支払い・雪・貯金箱
支払いの振り込み用紙が溜まっていたのに気がついたのは給料日のことだ。コンビニに銀行、郵便局と支払い場所がそれぞれ違うのを確認したら、自然とため息が出た。しかも全部払込期日が迫っているのだからたちが悪い。
それを恋人である
いわく。
受け取った時点で払いに行かないのが行けない。
全部引き落としにしてしまえば楽。
給料日にならないと振り込む余裕が心に生まれないのは普段からの節制がなっていないからだ。
クリスマスプレゼントは貯金箱がいいかもな。
胸が痛い。
物理的にではない。精神的にだ。言われなくてもわかっている。そう反論しようものなら、だったらなんで溜まってるんだなんて嫌味が重ねられるのが目に見えていたからそれ以上は言わないでおく。
そんな隆だけれど、なんだかんだ言ってすべて支払いに付き合ってくれるのだから面倒見が良いのだと思う。
がさつな自分に生真面目な隆。不釣り合いに見えることも多いらしく、やんややんやと周りから言われながらもスタートした交際だが、今のところ順調だ。多分。
そうなのだ。まだ色々考え出すと不安になる。特に今日みたいに色々と言われた日には。こうやって付き合ってくれているのだから、嫌われているわけでもないはず。と自分に言い聞かせ続ける。
顔色をうかがうけれど、あんまり表情の変わらない隆の機微を感じ取るのは難しい。我ながらなんでこれに惚れたのかと自問自答することもある。しかし、隣をこうやって歩いていてくれるだけで安心できる存在を他に知らない。多分親よりも安心する。
ふと白い粒が空から降ってきたのを目の橋に捉えた。
「雪?」
いち早く隆がそれに気がつく。寒いとは思っていたがまさかそんなにか。今年初めての雪だ。思わず見上げる。積もる気配はなくて、地面に付けば消えていく。その程度の雪だ。
寒かったのか隆の手が急に触れて少しだけ驚いてしまう。そのままぎゅっと握られた。ほんのりだけど温かい。
温めようとしてくれている?
「行こうか。寒いだろ」
やっぱり安心する。下がっていたテンションが上がってきた。こんな日も悪くない。そう言ったら多分また色々言われるだろうけれどそれもいいかもと少しだけ思った。
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