五人目 クラリオさん
変態。僕はこの人以上にこの言葉を華麗に着こなして見せる人を知らないし、この人以上に性に関して寛容な人間もなかなかいないと思っている。性に寛容というのはあくまで思考や会話のジャンルとしてそれらを幅広く認めているということであり、決していやらしい女性というわけではないことだけは明言しておこう。この辺の線引きは重要だ。
クラリオさんと僕が初めて出会ったのはコンパスで作ったグループだろうか。コンパスでのグループではまぁいろいろあった。それなりにトラブルがあって今はみんなもうほとんど散り散りになってしまっているからもはや形骸化しているのだけれど、フェイトコラボのあたりでは死ぬほど活気があった。そこで姉貴的ポジションに立っていたのがクラリオさんである。度々話していて忘れることもありがちなのだが、彼女は僕にとって普通に何のひねりもなく年上のお姉さんであり、本来ならそれなりに意識して然るべき魅力を兼ね備えている人間なのである――が、どうもそうはいかない。なんというか、人間的にはどストライクなのに、恋愛対象としてはワイルドピッチもいいところだというか、そういう人なのである。ゆうりんよりもそのブレはでっかくなったような、そんな人だ。優しくて気配りができて、馬鹿っぽい癖にしっかりとお姉さんであるその姿勢にすげえなって思うことはあっても、この人と一生を過ごしたいとはならないのだ。
一家に一台クラリオさん、ではないけれど、どのグループにも一人はいてほしいポジションだと僕は勝手に思っている。彼女が会話に参加すればそれなりに盛り上がる(主に下世話な話だが)し、会話にメリハリが生まれる。いなくなって初めて存在の大切さに気が付くような、そんな縁の下の力持ちなのだ。
彼女の性格はというと、先ほども話したかもしれないし話していないかもしれないが、ひどく優しい。すごく、だとかとても、だとかではなく、ひどく、優しいのがミソだ。その優しさは本当にいつか身を滅ぼすと思う。別に警告するつもりもないし、彼女がそうあるべきだと自分で思っているのであればきっとそれは正しいことなのだろうけれど、実際問題として、彼女一人で多くの悩みに寄り添いすぎている。
だから変なやつにモテるのだ。いや、変なやつ以外からもモテるだろうが、特によくない人をひきつけやすいというのは傍から見ていてすごく思う。コンパスのグループでも、それなりに露骨な好意を向けられていたものだ。なんというか、初心な男性を無意識に虜にしてしまうのかもしれない。本人としては全くそういうつもりはないし、僕から見ても普通の行動だろうけど、相手からしてみれば行為(最低な誤字だが意外に的を得ていたので訂正しないことにする)を確信してしまうような言動が見られる。
ともあれ、そんなものは勘違いしてしまうやつの方が悪いに決まっているのだから、彼女は自分の背負える範囲で彼女らしく生きてほしいと僕は思う。幸いにも、最近恋愛関係の方も幸せというか紆余曲折在りながらも、それなりに形になっているようだし、僕はその関係を眺めて微笑ましく思うだけだ。
あまりに良すぎる人間としての苦悩を抱えているクラリオさん。それなりに自分のことを守ろうと変化しながらもそのままでいてほしいと矛盾した願いを抱いてここで終了とさせていただこう。
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