第306話 父と子
ムラサキの裏切りに、イージスは動揺していた。
「さてとイージス、悔しいのならかかってきなよ。たとえ家族でも、ラグナロクを阻止したいという気持ちが半端なものでないのなら、相手が誰であろうと戦えるだろ」
イージスは戸惑い、迷っていた。
だがイージスは見た。微かにも震えているムラサキの腕を。彼女も同じように拒んでいるのだ。家族と戦うことを。
だがムラサキは覚悟を決めているようだった。だから剣を振るい、イージスを吹き飛ばした。
「イージス、剣を握れ。本当に世界を救いたいのなら」
「世界を、か……」
イージスは背後にいるブックやクイーンらを見た。
彼らは全員イージスの勝利を待ち望んでいるのだ。彼は今まで何度も世界を救ってきたから、何度も負けて、立ち上がってきたから。
戦って戦って、彼は何度も勝利を掴んできた。
戦いの末に、彼は勝った。それは彼が一度負けても、何度でも立ち上がったからだ。
「イージス、勝って」
「イージス、任せた」
「俺たちじゃ勝てない。だから頼んだぞ」
「イージス」「イージスぅぅう」「イージスちゃん」「勝てよ」「イージスっ」「俺たちのイージス」「負けたら許さねーぞ」「勝ちやがれ」「良いところ見せろよ」
イージスは剣を強く握った。
彼は『鍵』を開いてはいないーーはずだ。だが彼は確かに純白の光を纏っている。
「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ」
イージスは剣を力強く握り、それをムラサキへ振り下ろす。
「私は、負けられない」
ムラサキはイージスの剣を懸命に受け止める。イージスの迫力に気圧され、ムラサキは圧倒されていた。吹き飛ばされ、イージスはゼウシアへと向かう。
それを阻止しようとトールやヘラヘラはイージスへと駆けるも、その前に一度彼らに倒されたはずのサーやヘラクレス、ギルヒメシュにモードレッドは立ち上がり、立ち塞がる。
「俺は全てをあいつに託す」
「イージス=アーサー、英雄の邪魔はお前らにはさせない」
「彼に光あれ」
多くの人々に救われ、多くの人々に支えられながら、イージスは今ゼウシアへと剣を振り下ろした。
「イージス」
「ゼウシアぁぁぁああああああああ」
イージスが振り下ろす剣を、ゼウシアは純白の光を纏い、雷電を纏う剣で受け止めた。
「ゼウシア、ここであなたを討ち、全ての災厄に終止符を討つ」
イージスとゼウシアは激しく戦闘を繰り広げる。純白を纏う剣と剣の衝突、イージスは蹴りを受けて吹き飛ぶも、足を地面から離さぬまま気合いで堪え、ゼウシアへ飛びかかる。
「はぁっぁぁああああああああ」
「いい加減倒されろや」
ゼウシアとイージスの剣は激しくぶつかった。
「イージス、なぜそこまでしてこんな醜い世界を護ろうとしている。魔法がなければ人は強欲になることもなく、苦しむ者もいなくなる。その世界をお前はーー」
「ーー否定する。お前によって支配された世界に意味があるか。ない。生きていることに意味を得るために、俺たちの世界は壊させない」
「それが貴様の」
「これが俺の選択だ」
ゼウシアの剣がイージスの腹へ突き刺さった。血を吐いて膝をつきそうになるイージスであったが、強く己を鼓舞し、イージスは倒れずに踏ん張った。
イージスは叫びながらゼウシアの心臓へ剣を突き刺した。
「ゼウシアぁぁああああああ」
「これが……貴様の……」
直後、世界は純白の光に包まれた。
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