疼く本能
__時刻はpm22時。
今日という1日が後2時間で終わり、また明日同じ1日が始まる。
その短い時間の中で何かやり残したことがあるかって?
そう。僕は出社前の早朝にデリバリーヘルスの女の子を予約したのだ。
朝に僕を吸い寄せた罪な女子高生、お前は有罪だ。
【君】のせいで僕は勤務中をも抜け出し社内同階、
廊下を歩く女の匂いを嗅ぎ回ってしまったじゃ無いか。
27歳のこの僕がだ。
飼い主を鼻で探す様に、途方もない答えを探し当てられなかってが。
【【僕の求めている物と合致しない】】
【君】が離れなくて。部署から200m先にある奥のトイレの個室にて、
吐き出し泣きながら霞んだ声でいった。
『なんなんだ!僕は何に苦しめられている?みんな違う頭がおかしくなりそうだ』
高校卒業してすぐに入った十代の子。違う部署の20代と思しき女性。
同じ哺乳類人間の女という女は嗅ぎ回った。違う。僕が求めているものと合致しない。
【君】の匂い。持ち合わせている雰囲気と違うんだ。血の匂いも多分違う。
無意識でも人を殺めてしまったら裁判官は有罪を下すだろう?
僕は至って平凡なそこら辺にいる冴えない男。
上司部下共々様に信頼して貰ってる好青年風だと思っていたのに。
デスクワークで脳汁を思っていたよりも絞り切ってしまった。
ごく僅かな脳中の汁を掻き集め、一滴有るか無いかを頼りに。
僕は会社の静まり返ったデスクの椅子からたった途端、
無意識に【仮面】を捨てた。
部署の入口にある扉のドアノブを、何かを殴る様に右手で右へ捻る。
そして部署から出た僕は、
汗ばんだ左手で、背にある使い古されたドアへ軽く手を伸ばす。
左手でそっとドアを撫で閉じた。
もうひとりの悪い僕は、平凡な僕を寝かしつけた。
僕の身体中の何万とあるリンパ線の血の流れが速度を上げ出した。
競馬場での競走前に興奮する馬の様に心臓の鼓動が早まる。
廊下の奥に灯されている緑色の非常口ランプを目指す。
硬めな廊下を淡々と歩く僕。
手入れがされた牛革靴のソールの音がコツコツと廊下へ響き渡る。
非常口のドアを開けて階段を一段一段。馬が走るかの様にカッカッと馬力を上げ早め降りていく。
_____まるでこれから起こす事を準備するかの様に。
続
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