四人目 ゆうりん
彼女に関しての話をすると、大概あらぬ疑いを受ける。それには正直に言ってもう慣れているといってもいいのだけれど、改めてここで明らかにしておくと、僕たちは究極系のベストフレンドである。僕個人としてゆうりんのことは可愛らしく、ユーモアもあって、大人びている子供だとは思っているけれど、それは結局のところ親愛の形として存在しているのであって、まかり間違っても恋愛感情に発展することはまずありえない。今のところ一番僕と付き合いが長い人間として彼女は位置づけられているのだが、もうここまでくると幼馴染とかそういうのに感性は近くなってくる。
妹や姉がいかに美人だったとて、実際に血が繋がっていればそれ以上の発展など決して存在しえない。ありえると思っている人はエロ漫画の読み過ぎか中々拗らせた性癖の持ち主であると言えよう。
だからまぁ何故か言い訳がましくなってしまったが、これから先に続く言葉はそうした含みのないものであると捉えていてほしい。死ぬほど僕と近くにいるけれど、どうしたって、常に二番目の距離にいる人物なのである。彼女に関しては。
ゆうりんと言えば何を思い浮かべるか。僕としてはやはりその絵だろうか。僕には好きなイラストレーターとか色々いるけれど、個人的には彼女の絵が一番好きだ。僕のために絵を描いてくれた時とかテンション上がって人を殺めてしまう。あんまりがっつり褒めても伝わらないので、大人しく彼女の絵を見ていただければ助かる。
なので、僕はこう、あんまりスポットライト当たってないけど、文章力とかそういうほうに関して話したいなぁなんて思っている。絵描きとしての顔が馴染み過ぎているから知らない人も多いかもしれないが、彼女の文章やそれに付随する世界観というのはなかなか素晴らしいものがある。二次創作をやっていたりすることもあるけれど、毎回綺麗に原作の文章を噛み砕いて血肉にしてから書いている。それは僕にはできない――というかしたくないことであり、ひそかに尊敬している部分でもある。
僕が彼女をセッションに誘ったのはその文章力を高く評価したから。あと感情を昂らせてプレイヤーではなくキャラクターとして動いてくれそうだったから。
なのだが。
まぁなんというか偶然にも。
ファンブルクイーンとしての才能が彼女に眠っていたとは思いもよらなかった。
あの一つのダイスロールでどれだけのドラマが生まれたかは計り知れない。もしかしたらこの卓があそこまでにぎわっているのはあの一発の銃弾がドア越しに黎明操る沙羅をぶっ殺したおかげかもしれない。そう考えると彼女の死は無駄ではなかったし、むしろ死んでくれて助かったと言える。
救済シナリオというか、全然救済ではないのだけれど、沙羅を救うチャンスを与えたこともあった。内容は簡単で、椅子に縛られた沙羅――事故によって彼女が殺してしまったキャラクター――を、改めて自分の手で撃ち殺せという残虐で最低極まりない僕制作のシナリオ。それを彼女はよくもまぁ演じてくれた。
しかも最悪のエンディングを彼女は迎えてくれた。同時に死のうとして、それでも自分だけが生き残ってしまうという胸糞悪い最悪のエンディングを、選んでくれた。
あの時のKPである僕はもう完全に思考がニャルラトホテプだったし、彼女も彼女のキャラクターと化していただろう。シナリオ終了後の感想タイムで信じられない程ガチで泣いていたのをよく覚えている。正直怖かった。
でもまぁ、そこまで自分の作品に溺れてくれたということは、やっぱり一人のクリエイターとして嬉しい限りである。微妙に距離を取りながら、そして時には近づきながら育ってきた僕たち二人は、やっぱり性別も年齢も住んでいる場所も違うようで、どこか同じなのだ。どこがどうとかは言わないし言えないし、そもそも分からないけれど、どこか根底にある基盤というのは多分同じものなのだと思う。
まぁそんなわけで。これからも彼女の物語に僕が悲しみや絶望を添えられるのだと、勝手に期待したところで、誠に勝手ながら、このエッセイを終わりとさせていただこう。
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