第10話 使い道

領地を与えられた私は有効な使い道を考えた。

領地にある農地の特性上、畑の拡大は急務であるが獣害が前提となるので実験したいのだ。


父ユリウスの保有する騎馬隊から馬糞を貰い領地へと運び入れて一箇所に山の様に積み上げる。当然の如く臭いので運ぶ際は魔法で空間を仕切り、空気中への成分移動の一切を禁止した。


馬糞は長期を経て発酵し、肥料へと生まれ変わるが年単位での物となるので魔法陣を作成し、透明な雨除けを作っる。

この際、空間内を発酵を促すために温暖な気温にした。エアコン魔法(適当)である。


道沿いに土地を四角に区切って魔法で耕して市場でたっぷりと購入した3種類の芋を植えた。市場で別種の芋を買えたため、これは疫病対策でこの世界にも広まっていると考えられる。


片方の芋が疫病でダメになってももう片方が無事なら収穫は出来ると言う飢餓対策だ。

二毛作だの二期作だの色々と有るが、専門知識は薄く、学生時代に簡単に習った程度。

見様見真似で行うが、浮遊の魔法があるので作業に苦労する事は無い。


「うーん」


「どうしたのですか?イア様」


「魔獣対策をどうしようかなって。魔力に対して十分な効果が欲しいんだけど色々問題があるんだよねぇ」


ただの木柵では農民たちの経験上不十分であることはわかっている。


今回は対魔獣対策を実験の主としているので植えられた芋については喰われても良いが、ある意味で投資であるので出来れば収穫したい。


魔法陣を使う予定で威力の弱い魔物避けと殺処分用を使う予定だが魔法陣は言わば電池付き地雷だ。


踏むなりして外からの作用が起きると魔法陣に充電していた魔力を使って発動する。

魔物避けは魔法陣の上に重りを置いて常時発動。人間はギリギリで死なない程度のガスを噴出し続ける。歴史に名高いマスタードガスで周囲に飛散しない様に空間を区切る。


常時発動のため、燃費は良くとも長時間発動で景観が悪くなる。

畑を囲む黄色い気体とか怖すぎだからね。通報とかされそうだし。


殺処分用は感電死させる物。発動一回当たりの燃費は悪いが踏まれないと発動しないため数回なら問題ないが、魔獣と人の区別が付かないため子供が誤って踏むと畑の肥料になってしまうし、死体が魔法陣の上に乗ると死体に電撃を放ち続ける事になる。


盗賊が出ないでも無いし悪人対策にもなるが安全を考えるとガスになるが、今後領地の中で運用する為の実験なのだから景観の悪化は致命的な欠陥。


畑では農民が作業するのだから誤踏が怖い。


「まぁ、いっか。魔物探してくるね!」


私はレミーにそう言ってから山の中で代表的な魔獣であるピンクラビットを4匹捉えて来た。

最近、大規模な討伐があったためにこの周辺には弱い魔獣しか居ないとは父の談。


探索魔法で魔獣の位置を探して睡眠煙の魔法で巣穴を満たす。

煙に燻られて飛び出てきたピンクラビットは暫くすると寝始めるので透明な四角い空間の中に捉えて持ってきたのだった。


私は透明な空間からピンクラビットの長い耳を掴んで二つの魔法陣の上に放り投げると其々が正しく発動した。


「イア様っ!?」


レミーが叫び声を上げて両手で顔を隠した。


「ピュギィッ!」


殺処分用の魔法陣では悲鳴を上げながら一瞬で丸焦げになりピンクラビットの肉が四散した。

血液が沸騰して水分膨張を起こし血管が肉を破ったのだろう。


ガスの魔法陣では黄色いガスを吸ったピンクラビットが一酸化炭素中毒で苦しんでいる。血液内の赤血球が炭素と結合して脳に酸素が届いていないのだ。暫くして泡を吹いて倒れたので取り敢えず空間に戻しておいた。


私は徐(おもむ)ろに残りのピンクラビットの耳を掴んで殺処分用の魔法陣に放り投げた。


「ピュギィッ!」


「ねぇ、レミー!うさぎさんの悲鳴すごく可愛い!」


レミーは何故か倒れていた。

なんで?

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