プレミアム・商品券・便宜上
「はい。これでお願いいます」
便宜上、取り扱うことになってはいるけれど、今差し出されているこれはなんの価値があるのだろう必死に考えてしまう。みるからにそれはただの紙切れでしかなくてこれを受け取ったところで何にも変えることはできない。
嬉しそうにじゃがいもが大きく描かれたおかしのパッケージを持ってきた少年はそれを何だと認識しているのか甚だ疑問ではある。
手書きのそれは一見誰にでも作ることができそうだし、誰でも入手できそうなのだが商品券としての価値はしっかりあるというのだから理解に苦しむ。
「はい。受け取りました。じゃあ商品にシールだけ貼らせてね」
まあ、結局の所ただのバイトだ。言われたとおりにその商品券まがいな紙を受け取ってレジに入力するだけだ。受け取った紙には大きくおかし1個分と書かれていて。まあ確かにその通りなのだけど、こんな曖昧な基準で問題が起こらないのか心配するところでもある。
「ありがとうございます」
そうペコリと頭を下げて、嬉しそうにかけていく少年の姿を見ていると朗らかな気持ちになってそんな商品券のことなんてどうでもよくなって来たりもする。あの笑顔が見れるのならばこんな商品券でもいいのではないか。
「兄ちゃん。これで支払いいいんだよな?」
次にその商品券を差し出してきたのはちょっと強面のおじさんだった。やっぱり手書きでおかし1個分と書かれているそれを差し出してきて、持ってきた商品はガム1個だ。間違いではないのでそのままレジを通す。少しだけ無愛想になってしまったのはちょっとだけ怖かったからだ。それと、強面のおじさんがこの商品券をどこで手に入れたのかも気になる。
いやそもそもこれはどこで発行しているものなのか知らないのだ。国でも市でも町でもないその発行主はだれで、どうしてこんな普通のスーパーで使えるのだろうか。
「お疲れさまでしたー」
そんな疑問は解消されることなくバイト上がりの時間。店長がバックヤードでせこせこと何かを書いているのを見つけた。同時に向こうもこちらに気がついたようで顔を上げる。
「今日もお疲れさまでした。プレミアムなプレゼントを君にもあげよう」
そう言って差し出してきたのは例の商品券。戸惑いながらもお礼を言うことしかできなくて、ひとりその商品券を手に帰路につく。
店長が手作りで作っているとでも言うのか。なんのために?理由がまったく検討つかない。もやもやするけれど、直接聞くのも悪い気がしてどうしても切り出せなかった。
いつかわかる日が来るのだろうか。来ればいいなとは思うけれど、どうしてだろう。永遠にわからない気もした。
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