第5話 異世界へ2
「ここかな?」
獣道は、洞穴に続いていた。そこで途切れている。
さっきの盗賊は、ダンジョンの場所だけは本当の事を言ってくれたみたいだ。
落ちている、枯れ枝を拾い、火魔法を使ってみる。
手から炎が出るイメージ……。
「おお! ホントに出たよ」
まだ、魔法の使い方はよく分からないが、とりあえず魔法による奇跡の発現に喜んでしまった。
枯れ枝に着火して松明の代わりとした。
これからダンジョンに入る。
最奥に味方となるダンジョンマスターがいると期待して……。
ダンジョンに入ると、一瞬で風景が変わった。真っ白な世界。でも今回は影がある。
なにが起きたのだろうか? これがダンジョンであり、別な空間に飛ばされた? もしかして、【転移】か?
「あの……」
背後から声を掛けられた。慌てて振り向く。
少し年上くらいの女性が目に映った。だが、それよりも気になる物があった。
膝くらいの高さで光っている岩である。
放射性物質を連想させる。だが、多分違うと思う。
いや、まずは目の前の女性だ。
「えーっと。自分はコウゴ・ソラと言います。多分ですが、ダンジョンマスターさんですか?」
「はい。ダンジョンマスターのハルカと言います。これからよろしくお願いします」
頭を下げて来た。
「それではこれから、ハルカと呼ばせて貰います。自分はソラと呼んでください」
「よろしく、ソラ。それと、あなたは何時も敬語なのですね」
「素で話すと訛りが酷くてね。よく笑われてしまったので。幼少期は、地方で育ったのでどうしても治せなかったのですよ」
苦笑いが出た。
それに釣られて、ハルカも笑う。
枯れ枝の火を消して、話を聞くことにした。
◇
「現状を確認させて欲しいのですが」
「はい、こちらをご覧ください」
拡張現実〈AR〉が空間に現れた。魔法があるのは便利だな。
「これが、私のダンジョンのマップになります。『虚空のダンジョン』と呼ばれています。全十層になりますが、攻略されていて全ての層に冒険者がいます。魔物を配置しても即座に倒される状態です」
色々と突っ込みたい。一つずつ聞いていくか。
「まず、冒険者は、何でも屋で合っていますか?」
「違いますね。ソラの前世では、公務員みたいな感じかな? 試験があって、実力が認められないと名乗ることが出来ません。また、地位もあって、保護も手厚いです。ただし、功績が無いと地位をはく奪されることもあります」
結構、夢も希望も無い現実的な職業だな。もっとこう、誰でも着ける職業であって、自由に生きる人達を想像していた。
「ダンジョンが攻略されているっていう意味は?」
「そのままです。最下層のダンジョンコア……、これですけど。この直前まで踏破されてしまっています。あ、ここはダンジョンルームと呼ばれています」
ハルカは、光る岩を指さした。
そして、この白い空間はダンジョンルームか。
「そうなると、この空間まで入り込まれることはありますか?」
「あることはありますが、まず普通の人は入って来れません。世界に数人だけダンジョンを壊せる人がいると言えば伝わりますか?」
「……今のダンジョンには、その人達はいないのですよね?」
「はい、いません。基本的に人族の国で保護されています。たしか、『勇者』と呼ばれています」
今はいいけど、覚えておこう。終盤で対峙するはずだ。
「それで、踏破済みのダンジョンに人が入って来る理由を教えてください」
「基本的には、魔物の素材狙いですね。一定時間で発生します。また、宝箱も自然発生します。この世界のほぼ全てのダンジョンが踏破されており、冒険者で埋め尽くされています」
夢も希望も無いな。この世界終わってるじゃないか。
「冒険者のレベルとか、職業は分かりますか?」
「……え? どうやって知るのですか? それとレベルって、冒険者の等級のことですか?」
ふむ。スキルの【鑑定】は無いのか。結構、前世と変わらないかもしれないな。
まあ、無いなら無いで良いか。
ダンジョンのマップを見る。入口は洞窟型であった。ダンジョンの外の情報も欲しいが、今は置いておく。
青い光が冒険者だろう。冒険者の塊が各層に一つずつある。多分、パーティーのはずだ。
一つのパーティーは、三~六人か。そして総勢、四十人か。
狩りに来ているのだろうが、狩られて貰おう。
この世界は、そうゆう世界のはずだ。
「衣食住の保証と言われたけど、何でも作れると考えて良いですか?」
「本来であれば、何でも作れますが、今は何も作れません」
「理由は?」
「ダンジョンポイントが、まったくありません」
「ダンジョンポイント? それはどうやったら溜まるのですか?」
「ダンジョン内で人が亡くなると溜まります。いえ、人で無くても良いです。生物の魂や肉体をダンジョンが吸収するとポイントが溜まります」
まあ、予想通りだな。ポイントを溜めてダンジョンを強化していくのだろう。
準備が出来たら、殺戮開始か。ちょっと気が重いが、冒険者には生贄になって貰おう。
「それでは、魔法を見せて貰えますか?」
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