―幕間―

S2-おまえか!美雪

『37-記憶の約束』のショートストーリー

(フィクション成分20%)

――――――――――――――


 由比は僕を、今までにない鋭い目で睨みつけていた。


「いつきさんは、主が戻ってきてくれたこと、嬉しくないの?」

「主(涼音)に戻って欲しくなかったの?」

 そう言って、僕を鋭い目で睨み続けている。


「昨日だってさ、あのお姉ちゃんと愛し合っていて……、由比、見てたんだからね。」

「主(涼音)より、あのお姉ちゃんの方がよかったの?」

「由比だって、いつきさんを好きなのに、由比のはじめてだって捧げたのに……。」


「おい!ちょっと待て!……『由比のはじめて』ってなんだよ!!??」

 徹夜で涼音が戻ってくるのを待ち、疲れ果ててグッタリとしながら、由比の言葉を受け止めていた僕は、聞き捨てならない言葉を聞いて、突っ込まずにはいられなくなった。



「だから、由比のはじめては……、いつきさんだよ。」

「!!??」

 僕には全く心当たりがない。


 由比に誘惑されてキスした時は、キスする寸前に涼音に交代していた筈。

 涼音と気持ちを確認しあって、女性として抱くようになってからも、涼音の時にしかしてない筈。あの隙あれば誘惑してくる美雪にさえ、キスとハグで止めてるというのに。

 僕は涼音の別人格達の中で、ちびっ子グループとされてる由比達を、女性として抱こうと思った事なんて一度もないし、実際に抱いていない筈。

 ちびっ子グループは僕にとって娘みたいな感覚、ありえない!


「由比……、どういう事か、ちゃんと教えてくれ。」

「えっとね……」


 由比の話を聞くと、ある夜のこと……。

 美雪が由比に声をかけてきたそうだ。

「今楽しい事してるから、人格交代してみて。」と……。

 由比は美雪の言葉に何の疑問も持たず、人格交代して表に出たら……僕が涼音を女性として抱いてる真っ最中だったらしい。

 ……その結果、由比のはじめては僕になったということらしい……。


「美雪お姉ちゃん、その後も由比にいろいろ教えてくれるよ。」


 おまえか!美雪!!


 何んて事してくれちゃってんの!!

 何勝手に僕の可愛い娘に性教育してるんだよ……ってかアノ美雪の性教育なんて内容聞くのが怖すぎるわ!!


「由比だけじゃないよ……。」


 ダメ押しきた!!……全てを聞かなかった事にしたい、何も知らなかった事にしたい……。


 僕もピュアに戻りたい。


 ……そうだ、話を戻そう。


「由比、そうじゃないんだよ……。」

 僕は由比に自分の想いを語って聞かせた。



―fin

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