【3】

第5話 大方

 「それで、それからさっき言った様に噂が広がった。俺が殺したっていう。」 

 こいつは罪から逃れただけで殺人犯だということに変わりはない。

 だから俺からするとこんなにのうのうと、堂々と噂が広がったと言うのは腹が立つことだ。

 「で、それからその安田ってやつにも広まって振られたとかいうオチか?やっぱ恋愛関係でイメチェンしたんだろ、圭悟。」

 そう言って嘲笑った、俺にしてはモラルの無い様なことをしたと思う。

 圭悟の様子を伺うとさっきまでの顔とは違う表情をしていた。

 怒りに、満ちていた。

 「いや、違う。安田さんはずっと俺の味方でいてくれた。」

 なら、良かったと安心して胸を撫で下ろした。

 しかしまた表情を変えて、次はわかりやすいほどに落ち込み、悲しいような顔をして見せた。そして「まぁ、」と吐いてから。

 『彼女が失踪するまでは。』

 と言った。


 「その安田ってやつ、失踪したのか?」

 なら俺にする相談というのは、圭悟が警察に相談する内容と何ら変わらないような話になるのだろうか、と思っていたが違った。

 家出なんてものでも、この生活にうんざりして誰にも言わず海外に行ったのでもない。

 圭悟は1つの紙をポケットから出した。

 「なんだ、これ?」

 「まあ、開けてくれ。」

 遺書じゃ、ないだろうな?と、ドキドキしながら開くと、信じられないような内容だった。

 いや、大衆は、以前の俺なら信じられない話だ。

 今の俺はすんなり状況を受け入れた、だから圭悟は俺に相談したんだ、と理解した。

 『私は紫色の星。宇宙人に狙われてる、殺されるかもしれないから、私がここにいると君たちが危険な状況になりえない。だから私は消えるけど、探さないで。』

 「俺、この文を読んだ時、また安田さんのおふざけだと思ったけど何ヶ月も学校に来なかったし、連絡もつかないから。」

 そして圭悟は俺のことを最近知った、俺の母が宇宙人で、俺が宇宙人のハーフだと。

 「紫の星ってなんだと思って調べたんだけど、存在しないんだって。でもそれは地球から見ての話しだろ?」

 「ああ、俺は宇宙で見たよ。紫色やら緑色の星をたくさん。」

 また圭悟の表情は変わり、少し明るくなった。

 希望を持てたようだった。

 でも、それじゃ解決するわけでもなく。謎だらけだ。紫色の星があったのは確かだがその人が星だというのも意味がわからない話だし。

 そして俺の母以外にもこの星には宇宙人がいるという事実。

 お母さんが宇宙人だと知る前から地球には地底人がいるとか、あの政治家は宇宙人だとかいう都市伝説を聞いてはいたけど。それは本当だったのか。

 「なあ武瑠、正直俺はこれ以上何もできないんだよ。宇宙をよく知ってるわけじゃないし、宇宙人のことも全くわからない。」

 だから、俺の助けが必要だったわけか。確かに俺ならなんの躊躇もなくお母さんに色々聞けるから、力にはなれる。

 「わかった、圭悟。お前の頼みだ、助かるよ。」

 「ありがとう、武瑠。」

 この時、やっとあの時の感覚が戻った。

 俺がまだ圭悟を友達だと認識できた、あの日々のだ。

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