3-4

「ルーシの南下?」


 濡れた髪をガシガシと乱暴に拭きながら、ルトフィーは下座に控えていたカランフィルを見遣る。

 薄布ペシテメルがじわじわ水気を帯びて重くなるのを指先で感じながら、その語尾を持ち上げ訊ねると、絨毯の上に腰を下ろした彼は是と頷いた。

 先ほど浴場ハマムに乱入してきたこの監督長クズラル・アースゥに対し、色々――本当に、色々・・、複雑な気持ちはあるものの、彼が元皇帝スルタンであるルトフィーの入浴時にまで押し入ってくるなんて、緊急以外の何物でもないだろう。

 ヒュマシャに「お前はゆっくりしていけ」と伝え、浴場を後にしたルトフィーは、用意されていた下穿きシャルワールに足を通し、長衣カフタンを素肌に羽織って自室へと戻っていた。


「えぇ。ユーフス・パシャからの密書よ」


 ユーフス・パシャとは、このトゥルハン帝国における高官のひとりである第四宰相ウェジール・ラービーの地位にあり、元は、ルトフィーが帝位にある頃に小姓ハス・オダを務めていた子飼いの青年である。

 ユーフスは、そこで帝位に就いたばかりのルトフィーと出会い、志を共にし、その頃から手足として、目として、耳として働いてくれていた。彼が【黄金の鳥籠カフェス】の住人となったいまも、こうしてカランフィルを介し、諸外国の情勢や、国内の派閥状況などを定期的に知らせてくれている。

 青年はカランフィルから差し出された紙を受け取ると、そこに刻まれた文字を追う。トゥルハン語で書かれたその内容は、送り主であるカランフィルへのご機嫌伺いや、現・皇帝であるマフムトや皇太后ヴァリデ・スルタンへのおべんちゃらが、目が滑るほどに書き連ねられていた。

 けれど、その実、帝位にあった当時に彼らの中のみで決めた法則性によって暗号化された密書である。


  ――ルーシ大公国内部で、南下計画が進んでいる模様。

  ――恐らく、出陣はこれまで同様に、エゴール・スチェパネンコ将軍になると思われる。


 知事としてユーフスに与えられた任地は、首都・ケトロンポルスに近い主要都市である。そんな彼が、はるか遠くの北国の情報を何故知る事が出来たのかと言えば、元々の彼の出自のせいだ。

 小姓は、強制徴用デヴシルメという、この国特有の徴兵制度によって集められた異宗教徒の少年たちの中でも、特に容色の優れた者のみが選ばれ、採用される仕組みだ。けれど、ユーフスは、実は強制徴用によって無理やり集められたわけではなく、自ら望んでトゥルハン帝国の奴隷となった。

 元々、水の都として知られるウェネト共和国の、とある貴族に仕える馬丁だったユーフスは、そこの屋敷の娘と密かな恋仲だった。身分差から、将来を夢見ることができるわけでもなく、ただ互いにひっそりと、言葉にするわけでもなく、想いを寄せ合っていたらしい。

 いつか、娘が相応の相手に嫁ぐ――。

 その時は、誰よりも祝福しよう。

 笑顔で、「お嬢さま、おめでとうございます」と言う練習をしていたのだと。

 ――けれど。


  ――お嬢さまが旦那さまの任地に遊びに行くっていうんで、船で出かけられたんです。


 そこを、人攫いに襲われた。

 娘を幸せにしてくれる誰かの許へ嫁ぐのなら、諦めもつく。けれど、他国で奴隷として売られた少女を何とか助けたいと、祖国を捨て、この国までやってきたのだと彼は言った。


  ――この国で偉くなれば、きっとお嬢さまをを、探し出すだけの権力ちからが手に入る。そう思って、ここまで来ました。

  ――ふぅん。具体的に、どの地位まで上るつもりなんだ?

  ――特に設定はないですが……。俺は、お嬢さまを探し出すだけの権力ちからがあれば、それで。それを陛下が下さるのであれば、俺はきっと誰よりも陛下のために尽くす手足となります。あなたの目となり耳となり、働きます。

  ――はは、そりゃいいな。じゃあ、皇太后の意見に「御意」としか喋れない大宰相ジジイには、とっととその席を降りてもらうか。

  ――いえいえ。大宰相ヴェズラザムにもなると嫉妬の暗殺が怖いので、第四宰相辺りでお願いしたいです。

  ――ふはっ、お前、それでも上位に食い込もうとするの、イイ性格してるよな。


 徒然に、そんな身の上話を聞いた――そんなある日。

 ルトフィーは、彼ら小姓を数人付き従え、御前会議ディーヴァーヌに参加する為、第二の中庭に出た。いまにも泣き出しそうな空模様に、僅かに肌寒さを感じる日だった。

 ドームの間クッベ・アルトゥへ進む中、後宮ハレム入りするのだというジャーリヤと出会った。如何にも皇帝でござい、という集団が前からやってきたことにいち早く気づいた宦官は、道を譲るように脇へと逸れ、腰を落とし、頭を下げる。

 ちら、とそちらを見遣れば、後ろに連れた女も同じように慌てて平伏する。明るい栗色ブリュネットの髪に、灰簾石タンザナイトの瞳を持つその女は、顔を伏せる一瞬前に見た表情から察するに野心よりも怯えが先についているような――そんな大人しげな風貌だった。


(きっと誰しも望んで奴隷になり、後宮に入ってくるわけでもないだろうに……こんなどこにでもいるような娘さえ、一度入ってしまえば、権力と金に溺れ、生と死が常にまとわりつく人生になるっていうんだから、恐ろしいもんだな)


 そう冷めた目で見ていたルトフィーは、どんどん暗くなる空の色に、雨が降り出す前に行こうと肩越しに振り返り、小姓たちへと声をかける。

 その、瞬間。

 視界の端に、驚愕に目を見開くユーフスの姿が映った。

「お嬢さま」と、ただ一言、唇が音のない声を刻む。

 空気の震えに気づいたのか、それとも思いつめた視線を感じたのか。俯きがちだったその少女のおもてがす、と持ち上がり――。

 ポツ、とついに空が泣き出した。

 女と、ユーフスの頬に、雨がツ、と流れる。


(あぁ、そうか)


 ルトフィーの脳裡に思い浮かんだのは、かつての彼との戯言めいた約束。

 その後、ナクシディルというトゥルハン名を与えられたその少女は、小姓から第四宰相へと抜擢されたばかりのユーフスへの祝いとして、皇帝から下げ渡された。

 早、三年ほど前の話である。


(まぁ、だから、実際ユーフスってよりも、元々あっちの貴族に人脈パイプがあるナクシディル経由でウェネト共和国から得られた情報なんだが)


 ともあれ、ユーフスはあの日の約束通りに、退位させられ、幽閉されているルトフィーの為にいまも手足となり、目となり、耳となり、情報を届けてくれている。


「でも、もうすぐそこに冬が差し迫る中で、ルーシの南下ってのは考えにくくないか」

「ユーフスも、少し懐疑的な情報だって手紙の中で言ってましたわね。あの国、これから冬将軍が本格的に活躍する季節でしょうし……」


 ルーシ大公国は、この大陸の最北端に位置するだけあって、真冬は雪と氷に閉ざされた国となる。外敵からの守りとしては、冬将軍の到来は鉄壁の防御となり、過去何度もそれにより他国が敗退しているわけだが、同時に自分もこの時期は外に討って出る事は叶わない。

 ある意味、諸刃の剣とも言える、ルーシ大公国の奥の手である。


「まぁ、事の詳細は概ねわかった。引き続き、この情報を追いかけるよう伝えといてくれ」

「えぇ。了解」


 もう一度、手紙へと視線を落として見落とした情報がないか確認するが、特にこれ以上はないようだ。恐らくユーフスとしても、背景の推察などは後にして、とりあえず第一報を鮮度の高い内に届けようとしたというところだろう。

 ルトフィーはカランフィル宛ての手紙から視線を持ち上げ、元の持ち主へと返そうと手紙を差し出した。けれど、じっと自身へと黒曜石のような瞳を向けてきている彼に気づき、軽く眉根を寄せる。


「何だよ。じっと見て」

「……あぁ、いえね。ごめんなさい。ただ、ちょっと……ルトフィーさまは今後、どうされるおつもりなのかしらって思ってしまって」

「どうって……、まぁこのルーシの問題がどう転ぶかわからんからはっきりとは言えないが、これをキッカケに仕掛けられたらいいだろうなとは思ってるよ」

「そう……。じゃあ、帝位に返り咲くおつもりは、まだあるって思っていいかしら」


 ガタ、と窓を外の風が叩く。

 どうやらひと際大きな海風が吹いたらしい。

 高く上がった陽は、とっくに西の空に傾いており、格子の影を部屋へと落としている。

 ルトフィーは、窓の外へとやった榛色ヘーゼルの瞳へと睫毛をかぶせて行きながら、まだ頭布ターバンの巻かれていない髪へと指を入れ、ガリ、と掻いた。


「マフムトがうまくやってくれるようなら、別に無理してそんな事する必要はないんだろうけどな」


 別に、皇帝という地位に固執しているわけじゃない。


「だけど、母上に……皇太后に逆らう事なく、ただ後宮の妾と戯れ酒に溺れている今のままなら、俺がそうする以外はないと思ってるよ。この国の未来の為には」

「えぇ……、アタシもそう思う。だから、お訊きしてもいいかしら」

「何だ?」

「ヒュマシャ」


 その名に、ルトフィーの頬がぴく、と動いた。

 ちらりと、伏せていた睫毛の先をカランフィルへ向けると、先ほど同様真っすぐに青年へと視線を縫い止めている。


「ルトフィーさまがもし復位なさったとしたら……。あの娘はどうされるの? もうあの子が鳥籠ここに来て、一月以上経ちます。いままでならば、とっくにどこぞの高官の許へ下賜なさっていたはずですけど? それとも、復位と同時に後宮の側室イクバルとしてご寵愛されるおつもり?」

「それは、ない」


 後宮の監督長たる彼の語尾へ食いつくように、ルトフィーは否定の言葉を鋭く言い放った。カランフィルにしても、ヒュマシャに対して情のようなものが芽生え始めているようで、もしかしたら幼い妹を案じる姉――なのか、兄なのかは微妙なところだが、そういった気持ちもあるのだろう。

 だからこそ、敢えて問うてきたのだろう。

 ――責任を取るつもりはあるのか、と。


「……まぁ、さっきうっかり理性が飛びかけた俺に説得力がないのは、わかってるよ。軽率だった」

「別にアタシは責めてるわけじゃないんですよ。今までルトフィーさまは、この鳥籠に入り込んだ妾に一切の興味を示されませんでした。その日のうちにアタシに身柄を渡されてましたし、そのまま数日の間に後宮から去ってもらっていましたからね」

「だから、ヒュマシャの場合は、状況が状況だからって説明しただろ」

「えぇ。それにしても一月も匿う必要はなかったんじゃ、ありませんか?」


 確かに、皇太后からの罠を疑っていたとしても、一月も匿う必要はなかった。それこそ数日のうちに、何故彼女がここに放り込まれたのかの予測はついていたし、何より皇太后に彼女の存在が知れ渡った段階で、とっとと外に出すべきだったのだ。

 けれど。


  ――あ、お菓子作ったけど、アンタも食べる? あ、だったら、こっち今手が離せないから、アンタが珈琲沸かしてくれない?


 元皇帝を、平気で顎で使う胆の太さだとか。


  ――夜中に本読むのほどほどにしたら? っていうか、灯りが微妙に眩しくて、あたしもなんか寝付けないんだけど。


 心配している素振りを見せつつ、その実、言動の大半は自分の都合のみであるとか。


(……思い返すと、本当あり得ないな……アイツ)


 でも。


  ――ルトフィー!


 裏も表もない顔で、カラカラと大きな口を開き、笑う。

 小鳥の囀るような美声でもなく、高くもなく低くもないあの声が、自身の名を呼ぶ――ただそれだけが、楽しかった。

 彼女との生活を、少しでも長く持たせたくて、結論から目を逸らしていた。


「いまさらあの娘だって、よその男に下賜されるのを喜ばないでしょうよ。だったら、いっそ、復位の時に――」

「カランフィル」


 青年の声が、鋭く後宮を統べる男の名を呼ぶ。


「俺は、アイツを後宮の中に入れたくはない。アイツを、大嫌いなあの場所に置くのは絶対に嫌だ」

「……でも、あなたが復位された暁には、後宮だって変わっていくんじゃないかしら。特にあの娘が側室となれば、きっと今までのようなものじゃなくなりますよ」

「はっ。女子供の読む恋物語じゃないんだ。側室ひとりだけを寵愛し続けられるなんて、そんな保障はどこにもない」


 恐らく復位した時は、後宮だけでなく、この国のまつりごと全てが変わる事だろう。カランフィルのいうように、もしかしたらヒュマシャのみを寵愛するという事が――他国のように、彼女を正式な后として迎える事も可能になるのかもしれない。

 けれど、そんな根拠も特にないような希望だけで、彼女をあの場所に囲いたくはなかった。この国の最盛期を作り上げた賢帝・エルトゥールル一世でさえ、寵姫ハセキであったギュルフェム以外にも、子を設けさせられていた・・・・・・・・・

 それよりも能力的に優れているだなんて言えない、世界の情勢も明らかに不利なこの状況で、恋物語のような都合のいい展開を夢見る事は出来なかった。


(でも)


 ルトフィーは、言葉を探すように、視線をカランフィルから横へと流す。そして、見つけたそれを音にしてしまっていいものか、口内の壁に舌を這わせた。


「いっその事、逃げてしまえればいいのに――と、ちら、とそんな甘ったれた考えが、過らなかったわけじゃない」


 幽閉されてから既に二年。

 これまで何度も数え切れないほど、皇太后の手の者がこの鳥籠を訪れた。

 命を狙われた回数は、季節の行事よりも多いだろう。

 そんな中で、ルトフィーは今まで一度も逃亡を計ろうとしたことはない。


(まぁいずれ、帝位に返り咲いてやるという計画もあったからな)


 だからこそ、きっと皇太后たちは油断している。

 まさか、今さら逃げはしないだろうと。

 だから、やろうと思えばきっと出来なかったわけじゃない。


「……そうなさりたいと仰られたら、アタシたちはいつでも従いますよ」


 ユーフス同様に、カランフィルもまた表向きはどうであれ、ルトフィー個人に忠誠を誓う人間のひとりだった。付き合い自体ならば、ユーフスよりもカランフィルの方がずっと長い。


「売られたくせに、故郷で伝染病が流行ったと聞いて、いてもたってもいられなくて……帰ろうとして捕まったアタシを助けてくれたのは、十歳のあなたでした」


 今でこそ皇太后や大宰相、皇帝に媚び諂い、要領よく生きているカランフィルだが、この宮殿に来たばかりの頃は図体ばかりがでかい、泣き虫の男だった。故郷が恋しくて逃げようとしていたところを見つかり、折檻を受けていた彼を見かけたのは偶然だった。

 状況的に、どういう事なのか判断し、咄嗟に出た言葉が、


  ――あ、お前、俺のボール拾ってきてくれた?


 だった。


  ――ルトフィー殿下。この者を知っておりますか?

  ――うん。さっき遊んでたボール、外に行っちゃったんだよ。で、コイツに取って来いって言ったんだけどさ。

  ――ボール……? おい、カランフィル。そうなのか?

  ――あー、ごめんな。俺が内緒で取って来いって言ったから、お前言えなかったのか。


 ルトフィーのその言葉にまんまと騙された監督長たちが、彼を解放したのはそのあとすぐの事。

 そして何故あんな馬鹿な真似をしたのかと訊いてみれば、故郷に伝染病が流行っており、残してきた幼い弟妹たちが心配なのだと――そう言って、彼は、ぎょろりとした目からぼたぼたと大きな雫を落としていた。


「その後すぐでしたわね……。あなたが皇子として支給されていた私財をなげうって、アタシの故郷に病院を建てて下さったのは」

「……上に立つ者である、皇族としての義務だろ。それに、あの慈善事業のお蔭で皇位継承争いで有利に運んだって一面もあるし、お前の為だけじゃない」

「それでも、それをして下さったのはあなた様だけでした」


 だから。


「ルトフィーさまが、逃げたいのだと仰られたのなら、アタシたちは全力でその為に動きます。あなた様は、アタシたちにとってただひとりの、皇帝陛下ですから」


 志を共にした――と言えば、聞こえはいいが、とどのつまり共犯に仕立て上げたのがカランフィルとユーフスである。

 自分はそんなにいうほど、善良な人間ではない。

 ただ、巨大な帝国の皇子として生まれた事による矜持があるだけだ。

 この国を守るのは、他でもない自分なのだと。

 彼らが自分に対して向けてくれる忠誠心に見合うだけの人柄などでは、決してないのだ。

 自分は、彼らの弱みに付け込むように、恩を着せただけだ。

 だから。


「逃げない」


 ルトフィーは、辺りへと散らしていた瞳を真っすぐにカランフィルへと向ける。

 体重を預けていた長椅子セディルから起こすと、僅かに肌蹴て肩の見えていた襟を引いた。衣擦れの音と共に、引き攣るような疼きが肩から背に走る。

 視界の端に入ってくる光は、西の空に落ちた陽射し。

 すでに、盛りを過ぎた場所から差し込む陽射し。

 ――斜陽。


「女の存在によって政を変えた結果が、今のこの国だ」


 だったら、惚れた女の為だけに、俺が国を見捨てるわけにはいかないだろう?

 そう嘯くと、カランフィルは眉尻を下げながら、顎に皺を刻み、瞳を伏せた。


「――御意に」


 そう呟いた古い共犯者ともへ、ルトフィーは苦笑に頬を滲ませて、唇に弧を描く。

 橙色した陽射しが、部屋の絨毯に差し込んで、その短い毛足がキラキラ光を弾いた。

 近くを見ればこれほど輝いているのに。

 こんなに、柔らかな陽射しで部屋を暖めているというのに。

 ふ、と向けた窓の外では、太陽が西の空で輝いている。


「斜陽、だな」


 大切なものがなかった頃は、どんな事でも出来ると思った。

 いとしいと思う者がなかった頃は、どんな事でもしてやろうと思った。

 けれど、一度触れてしまったら。

 一度、その想いを抱いてしまったら。


(アイツとの生活が、永遠に続けばいいと――願ってしまった)


 永久に続く、鳥籠の生活を夢見てしまった。

 鳥籠で、幸せの名を冠する鳥と共に生きる事を、夢見てしまった。

 大切なものが出来た時、幸せな今日にしがみつきたくなり、死ぬかもしれない明日が怖くなった。

 一点の光があると信じた闇色に染まる明日よりも、ぬるま湯のような今日に留まりたくなった。


(だけど)


 窓の外には、落ち行く夕陽。

 橙色に染まった部屋で、ルトフィーは、は、と息を吐き、目を閉じる。

 沈む夕日を視界から追いやると、眼裏まなうらで幸せな今日が笑いかけた。

 そんな気が、した。

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