毛玉取り器・ガンジー・乳酸菌

 『非暴力・不服従』を提唱したガンジーの言葉は私たちに何を残したのだろう。先ほどの歴史の授業でガンジーのことを先生が話していたらついそんなことを考えてしまう。

 国も違えば時代も違う。直接的な影響なんてなにも与えられてないのかもしれない。だって非暴力も不服従もこの小さな学校と言う単位でさえ実現できていないのだから。

 見て見ぬふりをしているわけでもなく、参加しているわけでもない。なぜなら上手いことやっているからだと思う。でも間違いなく確かにある。それだけは感じている。

 毛玉取り器が誰かの髪の毛を絡みとっているを見たことがある。しかし、それは誰もがみなかったことのにした。

 掃除をひとりでやっていることもあった。でも、それはたまたまだとだれもが口をそろえて言った。

 帰り道、人より多くの荷物を持っている人がいた。でもその人は筋トレをしているだけだとみなが言った。

 誰もがそう言い始めれば、そうでなくてもそうなってしまう。

 だから『非暴力・不服従』なんて、この国には実現不可能なものなのだと思う。

 全部給食の牛乳をみんなが残すせいだと密かに思っている。カルシウム不足によるイライラ。乳酸菌不足による腸内環境の悪化からの体調不良による余裕のなさ。全部牛乳を残さなければ解決する話だ。

 そうすれば小さな問題なんて、なにも気しなくなる。そうすればみな幸せになれるのにどうしてそうしないのだろうと、日々疑問になっている。そのことで飲む牛乳の量が増えてしまったくらいだ。

 ある時、牛乳を残している全員に注意を促したことがある。牛乳がもたらす効果をすべて説明する講習会まで臨時で行った。

 しかし不評だった。なんの時間だと怒鳴られたりもした。だからその怒鳴る原因は牛乳不足のせいなんだと怒鳴り返したら、いやお前の牛乳の話が長いからだと怒鳴り返された。

 結局そのまま議論は白熱していき、先生が止めに入るまでに大ごとになっていった。

 のちに牛乳議論暴走と呼ばれた事件である。

 この事件後、なぜか『非暴力・不服従』が学校に広まって少しけ平和になったとか、ならないとか。

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