六年生編
第307話 春の香り
世界は純白の光に包まれた。
ゼウシアは倒された。
ラグナロクはイージスたちによって阻止された。しかし不思議なことに、そこにゼウシアの残骸は残ってはいなかった。
「ラグナロクは、終わった……」
イージスはボロボロの体で立ち、静かな呼吸を奏でながら空を見上げていた。
イージスの足元には、エル=グランヒルデとノーレンス=アーノルドが倒れていた。
「全て……終わったのか……」
〈魔法師〉は一斉検挙され、全員もれなく魔法聖アイリスなどの魔法使いによって造られた魔法監獄島に拘束されることとなった。
捕まっていた『鍵』も全員救出された。その中には長らく行方不明だったゼウ=フリーデンの姿もあった。
生き返ったタイヨウ帝国の者の多くは戦いに協力的ではなかったらしく、この長い戦いに終止符は討たれた。
それから数日後、ノーレンス聖は名門ヴァルハラ学園に復帰した。
イージスたちは六年生に上がった。
ヴァルハラ学園の屋上で、イージスとアニーは楽しげに話していた。
「俺たちももう六年生か」
「うん。ここまで私たち、たくさんのことがあったよね」
「ああ。だがこれでもう俺たちは解放されるんだ。〈魔法師〉の恐怖から」
そう安堵するイージス。アニーも喜びの笑みを浮かべていた。
だがそこへ、
「イージス」
「ノーレンス聖!?」
「君に会わせたい人がいる」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「ノーレンス聖、俺に会わせたい人とは誰でしょうか?」
「ラグナロクは失敗に終わった。とはいえ、ゼウシアが未だ行方をくらましたままだ」
「ええ。そうらしいですね」
「そこでいろいろと探ってみたんだが、ある事が分かった。秀才アマツカミ学会の会長ーーセイバー=アマツカミ、彼は何かを知っている。ゼウシアに関わる何かを」
ノーレンスが得た情報、それが真実か確かめるため、イージスはノーレンスとともに秀才アマツカミ学会へと向かった。
イージスとノーレンスを迎えたのは、ダイニングとリューズであった。
「会長が待ってる」
ダイニングとリューズに先導され、イージスは会長の部屋へと案内された。二人はスフィア奪還の際に戦った相手であった。
案内している中、歩きながらリューズは訊いた。
「なあイージス、お前が世界を救ったのか?」
「ああ。そうだな」
「やはりそうか。やっぱお前は強いよ」
リューズはイージスの顔を横目で見ると、寂しそうに笑った。
「イージス、お前変わりすぎだろ。最初に戦った時は全く強そうじゃなかったのに、今のお前からは弱さを感じない。大人びたな」
「ありがとうございます」
リューズは足を止めた。
「イージス、私はさ、こう見えても君を認めていたんだよ。どんな時でも諦めず、不条理を覆す君という存在に。だから心のどこかで君をライバルだと思っていた。だけど君は私の想像の遥か先をいった。ちょっと……寂しかったよ……」
リューズは強く拳を握り、唇を噛んでいた。
「なあイージス、強いな。お前は」
イージスが返答に困っていると、リューズは足を進めた。
「では会長のいる部屋まで案内します」
会長の部屋へ案内され、リューズとダイニングは部屋の外で警備をしるために立っていた。
「なあリューズ、どうしてあんなことを言ったんだ?」
「さあな。私にも分からないよ。ただ、ただ悔しかったのかもな。私では届かないような遥か高みにまで上った彼には、私では届かないのだと」
部屋の中では、会長セイバー=アマツカミとノーレンス、イージスが向かい合っていた。
セイバーはイージスを見るや、単刀直入に言った。
「〈魔法師〉のリーダーのゼウシアは……カルナの作ったアーティファクトだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます