空気正常機・神格化・ブレンド
どんなにインチキ臭さが残る組織でも神格化に成功してしまえば、ある程度の信者はつくものなのだなとぼんやりと考えてしまった。そんなことが頭に浮かんでる以上、熱心な信者ではないのだがここにくると心が落ち着くのも間違いない。それがいかなる理由からくるものだとしてもだ。
人類が弱っているときほど活動が活発になっている組織だった。駅を出たら声をかけられ、誰とも話さない生活が続いていた身としては、久しぶりの会話を楽しんでしまったのだ。まあ、その行為が間違いだったと思わないもないが、間違いでなかったと思うこともある。
とにかく、近所の集会所に休みのたびに通い始めたのはその時からだ。最初は高額な買い物や寄付の要求をされるのかと思っていたがそんなこともなく、熱心に通い詰めているだけで、褒められもした。それが少し嬉しく感じ、通うのをやめられない。
しかし、インチキ臭さはそこかしこに置かれたままだ。例えば空気正常機。空気を清浄して循環させるわけではなく空気を正常な状態に戻すための装置だ。
正常な空気とやらの定義がそもそもわからないのだが、信者たちはそれを拝んでは必死になってその正常な空気を肺に入れて持ち帰っているようだった。こっそりとその機械を調べたことがあったのだが、有名メーカーの名前がシールで隠してあることを見つけるとそっともとに戻して、すべてを忘れた。
この世には知らないほうが幸せなことが多岐にわたって溢れている。少しくらい気づかないふりをして生きていたほうが楽なことだって多い。それでいいじゃないか。そう自分に言い聞かせながら今日もここに通う。
和洋折衷。ほどよくブレンドされた、あらゆる神秘的なものが置かれたこの空間で癒やされたっていいじゃないか。そう思わずにいられないのは、ここに頼りきりではいけないことを自覚しているからなのだろう。
いつかここから去る日がくる。それはわかっている。だから大丈夫なのだとそう思いながら、今日も熱心なふりをして、熱心に通い続ける。今はそれが必要な時間なのだと。そう言い聞かせながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます