第八話 昇級試験と少女


「はぁはぁ.......やっば.......ステー、タス」


咲夜は苦しいながらもステータスを表示した。


  職業 勇者  人影昨夜 Lv5  状態 酔い 体温低下 熱

 Hp328/532 魔力142/192 素早さ97 筋力27 知力98

 属性 火 嵐 水 光 

 スキル  経験値上昇C 武術D 初歩魔法耐性C 風耐性

      鑑定A 身体能力上昇C 異世界オタクSS

 魔法  潜伏C 爆風空間B 反射シールド

     竜巻D 火炎C 水球D 光明D  疾風風紀


「.......この状況を打破出来るような魔法もスキルもなし、か.......それにしても状態が.......」


酔い、てことはレベルアップ酔いていうことか.......体温低下は、雨に濡れて服がビチョビチョのせいだろうし、熱は.......恐らく濡れたまんまでいたから風邪を引いたんだろうね。このままで居るのはマズいな.......


「ん、.......あれ、咲夜?」


すると影兎がむくりと体を起こした。汚い手では目を擦れないのか、瞼が閉じかけている。


「えっちゃん、大丈夫?『水球』」


咲夜は苦しいながらも『水球』を使い、影兎の手を洗ってあげた。


「.......ありがと.......ふわぁ」


影兎は礼を述べると大きくあくびをした。その後綺麗になった手で目を擦った。


「――ヘッくしゅ!」


突然影兎が体をブルブルさせながらくしゃみをした。


「わっ、大丈夫?」


咲夜は影兎に大丈夫か尋ねた後、路地奥から物音が聞こえたのを聞き逃さなかった。


「しっ!……」


咲夜は素早く反応して影兎に声を出さないようにと、ハンドサインをした。影兎は静かに立ち上がると、咲夜の後ろへ行った。そして


「ボソッ、スキル『隠密』」



『(はいはい、このスキルの解説をするよう。スキル『隠密』とは足音などの『音』を消すことが出来るスキル。あくまでも『音』を遮断するスキルのため、姿形を眩ますことは出来ないのだ。)』



咲夜は影兎が隠密スキルを使ったことに気付き、軽く会釈をした。その後、物音がした路地裏に目をやった。闇の中からヒタヒタと足音のような冷たい音が聞こえてくる。そしてシルエット、輪郭、はっきりとした姿が見えた。


これは……獣人?でもなんで、あっ、首輪が付いてる手にも枷がついてる……ということは『奴隷』


咲夜は猫耳の生えた頭、首回りに付いている首輪、手にも付いている枷を見て、この娘が奴隷だと言うことに結論付けた。


「……あ、う……たぁ、つけて、くあさい」


その娘は必死に咲夜達に何かを訴えるかのようにしてジリジリと近づいてくる。


「……敵意は、なさそうだけど……『助けて』って言ってるように私には聞こえるんだけど」


咲夜の言うとおり僕も『助けて』って言っているように聞こえる。どうしよう、僕になんかがこの娘を助けることが出来るのか?


「――ねえ、何に怯えているの?」


影兎が考えている間にすでに咲夜はその娘と話していた。


「――おおひな、こふぁいの……たつ、けて」


必死に教えてくれようとしているが、詳細がはっきりしない。


「んんー?大きい、怖い、助けて?」


咲夜は何とか分かった単語だけを復唱した。

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