六人目 ネオ

 プロってなんだ。いや、辞書的な意味だけで考えるのであれば『Professional』という言葉の略称であり、何かに精通した専門家とかそういう意味なのだろうけれど。事あるごとに彼が主張している『プロ』というのはそうした言葉の意味に囚われるものでも、ましてやなろうとしてなるものではないのだと、僕は思っている。僕も彼にプロの一人として認められているし、僕自身もプロを自認しているわけだけれど、それでもやっぱりプロって何ですか?って聞かれてプロとはこういうものだよ、なんて言える自信があるとは到底言い切れない。なろうとしてなるものではないし、なろうとしている人は既にプロなのだろう。言葉で遊んでいるようで、その実僕は言葉に遊ばれているだけなのかもしれないけれど、プロとはそういう曖昧で不明瞭で、良くも悪くも適当極まりないそういう称号なのだ。

 なるべくしてなっている。常に己を磨くその在り方を突き詰めれば、いつか気が付けばプロになっているのだと僕は思う。

 そしてここまで彼の言うプロとやらに関して解説というか僕なりの見解を述べてきたわけだけど、僕は彼を打倒することを目標に掲げている。荒唐無稽だと、傲岸不遜だと、そう思う人たちも少なくないかもしれない。実際彼と成績を比較すると彼に余裕で軍配があがるし、僕がこうして駄文を書き連ねている間にも、彼は勉学に励んでいるのだろう。それは本当に素晴らしいことだ。だからこうして差が付くわけだが、それでも僕はまだ彼に食って掛かろうとしている。いや、というかこの文章を書いている最中に食って掛かろうという意思が再燃したといってもいい。

 僕は彼に質問したことがある。その内容は至極単純で、多分どこの誰でも何の気なしに訊いたことがあるような、そんな質問。

 「得意教科は何?」

 彼は答える。

 「全部」

 言ってみたいね。ムカつくほど清々しい。ここまでくると笑えてくる。そして美的センスも持ち合わせているし、何より顔がいい。また顔がいい族か。たまには顔を切り裂いてやってもいいかもしれない。いや、切り裂いたところで素敵に男前で格好いい傷跡が刻まれるだけなのか。なんなんだろう、まったく。

 陽キャ怖いんだが。

 僕の仮初めで冗長な思考回路ではなく、彼は多分それなりに考えている。僕が天才をふるまう愚者なら、彼は愚者に化けた天才だろう。一見意味不明なことを言っているようで、実際に意味不明なのだけれど、でもそれなりに行動はしっかりしている。メリハリというか、自分の中でのスイッチを自在にコントロールできているところは本当に素晴らしいことだと思う。よくもまぁ、自分を律しているものだ。

 とはいえやっぱり彼のことは理解できない。好きではあるけれど、理解できたかと言われれば一ミリも分からんというのが率直なところだ。多分かおるとかも知っているようでその実、何も知らないのかもしれない。ミステリアスというのはまた違った表現だけれど、謎多き青年ではあると思う。

 いつか彼の化けの皮を剥がしてやれるように僕は今日もまた、精進するとしよう。

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