第310話 激しく火花を散らして

 どうしてかカルナ島は光り始めていた。その光は明らかにラグナロクが始まる際の光であった。


「ラグナロクが……」


 イージスは脳裏に最悪の考えを抱いていた。


「ノーレンス聖、今すぐあの島に転移を」


「ああ。判った。アタナシアはここに残ってーー」


「ーー私も行く」


 アタナシアは強い意思を持ち、ノーレンス聖へ言った。

 ノーレンス聖は断ろうとするも、説得する時間すらも惜しかった。仕方なくアタナシアを連れ、カルナのいる島へ転移した。

 転移した直後、無数の機械がノーレンス聖、イージス、アタナシアを囲んでいた。さらにはアーティファクトシリーズのオーズまでもがノーレンスらに敵対意識を向けていた。


「アタナシア、君を殺すのは惜しいけれど、邪魔をするのなら殺すよ」


「オーズ、これがお前のしたいことか」


「俺の意思は全てカルナ様の意思だ。つまりこの儀式を止める者は全て敵だ」


 そう言い、オーズはアタナシアへと飛びかかる。だがそのオーズをノーレンス聖は蹴り飛ばした。


「アタナシア、カルナと決着をつけにいくのだろう。なら早く行け。イージスはアタナシアのサポートをしてやれ。ここは私一人で十分過ぎる」


 ノーレンスはイージスとアタナシアへ背を向ける。


「早く行け」


「ノーレンス聖、必ずカルナを倒します」


「ああ。頼んだぞ」


 イージスとアタナシアはカルナの研究施設へと向かう。

 彼らを追おうとする機械たちを、ノーレンス聖は閃光によって破壊していく。


「さすがは魔法聖」


「オーズ、お前の顔、潰れてるぞ」


「ああ。すぐ戻る」


 ノーレンスの蹴りによって潰れた顔は、一瞬にしてもとに戻った。オーズは頭から二本の角を生やし、鋭い牙を生やし、筋肉質な腕を構える。その腕には冷気が纏われている。


「オーズ=アーティファクト、俺は他のアーティファクトよりも強いぞ」


「安心しろ。即死だ」


 オーズの腹部へ十の閃光が槍の如く貫通する。しかし体はすぐに再生し、腹に空いた穴は修復する。


「俺は限りない不死、傷を負ってもすぐ修復する。さあ、俺を倒せるか」


「なんだ。弱点だらけじゃないか。お前相手に十秒もあれば十分だ」


「そう。だが残念。俺は量産型でな、三万体、合計何時間かかるかな」


 無数のオーズがそう言った。

 だがノーレンスは動じる様子はなかった。むしろたった三万かとがっかりしているようだった。


十分じゅっぷんもあれば十分じゅうぶんだ」


 ノーレンスへ飛びかかるオーズたち。彼らへ向け、ノーレンスは手をかざす。


「終わりにしよう」



 ノーレンスがオーズらを相手のしている間に、イージスとアタナシアはカルナのいる部屋へと走っていた。

 カルナの部屋まで着く道の間に何体も機械兵が邪魔をするも、それらをいとも容易く斬り裂き、イージスとアタナシアは進んでいた。

 カルナも部屋の前に着く。その扉の前には、謎の少年が立っていた。


「アタナシア、奴も」


「ああ。クロノス=アーティファクト、時間に干渉できるアーティファクトの中でもかなりの最高傑作だ」


「時を操るか。ならこいつの相手は俺がする。その間にカルナと決着を着けてこい」


 イージスは夕焼けの剣を握り、クロノスへ駆け出した。


「時を干渉するとアタナシアがわざわざ教えてくれただろ。君は終わりだ」


 クロノスは、まるで時計のような眼球をしている両目でイージスを見た。それでイージスの体は時間が止まり、動けなくなるなるーーはずだった。

 だがイージスはそれを破り、クロノスを蹴りで扉から吹き飛ばした。扉は壊れ、部屋の中に倒れ込む。


「残念だったな。俺は一度時を操る奴と戦っている。お前なんかよりもよっぽど強い奴とな。奴によって時に干渉させられた俺も、多少時に干渉できる」


「くそ……」


 クロノスはイージスを睨み付けた。

 イージスは笑みを浮かべ、クロノスを見下ろす。


「さあ見せてくれよ。貴様の力を」


「クロノス、時を操るお前が膝をつくとは、驚いたよ」


 余裕をかまして現れたのは、背後に太陽を背負うカルナ=サン。


「全く、面倒な話だ。私が直々に殺してあげよう」


 そう言うカルナの前に、アタナシアは強く大地を踏みつけて立ち塞がった。アタナシアのその行動に、カルナは感心していた。


「あのアタナシアが戦おうとしているのか。ならばかかってこい。返り討ちにしてやろう」


 カルナは太陽を背中に、アタナシアへ手をかざす。アタナシアは勇気を纏い、カルナへと駆ける。


「因縁に決着をつけよう。カルナ」

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