第13話 実験2
『理性は物をそれ自体として認識することはできず、物が現れるとおりにしか認識できない』
ソクラテス・カントの言葉だったと思う。
単純に、人間に認知できない神とか時空の事考えても意味無いよね、だって認知出来ないんだし。という哲学者だったと思う(うろ覚え)。
この言葉は宗教の神を無限の存在では無く有限の存在でも無いと言うアンチノミー論を打ち立てた。
アンチノミーとは相対立するふたつの命題がどちらも証明されてしまう状況を指す。
人間に魂の不死性とか世界の真理とか神の存在は認識出来ないからこそ、考えるだけ時間の無駄。
という事で、私はこの時間を先生で実験する時間にした。
人間と魔獣は違うし、時間は無駄に出来ないからしょうがないよね?
私は自分に言い訳してから魔法を発動していた。
対象の脳にコルチゾールを発生させる魔法だ。コルチゾールはストレスホルモンの一種で血圧と血糖値を上昇させる。
人は危機的状況になるとコルチゾールの値が上がる。彼女が泣いたのはストレスホルモンを増加させた状態で批判とパワハラをした為。
普段の状態なら耐えられるストレスでも耐えられない状態にしたのだ。
「うぅ・・・グスッ」
家庭教師の泣き声が静かに響く。
「ああ、もう。しょうがないわね(棒読み)」
私は彼女の頭を下げて抱きしめると同時にオキシトシン、エンドルフィン、ドパミン、セロトニンを魔法で分泌させてコルチゾールを発生させる魔法を止める。
「ふぁっ、あぁぁあ」
単純に幸せホルモンと快楽物質を脳味噌に生成した。
脳内物質が人間の思考を司る。相手の好感度を無理やり編集する洗脳魔法の実験だった。魔獣じゃ効いてるのかわからないので人間のモルモットが必要だったのだ。
彼女が私にぎゅっと腕を回す。
回復したらしい。早く離させる為に声をかける。
「早く離して。私に抱きつかれる事でしか幸せを感じなくなっていくわよ」
ホルモン分泌は通常の5倍。タバコを吸った時の2倍程の依存度で大した依存度では無いが慣れると依存しやすくなる。
じゃあ、魔法を止めろって?モルモットの意向を聞いてあげてるだけだしセーフ(若くはアウト)です。これもアンチノミーだから。
そのまま30分も抱きしめられていると父ユリウスが部屋に入ってきた。
「えっ!?なに?何があったの?」
「せんせーが泣いちゃったから、よしよししてた。甘えん坊ね」
「すーっはーっ」
「なんか吸ってない?イアの何かが吸われてない?」
「いいんじゃないかな、せんせー可愛いし。よしよーし」
家庭教師がびくりと身体を震わせて私の腹に顔を埋める。
「ご主人様ぁ」
「これは、良いんだろうか?いや、でも。うーん?」
死体を積み上げなければ医学が発展しない様に魔法の発展にもモルモットが必要。
1匹目は依存しがちな性格になった。
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