突然ですが君のことを褒めちぎろうと思います
いたまる
突然ですが君のことを褒めちぎろうと思います
「突然ですが君のことを褒めちぎろうと思います」
「は?」
いきなり何を言い出すんだ。考えても理解が追いつかない。俺を?褒める?どうしてその考えに至ったのか。こいつは何を企んでいる。そんなことを思い巡らしている間に、あいつは、颯太は、フェンス越しに背中合わせになるように座った。
「それじゃあ始めます!んー、何から褒めよっかなー」
強制的に始まってしまった。
「まずはねー、俺に付き合ってくれるところ。ほら、俺ってテンション高いじゃん?こんなに長く一緒にいてくれた人、お前だけなんだよね」
たしかに。こいつとは幼馴染で、昔からこんな感じだから慣れてるっていうのもあるけど。そういえば、こいつは明るいし、とっつきにくいわけでもないのに、友達といるところをあまり見ない。ただ、扱いづらくはあるが、良いやつではある。他のやつらも早く慣れてくれたら、と思っている。
「次はね、真面目なところ。テスト勉強もちゃんとやってて点数良いし、授業中寝ないし、宿題もすぐ終わらせるし、俺にも勉強教えてくれるし。あと、一回決めたことは絶対やり遂げるじゃん?すごいと思う。俺、面倒なことはすぐに投げ出しちゃうし」
授業中に寝ないのは当たり前なんだが。それさえ無かったら、こいつも点数はとれると思う。要領は良いんだから、ちゃんとやればできるのにやろうとしない。まあ、それでこそ颯太なんだが。
「あとはねー、かっこいいところ!背高いしイケメンだし運動も勉強もできるって何?!神なの!?」
いや、背はお前のほうが高いだろ。あと普通に顔は良いし、運動神経だって俺より良い。
え、そこを褒めるって何?ケンカ売ってる?自分よりステータスが上の人に褒められるのって嬉しいけど嬉しくないな。
「とにかく、お前の良いところはいっぱいあるんだよ。まだまだ褒めたりないくらいたっくさん!だから……だからさ」
沈黙。
話し声が無くなった分、今の状況を嫌でもわからされる。
初夏の微妙な暑さ。
嫌になるくらい眩しい青空。
つんざくような蝉の声。
屋上の隅の、光を反射する水溜り。
あいつが次に話す言葉がわかってしまう。
鼻をすするような音が聞こえる。
息を吸う音が聞こえる。
お願いだから言わないでくれ。お願いだから!
「飛び降りるなんて、言うなよ」
……ああ、言われてしまった。そんなこと言われたら、そんな涙声で言われたら、せっかく覚悟決めたのに。
「もう、死ねないじゃないか」
突然ですが君のことを褒めちぎろうと思います いたまる @tuna_onigiri
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