第2話 キャラメイク
まあ、いいや。話を進めよう。
「報酬の件は、最後にしてください。それで、次の世界(?)では、どんな問題が起きていますか?」
「やる気を出してくれたのですね。嬉しいです」
受けるとは、言っていませんが?
まず、聞くだけですよ。
「『困っている』内容を教えてください」
以下、要点を纏める。
その世界では戦争が続いていた。
だが、百年前に一人の日本人が異世界転移した。
その日本人は、四大属性魔法の世界に空間魔法の概念を持ち込んだ。四大属性とは、火風水土である。
まず、その日本人は戦場に送られたが、過酷な労働に耐えていた。
その後、その日本人は、【収納】や【転送】を生み出し、輸送や建築に革命を起こした。そして覚醒し、その日本人は、戦場を蹂躙して回った。
【瞬間移動】もしくは【転移】により、敵陣の真ん中に現れた。
【空間切断】の一振りで数十人の命を奪った。どんな物質でも破壊してみせた。そして山をも両断した。
また、【空間断絶】により、どんな攻撃も防いで見せた。また、魔法ですら無力化してしまった。
最終的にその日本人が覚醒すると、戦争は急速に収まって行った。
その日本人を抱えていた国が、世界を統一して行ったのだ。
世界中の人々が、その日本人に恐れを抱き始めた頃、『依頼は達成した』と言い残し元の世界に帰って行ってしまった。
空間魔法の技術を残して。
この時点でその世界の人々は、空間魔法の有用性に気が付いていた。
空間魔法の概念を得たその世界の人々は、文化を急速に発展させた。だが、同時に差別が生まれた。
その世界では魔力を持たない者が次第に増えて行き、現時点で人口の半分を占めていたのだ。
そして、四大属性魔法を使う人は少なくなって行った。
これが問題であった。
四大属性の精霊達が、魔力を直接変換する空間魔法に嫉妬を覚えてしまい、他世界に移住し始めたのだ。
このまま行くと、その世界は魔力が失われて行く。魔力を持つ人の数が減って行ってしまうのだ。
その世界では、全ての魔力が失われれば、再度、戦争が始まってしまうことが決まっていた。
人類が全滅する戦争が。
「良く分かりませんね。魔力が無くなると戦争が起きて全滅ですか?」
「あなたの前世での例えになりますが、仮に〈磁力〉が無くなり始めたらどうなるか想像出来ますか?」
人類史を思い返す。
発電は十七世紀中期だったかな。ライト兄弟が飛んだのは十八世紀初期。第二次産業革命は十八世紀中期から。それらを踏まえて、考える。
まず、現代に生きる人達に十七世紀の生活を強いたら、戦争になるのは理解出来る。
だけど、電子制御も機械式に戻せば、飛行機くらいは飛ばせるだろうから、移動は問題ないはず。蒸気機関が復活するかもしれない。
多少は受け入れられる人達もいるはずだ。
かなりの死者は出るが、世界大戦は起き無いのではないかと思う自分は甘いのだろうか?
「戦争が起きることは想像出来ますが、予言されているような終末戦争は起きないと思いますよ?」
「地表を何百回も滅ぼせる火薬を有している世界ですよ? 想像力が無さ過ぎませんか?」
磁力が無くなって、火薬のある世界か。
まあ、言いたいことは、欲望のままに火薬を使えば、滅びると言うことかな?
そして、魔力のある世界で〈欲望〉に当たるのが、空間魔法なのだろう。
そうなると……。
「まず、自分に戦争に参加しろと言う事ですか?」
「そうなります」
「自分は、他人を傷つける事が出来ないかもしれませんよ?」
「前世の倫理観は捨ててください。刃物や魔法が飛んで来れば、嫌でも対応することになります。人権の無い世界と言えば伝わるでしょう?」
頭痛くなってきた。
この時点でかなり嫌な世界観を持ってしまう。文化レベルは古代か中世だろう。それと戦争中でもありそうだ。
いや、目的の確認をしよう。
「自分には、四大属性魔法のみの使用が求められているんですよね? 四大属性魔法のみで空間魔法の使い手を倒せと言う事でよろしいですか?」
「少し違いますね。空間魔法の使用率を下げて、四大属性魔法を使う世界に変えて貰いたいのです」
魔法には興味がある。
だが、かなり難しくないか? それこそ低次元の魔法で高次元の相手をしろと言われている気がする。
空間魔法よりもっと高次元の魔法が必要だろう。
「時間魔法はありますか?」
「……やはり日本人ですね。空間魔法と時間魔法が同時に存在する世界は、最終的にブラックホールで消滅することが決まっています。なので時間魔法を与えることは出来ません」
さらに追い詰められる。
話題を変えよう。
「衣食住の保証はありますか?」
「うーん。そうですね……。それでは、味方にダンジョンマスターを紹介しましょう」
この時点でかなり行きたくない世界が想像出来た。魔法ありの高度な文化水準を期待したのだが、ファンタジーな世界だな。
「確認します。最終的な目標は、四大属性魔法の使い手を増やして精霊の機嫌を取れば良いのですよね?」
「理解が早くて助かります」
まあ、選択肢は無いのだろうな。行くしか無いか。
だが、もう少し有利な条件が欲しい。
「その世界は半分の人達が魔法を使えないのですよね? 自分は魔法は使えますか?」
「あ、もちろんキャラメイクは出来ますよ。欲しいスキルや魔法を教えてください。問題の無い範囲であなたに与えてからその世界に向かって貰う事になります」
ふむ……。魔法が使えるのであれば、ハードモードでは無いと言えるかな?
いきなり戦場からのスタートも想像していたが、衣食住の保証ありか。
でも、後一手欲しい。
「物資はどうなりますか? 対人戦闘を行うのであれば、魔法だけで無く装備も充実させて欲しいです」
「具体的に言ってください」
「ステルス戦闘機と、ミサイル。迫撃砲や戦艦とか欲しいです」
「却下!」
ダメか。ミサイルに四大属性魔法を付与出来れば楽だったのだが。
「どんな物が許可されますか?」
「神話級の宝具や武器防具、それと聖遺物なら良いですよ。近代兵器なら銃くらいまでなら許可します」
難しい。
戦争に勝って屈服させろでは無いのだ。広く知られている宝具は、基本的に大規模破壊の奇跡を起こすものだ。話を聞く限りでは、空間魔法には絶対防御系の魔法がありそうだ。
それに、魔法がある世界に銃だけで立ち向かえるとは思えない。初見殺しは出来るだろうが、魔法の威力によっては、広範囲殲滅魔法で詰みなのではないか? ゲームの知識だが。
空間魔法を相手に優位に立ち向かえる、宝具や聖遺物か。
そもそも、自分の前世の歴史では、神話の世界に空間魔法の概念は無かったのだ。
あっても、【
チート相手に優位に立てる、宝具か……。
それと、メインとなる魔法を決めないとな。
話を聞くだけのつもりが、行くことを前提に考えている自分が、そこにはいた。
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