第6話
…目が覚めたのね、おはよう。ゴート。
…カマラ!
意識を取り戻した私は、薄暗い小部屋の中央に居た。
何処からか水の滴る音が聞こえる。
気分はどうかしら?
…最悪だ。
そう!
…おそらく私の背後にいるであろう"カマラ"は私の視界に隠れて、どうでもいいお喋りを始めた。
…ねぇゴート。
…。
どうして、あたしがこんな風になってしまったか分かる?
…興味ない。
あら、そう。
それはね、"アマラ"のせいよ。あの子にやられちゃったの。
…彼女が?
そうそう、やっと聞く耳をもってくれたね!嬉しいわ!
あたしとあの子は、時々こうやってケンカしていたのよ。
私があの子に暗示をかけた後、酷い仕返しにあってしまってね。
あたしはこの通り、"寝たきり"になってしまった。
あの子は、あたしが動けなくなれば、遊びは終わるんだと思ったのね。
…あんたは人を殺して楽しんでるのか?
ううん、まさか!そんな酷い事して楽しいわけないじゃないの!
だったら、私に人殺しをさせると言ったのは何だったんだ?
あれは、あの子を誘い出すためよ!
あたし達は、"人を成長させる"のが好きなの!
…成長?
もしもあなたに、絶対に出来っこないって感じているものがあったとして、
それが本当は簡単に出来てしまうとしたら、嬉しいんじゃないかしら?
あたしは、全ての人間が能力を解放すべきだと考えているの。
でも、あの子はそうじゃないみたい。
どうしてかしら?どうして覆い隠そうとするの?
…。
あたしは、あの子にあたしと同じ力を与えたのよ。
あの子が生まれた時には、その力はなかった。
あたしがあの子に暗示をかけて、力を引き出したの!
…"アマラ"は普通の子だった?
そう!あたしだけだったのよ!特別だったのは!
アマラと遊べるようになってからは、あたし達はよく力比べをしたわ!
あの子は小鳥を捕まえてきては、飛べなくする事が得意だった。
そこで、今度はあたしが小鳥に飛ぶ事が出来るようにまた暗示をかけるの。
するとどうなると思う?
"大抵"は、暗示が上手くいったほうの言うことを聞くのよ!
そうやって、あたし達は力比べをして遊んでいたのよ。
そういえば!あなた、私たちの事知ってるのよね!
"アマラとカマラ"だって事。
ちょっとした有名人だったのよ、
あたし達、昔は!あの頃は楽しかった!
…そろそろ黙ってもらえないか?
あら!ごめんなさい!あたしずっと一人で喋っちゃてて!
…じゃあ、聞くけど、"ゴートさん"。
アマラは、本当にあたしを殺そうとしたの?
先ほどの無邪気な態度は消え、カマラの真剣な声色が聞こえてきた。
…ああ。
私は依頼を受け、彼女の暗示を受けて、ここへきた。
…そう。
たしかに嘘は言ってない。
…あたしの"家族"は嘘つきと、暗示にかかっている者には反応する様に"指示"している。
けど、それを潜り抜けたって事はあの子も成長しているのね。
あたしの"家族"では見抜けなかった。
…では、"ゴートさん"。
今度はあたしが貴方に"指示"をする番よ。
…貴方を使って、あの子へのメッセージを送ろうかとも思ったのだけど、
それもやめにしたわ。貴方にはアマラの"絶対"が入ってる。
だけど、わたしの"指示"には耐えられるかしら?
…口を開きなさい。
…貴方は、"アマラ"を殺す。
…!
…驚いた。主人に従順なのね?
それとも、貴方の流儀という奴かしら?抵抗が強いわね。
でも無駄よ。
…貴方は解放される為に、あの子を殺さなければいけないわ。
しばらくするとゴートは、抵抗をやめた。
…緘黙状態に陥った彼は、ピタリと動かなくなった。
そう、言い忘れていたわ。
"大抵"以外の小鳥が最後はどうなったか。
貴方のように矛盾した二つの命令に逆えずに、壊れてしまうのよ。
…カマラは姿を消し、ゴートは暗闇の中に取り残された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます