第8話

…起きて、ゴート…!


…私は、一体。


君は…。

ア…マラか?


貴方を助けにきました…!


身体が、動かない、無理だ、


諦めてはダメです…!


ここに、いては、いけない、

アマラ、逃げろ…!


カマラは、わたしに、君を、殺すように、、、



それは知っています…!


どうして、なにが、起きている?




…カマラは…死にました。



なん、だって、、一体、だれが…。



……カマラ自身が自殺したんです。



…ゴート・グルーさん。

いや、"ゴート刑事"。


貴方は全ての真相を知っています。


…何の事だ、いったい、私は何も知らない。

何も見ていない。


…いいえ、全てを見ています。

貴方の中の貴方は全てを見ています…!






…私は気がつくと暗闇の中にいた。

手足の自由はなく、喉の奥にまで詰め物を入れられていた。


…私の背後から消えたカマラは、

その直後、私の手足の"拘束"を解いた。


カマラは私が既に壊れてしまったと思ったのだろう。

しかし、自由になった私には既に課せられていたある"指示"が身体中を巡っていた。



私は、"指示"を実行に移す為、行動を開始した。


私が地下室から出てきた事に驚いたカマラは、

同時に私に与えた"指示"が実行されるのを危惧して慌て始めた。


意外な事に、やはりカマラは妹を本気で殺そうとは考えていなかったのである。


彼女は私に与えた"指示"を取り消そうとしたが、私は彼女の"指示"を無視した。


こんな事は初めてだったのだろう。

酷く取り乱したカマラは、妹に危害を加えさせない為に、

私にあらゆる新たな"暗示"をかけようとした。

しかし、それは全て無駄だった。


カマラは酷く慌てて、しまいには泣き出してしまっていた。

父さんと同じ、父さんと同じになってしまう…と何度も何度も泣き叫び、

私を止めようとした。


しかし、私の四肢はもはや、制御の効かない機械のように、

彼女が差し向ける障害を押し除け、外へ飛び出してしまった。


カマラは"家族"を使って私を殺そうとしたが、

"暗示"の力によって私の身体は弾丸を通さなかった。


"なす術を無くした"カマラは耐えきれなくなったのか、…自殺した。


その後、カマラの暗示にかかっていた"私たち"は皆解放された。





…。


…ゴート刑事、なぜ、姉さんが自殺したのか分かりますか?


すべての暗示を取り消すためです。


姉は、暗示にかかった者達が、

姉が死んだ事を確認する事で、

姉がかけた"暗示"を消すという

最後の手段を本来の暗示のうえから、二重に対象にかけていたんです。

  



…今度は取り返しがつくように。




…私はこうなる事を知っていました。姉の愛を利用したんです。



…どういう事なんだ?


最後に貴方にかけられていた"指示"は姉の、"アマラを殺す"ではありません。

そもそも、姉の暗示はかかっていなかったんです。


…なんだって。


"最後まで"かかっていたのは、私の"何があってもアマラの元へ帰ってこい"という暗示でした。



当初、本当の貴方と私達が計画していた、

姉の暗示を契機にゴート刑事に戻るという暗示は失われました。


"アマラを殺せ"という暗示が与えられた瞬間から、

"私の元へ帰ってこい"という暗示に私がすり替えていたんです。


姉の力でさえ、受け付けないほどの強力な暗示を、

私は無意識に貴方の潜在意識の根底に忍ばせていました。


姉が貴方を壊す為、冗談であっても、

貴方に私を殺すように暗示をかける事は予想がついていました。


…姉は幼い頃から、力比べの最後に、自分が勝つのを知っていました。

そして悔しがった私が、姉に"兵隊"を使って仕返しをしようとすると、

姉はそれと反対の事を命令して私に差し返しました。


しかし、姉は絶対に私を兵隊で傷つけた事はなかったのです。

差し向けられた兵隊は私を傷つける前に、姉によって諌められ、

何事もなかったかのように、いつも仲直りするんです。


私が姉を殺す為に貴方を送ったと知ったら、

姉はきっとそれを差し替えてくる。


…どうしてそんな事を。


…結局私も姉に逆らえなかったんです。



…?



…かつて姉は私に対して、一度だけ暗示をかけました。

それは今、この瞬間までずっと続いてきた呪いです。




…姉は私に、

"カマラを"苦しみ抜かせて"殺すように"と強い暗示をかけていました。



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