思い出と現在





_______終点の〇〇駅停留所へ着く。


 女子高生がスクールバックから花模様のパスケケースを取り出し、

おしとやかな足取りで車内から降りていった。

 パスケースは手作りの物だろうか。とても彼女の雰囲気に合う女の子らしい物だ。


『こっちはどんな匂いがするだろう。はっ!こんな如何わしい事を考えて俺は|大馬鹿野郎だな。』


 最近、下の処理がご無沙汰だからだろうか。

元々風俗へ行かないし、水商売のお店も接待ぐらいしか行かない。

 今時、パスケースを手作りだなんて珍しいなと思いながら、

僕は揺れるバスの中で、女子高生が堅く掴んでいた手摺りへと手を伸ばす。




〈お客様!  〇〇駅停留所ですよー〉

バス運転手さんの呼びかけで僕は我に還り、無意識に掴んでいた手摺りを離した。


 『すみません!今降ります!!』


 忘れたい感情に嫌悪感を抱きつつ、今日片す予定の仕事を頭の中で考えながら、

駅の通路を寂しげに早々と歩く。

 定期券を改札へ通した男は、近くの売店でサンドウィッチを買い、

ホームの奥で足を止めた。

この通勤時間帯だと奥の車両の方が人が並んでいなく、席に座れる確率も高いからだ。一応、七人乗りのボックスカーを持っているが、電車通勤の方が安いのであまり乗らない。



『そう言えば、最後に乗ったのはレンタル屋さんへDVDを借りるため、

少し走らせたくらいだっけか。彼女と付き合っていた頃は良く遠出したな』

三年前に彼女がいた。料理上手で奥ゆかしい子。

二人で休みの日は、ドライブに旅行など行ったな。浮気されたが。



 そうこう思っているうちに、電車が来た。



〈ーーーーーー〇〇線、快速〇〇行きまもなく参ります〉



 車両のドアが開き、たまたま空いていた入り口付近の角席へ座り、前を見た。

下から視線を送り、黒のヒールにベージュのストッキング、

黒の少し履き慣れた感じのタイトスカート、

そして白のyシャツに目線を上げる。

 ウェーブがかった艶やかな黒髪の、メガネ美人な女性が座っていた。

ジロジロ見たら失礼だと思い周りを見渡すと、老若関係なく

男どもが僕の前に座る女性を見ていた。まあ僕も同じ野郎だが。


 ふと脳裏にある事がよぎる。

さっきの女子高生だ。

『女子高生のスカートの裾が手の甲に触れたからだろう』


だが、目の前の女性は何か違う感覚だ。


『最近する相手もいなくて人肌が恋しいし、

デリヘルのお姉さんを仕事が片付いたら家に呼ぶか』


 朝から怪しからん事を企む僕。

携帯を左手に持ち、デリヘルサイトで良い感じの子を探し、

予約した頃に会社の最寄駅へ着いた。


〈〇〇駅ー。〇〇駅へ到着しました〉

 

 駅のホームへ降りて仕事脳へ切り替える僕。

コツは特に無いのに我ながら素早く切り替えてるなと、

自画自賛する今日此頃。






      続

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