第305話 思いはぶつかり
「イージス、いつまでもそこにいられても邪魔なんだよね。だから死んでくれるかな。ペンタゴン」
ペンタゴン=アーノルド、魔法牢獄に囚われていたはずの彼であったが、魔法牢獄がゼウシアによって消失したことで、ペンタゴンはイージスの前に降り立った。
「あの時の借りを返させてもらうよ。イージス=アーサー」
イージスは起き上がることもせず、横たわったまま絶望にうちひしがれていたーーはずだった。
だが少年は今、剣を持って立ち上がった。
「心が折れていないのか」
「もう散々折れたさ。何度も失って、その度に苦しんで、そうやって俺は挫けてきた。苦しんできた。だがそれももうここで終わりにする。ラグナロクは全力で阻止させてもらうぞ」
イージスは夕焼けの剣を握り、ペンタゴンへと駆ける。
ペンタゴンはイージスへ雷撃を放つも、それをかわし、イージスはペンタゴンの右肩から左脇腹にかけるまで傷をつけた。
「『鍵』がないから弱いだと?これまで多くの人に支えられて生きてきたんだ。だから俺は『鍵』がないと弱い。それでも俺はお前に勝つ。今まで支えてくれた大切な人を救うために」
「こいつ……」
「ペンタゴン。絶対に奴を殺せ」
儀式に集中したいゼウシアは、ペンタゴンへそう叫んだ。
「了解です」
ペンタゴンはイージスへ魔法を放つが、剣で弾かれ、傷を負わされる、
「このままじゃ……」
ペンタゴンを追い詰めている最中、側面より雷撃が地を駆けてイージスへ襲いかかる。それを紙一重で回避し、イージスは剣を身構えた。
「トールか……」
「俺だけじゃない」
イージスの背後より大鎌が横一閃に振るわれた。それを剣で防ぎ、距離をとるーーが、突如イージスの前に現れたエイリアンが拳を振るい、イージスを吹き飛ばした。
イージスはその場に倒れ込む。
「ラグナロクは止めさせないよ」
エイリアンは拳を鳴らし、そう言った。
倒れるイージス目掛け、ペンタゴンは雷撃を放つ。だがその時、その攻撃は白い光の壁に防がれた。
「レンタル魔法〈
一枚を札を掲げた少女が、イージスの前には立っていた。
「イージス、こんなところで倒れているんじゃねーよ」
そう言って振り返ったのはクイーン。
彼女だけではない。アタナシアにブック、スカレアにピット、などなど、ヴァルハラ学園の仲間がそこにはいた。
「どうして……」
「どうしてって、決まっているだろ」
「「「大切な友と一緒に、大切な世界を護るためだ」」」
「イージス、勝負はこれからだろ。勝とうぜ。この戦い」
クイーンは倒れているイージスへ手を差し伸べた。その手を掴み、イージスは立ち上がった。
「ああ。倒れてなんかいられないな。勝つぞ、ここで」
イージスは剣を握り、ゼウシアへ向かって走る。それを阻もうとするペンタゴンとトールを剣で弾きながらかわし、ゼウシアへと剣を振り下ろしたーーその時、
「待て。イージス」
その声に、イージスは耳を疑った。
今ゼウシアを護ったのは、姉であるムラサキ=アーサーであったからだ。
「どうして……ムラサキお姉ちゃん!?」
イージスは驚いていた。
そんなイージスへ、ゼウシアは言う。
「俺が魔法牢獄に囚われている際、この島の人々が復活した。それはこの島に『鍵』を用意していたからだ。ではその『鍵』を開いたのは誰だ?それはさ、ムラサキさ」
「どうして……ムラサキお姉ちゃん……」
動揺するイージスを睨み付けながら、ムラサキは言った。
「いつの日か私はお前に言っただろ。大切な友人を失ったと。このラグナロクが成功すればその友人はゼウシアは蘇らせてくれる。だから私はこの計画に協力しただけだ」
「そんな……」
「イージス、お前にはお前の大切なものがあるように、私にも私なりの大切なものがあるんだ。それを邪魔はさせない。だからイージス、私はここでお前を殺す剣となる。ラグナロクは絶対に阻止させない」
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