S4-月斗くん

『32-週刊記憶喪失』のショートストーリー

(フィクション成分70%)

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 職場での昼下がり


 軽い衝撃が走った、また主(涼音)のいつものアレか……たぶん落ちたな……。

 オレ(月斗)は自分の部屋から意識飛ばしてチラっと様子を見てみる。

 あれ、誰もいないじゃん、月乃は?桜花は?……きょろきょろ周囲を確認してみるが、誰もいない。


 あいつら、2日連続で主に代わって仕事してたから、疲れて落ちたのか……。

 めんどくさいけどオレがやるしかないか……。

 仕事の内容は、たまに後ろから見ていたし、なんとかなるだろう……どれどれ……。

 視界に飛び込んできたのは、最近見ていた単純な書類処理だった。

 これならなんとかなるな、めんどくさいけど、やるか。


 おっと、樹さんに連絡しておかなきゃだった。


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なんで誰もいないんだよ

しかたね、オレがやるか

月斗

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 作業を始めて数分すると、樹さんからメッセージの返信がきた。


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大丈夫か?

起きるかどうか判らないけど

僕が電話して呼んでみようか?

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 樹さんは主に甘いよね、ってより心配性、これくらいの仕事ならオレでもできる。

 まあ、どうしようもない時は頼むけど、一応返信しておくか。


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大丈夫

今日はオレが最後までやるよ

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「涼音さん、これもお願いしますね。」

 声をかけられたので振り向くと、厚化粧のおばさんがニコニコと伝票の束を差し出してくる。

 同僚の名前とかオレほとんど判らないんだよね、まぁ素直に引き受けておくか、後に面倒な事になると、オレが月乃に叱られるだけで、何も良い事はない。


 ふと気付くと、おっさんが斜め後ろに立ってオレの方を見てやがる。

 気持悪い!、見てるんじゃねーよ……、あーあれか、仕事のチェックってやつか。

 そんな突っ立って見てるヒマあるなら自分の仕事しろよ、オレはちゃんと仕事してるぞ。

 ん?まさかコイツ、オレの胸元見てるんじゃねーだろうな、気持ち悪い。

 オレは、胸元に手を当てて、服が乱れてないか、隙間がないか確認してみた。


 頭の中が騒がしい、ちびっ子どもが遊んでいるのか、集中力切れそうだ、チャンネルを切り替えて、できるだけ聞こえないようにしておこう……。

 

それにしても、本当に単純作業だな、これは飽きるわ。




 午後3時


 ふぅーやっと休憩。


「涼音さん、こっちでお菓子食べない?」

 また、知らないおばさんに声をかけられた。


「オ……わたし、トイレ行きたいので……。」

 ヤバ!、もう少しでクセで「オレ」って言いそうになった。

 オレは席を立って部屋を出る……えっとトイレはっと……やっぱり女子トイレだよな……ま、個室だからいいか。


 トイレを出たオレは、部屋に戻らずに、休憩室に向かった、同僚の顔と名前よく判ってないから、知り合いの少ない方を選んだだけ。

 オレは桜花みたいに愛想笑いとかくだらない話できないしな。

 そこで、缶コーヒーを飲んで休憩時間を潰す……あと2時間くらいで終わりだ、もう少しだガンバレ、オレ。


 午後4時頃


 オレは気付いてしまった、これ仕事終わったら着替えるんだよな……もちろん、女子更衣室で……急に不安になってきた。

 この身体は見慣れてるけど、他の女性の着替えとか見たなことないし……子供の頃から今まで、更衣室で着替える時にオレだったことないし……大丈夫かな?


 不安になって樹さんにメッセージを送ってみた。

 送ったところで、どうなるものでもないのは、オレが一番良く判ってるけど、……男同志としてオレの気持ちを判って欲しかったのだ。


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更衣室で着かえるんだよな

ヤバイ、オレどうしたらいい?

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 樹さんから返事がきた。


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何年その身体に同居してるんだよ

女の裸なんて見飽きてるだろ?

気にしないで堂々と着替えろ

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 ……そりゃそうだけどさ……。

 やっぱり何の解決にもならず、煽られただけだった……主にはいつも優しい言葉かけるのに、オレには全然優しくないな。

 オレも男に優しくされる趣味ないからいいけど。



 ついに終業「お疲れ様」の声が飛び交う中、オレも愛想笑いをしながら同僚らしき人達に挨拶をしていた。


 さて……行くしかないか……女子更衣室……無だ、無!。


―fin

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