第302話 ラグナロクまであと一時間
枯雪島の各地で戦いが起こるなか、クレナイは一直線にタイヨウ帝国の遺跡へと突撃を仕掛けていた。
クレナイは火炎を纏う刀を手に、縦横無尽に暴れまわっていた。
ただ一直線にゼウシアを目指す彼女の前に現れた七罪人ーーペインとフラッシュを刀の一振りで吹き飛ばした。
「邪魔をするな」
クレナイの猛攻は止められず、ゼウシアのいる巨大な遺跡の前まで来ると、足から火炎を放出し、頂上へ全身に火炎を纏いながら突撃した。壁は粉砕され、クレナイは玉座の前に現れた。
その玉座に座るゼウシアへ刀を向け、クレナイは言う。
「ゼウシアよ。決着をつけようか。そしてノーレンスを返してもらう」
「ようやく来たか。魔法聖クレナイ=アズマ」
ゼウシアは電撃を纏う剣を召喚し、それを握りしめた。そしてそれをクレナイへ向け、叫ぶ。
「残り一時間、それで世界は我がものとなる。さあ絶望に飲まれるがいい」
「させるか」
クレナイとゼウシアの刃は激しくぶつかり合った。
電撃と火炎、それが激しく衝突し、彼らが戦っているそこ最上階の天井と壁は跡形もなく消えていった。
それを先ほどその遺跡の前に到達したばかりのサーは驚いていた。
「これが……最強たちの力か……」
「おっと、この先は進ませないよ」
サーの前に立ち塞がったのは、電撃を纏う巨大なハンマーを肩に担いでいる男ーートールであった。
「駄目だよ。魔法聖とゼウシアの一騎討ちを邪魔したら」
「すまんが、世界の終焉がかかっているのにそうは言ってられないんだよ」
サーは天使を召喚し、トールへぶつける。しかしトールはハンマーの一振りで天使を弾き飛ばした。
「あまり舐めるなよ。この程度で倒せると思うな」
トールは見下すようにサーへ視線を向けた。
「やっぱ君たちは強いよ。だから、俺も本気を出そう。魔力、全開」
サーからは膨大な魔力が天使へと流れる。その魔力を受け取った天使は起き上がり、剣を握って再びトールへと剣を向けた。
「それがお前の全力か」
「これが俺の全力だ」
「良いだろう。ならば全力で討ち滅ぼしてあげよう。雷鎚、
トールのハンマーからは巨大な電撃が周囲へと放たれていた。それを構えるトールに、サーは天使へ魔力を送り、戦わせる。
「倒せ。トールを」
「さあ、来い」
正面入口でトールとサーはぶつかる中、右側にある入口にはヘラクレスとギルヒメシュが到着した。
しかし彼らの前にもサーと同様、立ち塞がる者がいた。
「君たちの相手は私が引き受けよう」
そう言い巨大な鎌を振り回すのは、女王ーーヘラヘラ=ナイトクイーンであった。
「ギルヒメシュ、君は後衛から援護を頼む。奴と正面から渡り合えるのは、
「さすがは不滅の英雄様だ。だがたとえ不滅の君でも、私の固有魔法に耐えられるかな?」
「足りなければ気合いで補うまでだ。一応俺は名士四十一魔法師だ。世界を護る義務がある。その責任は最後まで果たさないと、そうでなくちゃ、俺は俺を嫌いになる」
ヘラクレスは英雄の剣を握ると、ヘラヘラへ言った。
「貴様らの野望は全て俺たちが砕く。だから精々悔やめ。禁断の儀式ーーラグナロクを行おうとした大罪を。今ここで俺がお前らを裁く」
そして正面から左の入口では、モードレッドがエイリアンによって道を塞がれていた。
「エイリアン、貴様には恨みがある」
「ああ。そうだろうな」
「あの島で貴様が使った禁忌の魔法により、私の家族は死んだ、あの島の人々が大勢死んだんだ。だから私は貴様を殺すまで貴様を許さない。貴様を殺しても貴様を許しはしない」
モードレッドは赤く輝く杖を構え、エイリアンへと向けた。
対してエイリアンは魔導書を手にし、モードレッドを前に笑みを浮かべる。
「我々はもう後戻りはできない。だから本気で相手をしよう。貴様らの相手を」
「そうでなくちゃ、私は全力で貴様を殺せないだろ」
モードレッドとエイリアンも激しく衝突する。
枯雪島の決戦も、とうとう終わりが近づいていた。
タイヨウ帝国の遺跡へ続く道には、体から黄金が消えたハンゾウが血まみれの腕を押さえながら倒れているペインを見た。
「こんなところでやられてんじゃねーよ。拙者の復讐をひとつも叶えさせてくれないのかよ……」
炎上島で黄金へ変えられた者たちはもとに戻っていた。
ーーその頃、海岸では
「アニー、もう一度転移を頼めるか?」
「分かった」
少年は四人の『鍵』とともに、枯雪島へ降り立っていた。
「ゼウシア、このラグナロク、この世界に生きる全ての者のために阻止させていただく」
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