第10話


…思い出しましたか?

ゴート刑事。既に貴方の暗示は消えたはずです。



たしかに私の記憶は、戻ってきていた。


…ああ。そうだ、私は全てを見ていた。



…全ては終わってしまったのだな。

私は真相を取りこぼしてしまったのだ。

この一連の事件に関わる最も重要な人物を失ってしまった。




…ゴート刑事。予定通りであれば、もうすぐ応援が駆けつけます。


…予定?




何故かアマラは私に銃口を向けている。




…どういうつもりだ、アマラ。



…ゴート刑事には、本当に感謝しかありません。

私は何処までいってもどうしようもない"悪魔"なんです。



…落ち着くんだ、アマラ。君にこれ以上一体何の理由がある。



動かないで…!



どうやら彼女は本気らしい。



…通報したのは私です。

"ひとりの女性が男性に銃を向けている"

おそらく、先ほどの銃声の情報と付合してすぐに大勢の警官がやってきます。



…本当に、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…。



アマラは大粒の涙を流しながらも、慟哭に抗っていた。

その決意は固く、気が動転していようとも、

私から銃口を外そうとはしなかった。



明らかにその姿は異常だった。




武器を捨てて、投降しなさい!!

気がつけば私とアマラは警官に囲まれていた。




私が刑事だと気がついた者は更にその警戒を強めた。



…お願いだ、アマラ。

今ならまだ間に合う。君は何も悪くないんだ。



違う!違う!違う!

私は、私は、




武装した警官達は、一斉に銃口を向けた。




やめろ!彼女を撃つな!




しかし、刑事の言葉に聞く耳を持つ者はいなかった。




ごめんなさい、ゴート。

やめろ、止めるんだアマラ!




彼女は微笑むと、刑事の右膝を撃ち抜いた。

一瞬の出来事だった。

包囲していた警官達による一斉放射が始まり、彼女はものの数秒で命を絶った。




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