第14話 運動
最近、問題が発生した。
館以外の領地を貰い開拓や研究に明け暮れて居たのだが領民の生活水準を調べあげていなかったのである。
館で出される食事について肉類が多く野菜が少ない。
肉食文化が色濃く出ている欧州圏の食事事情から主食が芋か麦のどちらかで芋は数種類、麦もライ麦から小麦、大麦、オーツ麦と豊富である。
領内の税金は物納か金銭、若くはその両方で住民の階級によって変わってくるらしい。
普段から物々交換をする領民も多いし、貨幣の流通が無い地域もあるため配慮した形となる。
流通しているのは銅貨、銀貨、金貨で銅貨を4分割した銭貨と言うものもあるが、見たことはない。
と言うことで領民たちの生活を視察するために館を囲む大門の内で最も栄えている商業区にやってきたのだ。
雑多な種族が入り乱れる中で大通りの両端を飾る様に露店が立ち並ぶ。
「露店は多いけど店舗は少ないね」
「領内にでさえも魔獣が侵入してくることが有りますからその対策ですわね。ユリウス様が魔王級の魔獣を討滅致しましたがまだ8年しか経っておりません。回復にはまだ、時間が掛かります」
「魔王級って?」
「都市を2つ以上墜とした魔獣に付けられる階級ですわ。ユリウス様は過去にドラゴンを討滅した事で貴族に成りましたから、その功績を買われて王から任務を受けた様です。魔王級は魔獣を率いますので他の貴族も私軍を出して支援していましたが、当時の軍人の半数に街が6つ、村が20以上が被害に遭いました」
「えっ、魔獣と人間って敵対してるの?」
「敵対と言うよりも自分より弱い生物を食べるのは普通の事ですので、お互いに食べあっている関係ですわ。稀に魔獣側に『大食らい』が産まれるのでそれが放置された結果になります」
「あー人間って群れるから狙われるのね」
「ただ、真っ先に狙われるのは小さい群れですから未だに魔王級の恐怖が癒えない者達は都市で暮らす他ありませんね。当時の夢を見て叫び起きる者も多いですわ」
「へぇ、魔王級ってどんな姿だったの?」
「私は伝え聞きでしか知らないのでユリウス様に聞くのがよろしいかと。私とローザ様は滅びた村の生き残りですので逃げるので精一杯でしたわ」
急に重い話になったので気にしない様に話をずらす。
「あれ?ぱぱって忙しいんじゃ無いの?」
父ユリウスとは今の歳になるまで食後の時間以外では私室に尋ねて来るまでお喋りは無かった。
部屋のお付きはいつもレミーで体の弱い母ローザの部屋に1日に数回訪ねるくらい。
「いいえ?イア様も8歳になられて淑女と成りましたので男性が部屋を訪ねるのは良くないので遠慮なさっておりますわ」
私って淑女だったの・・・?
「そっかーじゃあ、ぱぱに聞こうかな。レミーはさぁ」
レミーの顔を下から覗き込む。
「はい?」
「夜中に飛び起きたりするの?」
「・・・いいえ、苦しみは過去に置いてきたので」
「そっかー?・・・私、甘いもの食べたいな。レミーも一緒に食べよ?」
大通りを歩きながら甘味の店へと入る。
甘いシロップを掛けただけのパンケーキは私の口には合わなかった。
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