第4話


デートの最後、ゴートは家に招かれた。



殺し屋ということを忘れてしまったゴートは、

自らの清廉潔白さを誇りに思う、

市民を守る良心的な警官に生まれ変わっていた。


"ガールフレンド"の両親や兄妹にも気に入られたゴートは、ある一室に招かれた。


是非、私の"妹"にも会ってほしいの。

妹は"寝たきり"なのだけど、貴方の話を聞いて是非会いたいと言ってくれたわ。


本当は合わせるか、少し迷ったの。

でも、貴方ほど素晴らしい人はいないと思う。

きっと妹とも、"家族"になれるわ。




通路の先には、愛らしい装飾が施されたピンク色の扉があった。



ゴートが扉を開けると、

そこには介護用ベッドの上に横たわり、

幾重にも人工チューブで繋がれた娘がいた。


ゴートは、あまりの衝撃に一瞬たじろいだが、

彼女が家族の大きな愛に包まれていることを感じて、

その一歩を進んだ。


憐れみを感じた自分を恥じたが、先に言葉をかけたのは、"妹"の方だった。



あなたがゴートなのね!会えて嬉しいわ!私は"カマラ"!


カマラは首だけをこちらに向けて話かけた。

酸素マスクで喋りづらそうにしていたが、

些細な事は気にしていないらしかった。


やぁ、カマラ!はじめまして、私も君に会えて嬉しいよ。


おそらく、カマラは身体の自由が効かないのだろう、

首から下は全身不随の状態だ。

呼吸器系や、循環系の低下を防ぐために様々な機具に繋がれている。

ゴートは不遜なこととは感じていたが、カマラの状態に心を痛めた。


そんな悲しい顔をしないで、ゴート。

私はとっても元気なのよ!


ああ、そうだね。


カマラは、近くにいた"姉さん"に自分を車椅子に乗せるよう、お願いした。

…作業が終わると、カマラは姉を部屋の外へ出した。


いずれにしても身体を自由に動かす事は出来ないが、

それでも正面でゴートを見つめられる事に、

非常に満足しているらしかった。


私もっとゴートの顔が見たい。

もっと近づいてくれる?


わかった。


ゴートは、"警察官"なんだよね?

私ゴートの話が聞きたいの!

ここにいるといつも退屈だから。

ああ!構わないさ!


…ゴート、私の手を握ってくれる?

こうかい?

そう。

そしたら、私の目を見て。

うん。

…。

…。






ゴート、貴方、嘘をついたね。


…!

気がつくと、私は暗闇の中にいた。

どうしてだ!?なぜ私はここにいる!?


アマラに暗示をかけてもらったのね?


ふふ、あの子も面白い事を考えたんだぁ。


計画は失敗だ…!

私が記憶を取り戻すよりも先に、カマラの暗示にかかってしまった…!

アマラのかけた強力な"暗示"はいとも簡単に破られてしまった。



いつまでたっても、あの子は馬鹿ね。

"兵隊の調教"は私の方が上手なのに。

こんな小細工やめちゃって、総攻撃を加えなきゃ。

でも、いい進展ね!あの子もやる気が出てきたのかしら!

でもでも、それでも満足はしないのだけど!


…まずいな。おそらく私は死ぬ。失敗した。


ゴート、ゴートには今度は私の駒になってもらうよ。


何をするつもりだ?

…人殺しだよ。

…。


理由は聞かないの?


…意味がないからな。


そう!でも、教えるね?

こうでもしなきゃ、あの子は"兵隊"を送ってこないから。

あの子を本当にやる気にさせなきゃいけないの!

それが、今回ですごーくわかったの。


あんた、何をしたいんだ?

妹と遊びたいだけよ!


そうか…。

カマラとの問答のあと、私は意識を失った。

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