第九話 帰還とトラブル 3


僕は早速試してみるべく詳細を見始め――ようと思ったが急に眠気に襲われたため、一度中断してまた明日試してみることに決めた。僕はスクロールを閉じるとそのまま布団に仰向けで寝転んだ――スマホは念のためカバンの中にしまった。一度条夜の方を見て寝ているのを確認すると、僕も布団を掛けて寝た――かったが、明日のことを考えるとつい眠気が飛んでいってしまった。僕は仕方なく布団から出てどうしようか悩んだ。その結果夜の街を徘徊する事に決めた。


 夜の街は意外にも物静かで、空気がとても澄んでいるように感じた。僕は一度この空気を大きく吸って、吐いた。その後適当に歩き始めた。


「――それにしても僕たちがこの世界に召喚されてからもう6日も経つのかぁー、明日で1週間。家族や友達は皆どうしてるんだろう……僕を、探してくれてるのかな……」


僕は地球にいる皆のことを思い出してしまい、思わず涙が溢れそうになった。周りが静か故か、1人が無性に寂しくなってしまった。


「……帰ろうかな」


この世界に来てから1人になったのはこれで2回目だが、あの時は自称神が居てくれたので寂しいとは思わなかった。


その前にも宿屋を探しに1人になったこともあったな。


「自称神か……」


僕はぼそりと呟く。誰かに言うのでは無く、ただ自分に問いかけるように。


『特殊?』を使えば自称神と話すことが出来る。でも……


「よし! 宿屋に帰るまでの間だけ、自称神あいつと話そう、かな……」


やはり戸惑いの方が勝ってしまう。でも意を決して『特殊?』を発動させようとしたときだった。突然頭にあの音が鳴り響いた。



『(なんで仕佐の時間つぶしに付き合わないといけないのさー?)


仕佐は不意を突かれキョトンとした。


……今さ、僕が掛けようとしたんだけど?


(うんうん、それでそれで?)


自称神は何事も無かったかのように見事にスルーした。


まあいいや、昼言ってたこと。あれはどういう意味?


(……)

自称神はなぜか黙ったまま少し考えるようにして、次の言葉を発した。


(勇者召喚には回数制限がある。……それともう1つ――)』



「……ハア、ハア。確か、この辺りだって……」


僕は自称神に言われ、西の住宅街街道へ急いで向っていた。その道中フードを深く被っている怪しい5人組を見かけたが、目的地の方を優先して急いだ。


途中、高等魔法学院やテイマーギルドを見かけたが、これも止まらず通り過ぎていった。


         ◆ ◆ ◆


「あ、な……たは? いった、い……」

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