第九話 帰還とトラブル 4


小鳥のさえずりが聞こえる。どこからか光が差し込んでいる。


「ここは……どこだ? 」


僕は少し眩しかったので手で空を仰ぐようにして光を遮った。周囲を見渡すと、僕はベットの上に寝ていた。右は壁、少し上を向くと小窓があり腕一本通りそうなくらい空いている。左には白い布、カーテンで隣と遮られていた。


病院っぽいけど……なんか違うんだよな。


ここがどこなのか思惑していたところ遮られていたカーテンが開かれた。僕はなぜか咄嗟に目を瞑ってしまった。反射的になのか、あのことを思い出したくないからなのか……。


「もう起きてるだろ? ……聞こえないふりせずにさっさと起きろ!!」


「は、はい! お、起きてます起きてます」


凄いこの人、僕が寝たふりしたのをすぐに気付いた! それに……物凄い殺気。


「さて、まずはあんたらの名前はなんていうだ? あたしはサイル・トーリッヂだ」


サイルさんの第一印象は、髪は金髪だし(異世界だから当たり前なのかも知れないけど)なんか、棍棒を持ってそうなイメージがある。でも瞳は水色なんだよね~。


……て、あんた、ら?


「サイルさん! 咲夜は?!」


「咲夜? そいつぁ、これか?」


そう言ってサイルさんは後ろのベッドで寝ている人を指差した。その人はぐっすり眠っている。


「あぁ、良かった。無事だったんだね」


「無事? そいつぁ違うぞ、お前の方が断然酷かったんだからな。他人のことよりまず自分の身体を心配しな」


そう言いながらサイルさんは、僕を見下ろしながら顔を近づけて怒鳴った。


「……で、名前は?」


咲夜のことですっかり名乗るのを忘れていた。僕は慌てて名乗った。その後ここがどこなのかを聞いた。


「ここはあたしら『亡霊の氷帝テリー・アイスクルシス』のギルドだ」


亡霊の氷帝テリー・アイスクルシス?」


僕は反射的に聞いた。


「知らないのか?! ……それなりに有名なギルドだと思ってたんだがな」


そんなに有名なギルドなのか? 僕は異世界の知識、無いからな……咲夜がいればもっとサクサク話が進むんだろうけど……。


当の本人はベットでスヤスヤ眠っているままだ。寝顔は角度的に見えないが胴から下だけがギリ見えている状態だ。


「あぁ、えっと……僕達ここに来てからまだ日が浅くて、そうゆうことに疎いんです」


するとサイルさんは納得したのか『亡霊の氷帝テリー・アイスクルシス』について話して始めてくれた。


――要約するとこうだ。ギルドとはパーティーの大型版のような組織のことで、最低でも10人から創れ、多いところは100人以上居るそうだ。ギルドごとの依頼達成数に応じて称号が貰えたりするらしい、中には報奨金が貰えたりと稼げたりもするっぽい。ギルドの中でも『亡霊の氷帝テリー・アイスクルシス』は、冒険者ランクSがぞろぞろいる集団だとかで王国内最強ギルドの三本指に入っているという。


僕はちょっと気になった。なぜそんな凄いところに僕達がいるのか、と。なので質問してみた。


「なぜか~、そうだな。話すとちょっと長くなるんだがいいか?」


僕は考えることもせずすぐ頷いた。すると僕達がここに運び込まれたときのことを話し始めた。

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