたので話し合いを行い、各層毎に縄張りを決めて、宝箱を得られたら他のパーティーに連絡を行うことにした。

 宝箱の取り合いと殺し合いを避けるための協定だ。

 冒険者同士の殺し合いなど、何の意味も無い。俺達は、上流階級の人間なのだ。

 協定は、何の抵抗も無く受け入れられた。


 だが、もう一ヶ月以上籠り続けている。五組のパーティーが宝箱を見つけて帰って行ってしまった。

 早く俺達も帰りたいものだ。


 【収納】には、大量の食糧と飲料水が収まっている。それこそ一年以上は持つ。

 精神力だけの問題であった。



 魔物がわいた。メンバーAが背後から襲い掛かられたが、【空間断絶】により、空間の壁に激突して魔物は悶絶していた。その後、簡単に討ち取った。所詮は獣である。全員で解体を行い、素材になる部位のみを回収した。

 この魔物の魂がダンジョンに吸収されて、一定量溜まれば宝箱が設置されるはずである。

 どの階層に現れるかは分からないが。


 このダンジョンの十層は、草原の環境である。他の階層に比べればとても快適だ。だがかなりの広さがある。

 目印は、この層の出入り口の階段だけである。

 ちなみに出口の階段の先には、ダンジョンルームがあるはずだが、俺達は資格が無いので入れない。



 パーティーメンバーを見る。皆疲れ切っているが、全員が後が無いのだ。

 不満など口にせずに探索に協力してくれていた。

 即席のパーティーだが、良いメンバーかもしれない。

 そんなことを考えている時だった。


「「「!?」」」


 足が動かなくなった。

 何だ? ダンジョンのトラップでも踏んだのだろうか?

 ありえない。こんなトラップなど聞いたことが無い。沼などに足を踏み入れて、物理的に拘束されたならまだしも何もないのだ。

 魔法による拘束だとは思うが、【空間切断】で地面を切り刻んでも拘束は解けなかった。他の空間魔法を発動してみる。【収納】で足元の土を取り除こうとしたが、亜空間には入らなかった。 


 全員の視線を合わせる。全員が首を横に振った。全員が何かしらの空間魔法を試したが、効果は得られなかった。

 地面を砕いても拘束は解けないのだ。トラップなどではなく、未知の魔法の可能性がある。

 だが、魔法であれば、時間と共に効果が薄れて行くはずである。

 全員で話し合いを行い、待つこととなった。



 一時間は経過しただろうか? まだ、拘束は解けていない。

 全員に焦りの色が見え始めていた。

 メンバーBが提案を口に出した。


「一度、離脱しましょう。この状態で上級の魔物に襲われたら大怪我を負いかねません」


 【空間断絶】の絶対防御と、【空間切断】による即死攻撃があると言っても、足が動かなければ予想外の事が起きないとは言い切れ無い。

 全員の合意を取り、離脱をすることにした。



  空間魔法:迷宮離脱エスケープ



 これで、迷宮の入口に着くはずだった。





◆ソラ視点



 予定通りの行動を取ってくれた。

 まあ、自分の魔法は単純な為、選択肢など無い。そして空間魔法の有用性を考えれば、迷宮からの魔法による離脱は容易に想像が出来た。


 さて、やることをやって終わらせよう。


「ハルカ。十層に残っている、冒険者の『足』をダンジョンに吸収させてください」


「え? うん。分かったわ」


 冒険者の足が消える事を確認する。


「ダンジョンポイントは溜まった?」


「少しだけど、増加したわ」


 拡張現実〈AR〉の視点をダンジョンの入口に移動させる。

 冒険者が足を失って悲鳴を上げている。混乱しているのだろう。あれでは、魔法の発動も出来ないはずである。


「ハルカ。ダンジョン入り口の冒険者に矢の雨を降らせてください」


「……うん。やってみる」


 数秒後、ハリネズミになって冒険者が息絶えた。そして、ハルカに冒険者の肉体と魂を吸収させる。


「ダンジョンポイントはどう?」


「すごいわ、ソラ。今までで一番溜まったわ!」


 これがこの世界の普通なのだろうな。ゲーム感覚で人を殺す世界。慣れるしかないな。


「それでは、次の層の対応に移行しようか」

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