色即是空・ブータン・トップシークレット

 ヒマラヤ山脈から日が昇るのを絶望と共に眺めていた。

 任務は大失敗に終わった。忍者見習いは今頃エベレスト登頂を目指して、無謀な挑戦を始めた頃だろう。

 この世界にはトップシークレットと呼ばれるたぐいの人知を超えた力がある。忍者、吸血鬼、魔女、錬金術師、陰陽道、魔術師、人狼。普通の人に気取られることなく、生活をしているそれらの者たちは、今も世界を奔走している。

 割と勢力図なんてものも存在しており、その複雑すぎる闇社会は一歩間違えれば死なだけあって生きるのは大変難しい。

「任務失敗だ。自決するのがオススメだがどうする?」

 失敗したら最後。命が失われるより残酷な末路が待っているのを知っている同僚が声をかけてきた。

「殺生が禁じられている国で自決なんてジョークだとしても笑えないな。帰るさ」

 帰る場所は育ててくれた組織だけだ。身寄りもあるはずもなく、自由になったからと言ってやりたいことがあるわけでもない。帰るしか他ないのだ。

 忍者見習いを忍者にするなと言う、任務はだれの依頼なのかは分からない。いや、知ろうとすること自体がおこがましい。言われたことだけをこなしていればいいはずだった。それに任務をこなすのは得意だったはずなのだ。しかし、あの忍者見習いは我々の手をすり抜けるように、エベレスト登頂を始めた。エベレストの無装備登頂がその忍者になるために必要なことらしいのだ。

 登頂を邪魔するにはここブータンからだと時間がかかりすぎる。そもそも、登山ルートをよく調べもしないでヒマラヤ山脈のそばに来ればこうもなる。

 間抜けな計画を立てた同僚に腹が立つのと同時にそれをちゃんと確認しなかった自分にも腹がったって来る。

「色即是空か」

 同僚が急につぶやいた。なんいだって言うのだ。あまりの絶望に頭がおかしくなったのか。

「世界には不変なものなんてないし、何があろうと変化してるってことさ」

 だから何だというのだ。今この状況で言えることではない。

「忍者と言う概念自体がなくなれば、やつは忍者になることはない。それは任務達成にならないかね」

 だから、どうやってそれを成すと言うのだ。

「忍者は我々と同じだ。任務が与えられて初めて忍者となる。つまり依頼を与えなければ忍者ではない」

 そんな発想があるか。そもそもその理屈だと任務を与えられた者が忍者と名乗れば忍者になってしまうんじゃないのか。

「俺は忍者を滅するものになるぞ。組織から抜ける」

「そうか。勝手にしろ。俺は報告に組織へ帰るぞ」

「そうだなそれがいいさ。忍者を滅するものはオススメしないなぜってこれから俺はニンジャスレ……」

「おい!それ以上はやめておけ、本当に消されるぞ」

 危うく違う世界線を敵に回すことになりそうなセリフを全力で止める。そうしている間の同僚はどこかへ消えてしまった。

 色即是空。不変なものなんてどこにもない。そうなのかもしれない。だったら任務失敗してもどうにかなるのではないのかも。と淡い期待を胸に帰路についた。

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