オルレアン・闇市・高尚

 そのフリーマケットは知る人ぞ知る、穴場なフリーマケットだった。貴重な品が手に入ると噂だけは流れてくるが、いつ、どこで、だれが、など主要な情報が流れてくることはなくて、まるで見つかってはいけない闇市だと、噂が流れるものにまでなっていた。

 初めてその噂を聞いたのはレアもののボードゲームを持っていた知り合いに問い詰めたときだ。大手通販サイトに現在取り扱いがありませんと表示されるし、フリマアプリへの出品も無ければ、名前は知っているけれど遊んだことがないそのボードゲームをどこで入手したのかはその場にいた人間全員の関心の的だった。その知り合いも最初は譲ってもらったみたいな話をしていたのだが、深く聞いていくうちにそんな譲ってくれるような知り合いも出てこず、さらに問い詰めたら、そのフリーマケットの話が出てきたのだ。そこには話だけは聞いたことがあるけれど、見たことはないレアなものばかり並べられていたという。そんな夢のような空間があるのであればぜひ行ってみたいものだと、全員の意見が一致したのだがその人からそれ以上の情報は出てこなかった。

 たまたまたどりくことができたが、次回の開催の予定も、それに繋がる情報のひとつも持っていなかった。

 その気にさせるだけさせておいてそれはない。この情報があふれる社会で情報が一切ないなんてそんなこと信じられないのだが、実際に何も出てこない。その知り合いの勘違いということも考えたのだがそこにものがあるだけにそんなこともないのだろう。

 手に入れたい。今すぐにでも。そう願い続けているボードゲームがある。オルレアンと呼ばれる、フランスの都市で有力者となって自分の都市を育てていく。いや、どんなゲーム出るかはここではどうでもいい。そのゲームを知ったときにはもう市場から消えていた。探し続けているそれを見つけることは困難でそのフリーマケットであればもしかしたらという期待があった。

 だから必死になってそのフリーマケットを探した。周りから心配もされるくらい必死な形相だったらしく、だんだんと仕事も手がつかなくなっていた。

 探し続けて半年が経過した頃、ついにそれを見つけた。高尚な場所にあると思われていたそれは隠れた路地裏で行われているらしい。

 準備は万全だ。いざ。戦場にと足を踏み入れた。

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