新たなフェチズムが開花し、どんな手段でも僕の物だけにするまでの過程。

@zyun_1022

淡い香り

人で犇ひしめき合うバス車内、

僕は入って直ぐ近くの二人用ふたりようの席へ座れた。

窓際にはお爺じいさんが座っている。



______エンジンが掛かり、バスが走り出そうとした時



「あっ!すみません待ってください!乗ります!」



 甲高かんだかい声を聞きつけた運転手は、すぐさま閉めたバスの扉を開ける。

バスに乗っていた乗客に謝る声は、とてもか細い少女の声で、

走って来たのか乱れる呼吸音が乗車口から微かに聞こえてくる。


〈発車します。おつかまり下さい〉


 バスのアナウンスが流れ、まずまずなエンジン音が鳴り響き走り出した。

『今日は渋滞気味か…会社間に合うかな…』


バスに貼られた広告へ視線を送り僕は黄昏たそがれに更けた。


『すみません失礼します…』


 先程の女子高生がペコペコしながら、車内の人混みを掻き分け、

掴つかまれる所を探し僕の前の手すりへと来る。

揺れる車内、人々は目的地につくまでの時間を、

スマートフォンやゲームをして過ごす。

 まあいつもの出勤時の光景だ。

僕は揺れる車内で目を瞑っていると、

手の甲に布のような感触を感じ何かと眼をひらく。






ーーーーーーーーーーーー⁉︎!?






 女子高生のスカートの裾がバスの揺れと共に、左右微動さしつつ

僕の手の甲を撫でる。

 気のやり場に困る僕。

決して素肌には触っていないが痴漢ちかんにはならないのかと、非常に焦る。

 触らずにターゲットの香りを嗅覚で楽しむ痴漢と言うのもある様だが、

考えた人の発想力が斬新だ。

とやかく考えるうちに変な汗が、身体中の穴という穴から湧わき出てくる。

出社前に何て下世話な事を。



『何故なぜ俺は女子高生相手にこんなひとり劇場を繰り広げているんだ!

落ち着け俺っ、あっ落ち着け僕!』

自分でも何故スカートの裾すそが触れただけで、こんなにも焦るとは思ってもいなかった。



 前日の仕事疲れが溜まっているせいだと、心の中で終止符を打ち、

やや窓辺に首を向けた。

 そして一呼吸しバレないように

手の上に乗る女子高生のプリーツスカートの裾が、大幅に動かないように慎重に動

かす僕。

 まるで積まれたジェンガが崩くずれないように、そっと木の板を抜くような

感覚だ。



『朝から何動揺どうようしているんだ僕は…自分で自分が嫌になる……』



 僕は黒縁メガネに、黒い髪色の至って普通の27歳の日本男児。

大学卒業と同時に、システムエンジニアの会社へと勤務。

上司からは熱い信頼しんらいを得ていると同時に、何故なぜか、弟の様に

先輩から可愛がられる。

 まあ自慢できる所と言ったら、身体が頑丈な所と真面目な所か。

 女性とのお付き合いは二度しているが、それを僕と来たら…


 早く駅につかないかと言わんばかりに焦るこの姿が、四方八方から他の乗客に変

な目で見られてるんじゃないかと、不安になる。



 『ああー…誰も何も気にしていないだろうに、僕は心配ばかりしてPTSDかよ』



_____________その時だった



 女子高生が手摺りにつかまりながら、眠いのかウトウトして

いた為、髪が僕のyシャツの襟に上下左右に揺れながら

微かに触れては離れてくる。

 yシャツの布地ぬのじと僕の出っぱった喉仏を、淡いシャンプーの香りと共に

優しく毛束の半ばから毛先までが撫でてくる。

 先程申した、ターゲットを嗅覚のみで嗜たしなむ痴漢と同じ様な動作をしていないだろうか。

 僕の嗅覚は無意識に、横から漂う香りに惹かれ鼻から体内に吸引すると、心拍数が速くなり香りにクラクラして来た。


 この症状は昨夜の仕事疲れの眩み方では無い。


『目の前の女子高生、いや、女性の髪質と仄か残るシャンプー、生活臭の香りがブレンドした世界に一つだけのフェロモンのせいだ』


 麻薬と言うものはやった事ないが、この様な突発的衝動に恍惚な症状が出る物なのかと、違法麻薬、ドラッグに溺れる人達の気持ちに少々賛同できる気がする。

 彼女と言う存在の合法ドラックの塊、これ以上長い時間近くにいると溺おぼれてしまう。


『他の奴等に分けたくない…はっ何を考えているんだ……』

頭がおかしくなりそうだった。


(お待たせ致しましたーーーー終点○○駅に到着致しました)


 『あっ、部活の先輩に怒られちゃう、速く行かなきゃ!』

この時、僕の中にもう一つの精が現れるとは思ってもいなかった。











ーーーーーーー普通で真面目まじめな人ほど変わると恐おそろしい物だ。




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