第300話 虚飾の弱者
クレナイは最北端にあるタイヨウ帝国の遺跡へと向かっていた。
その頃、魔法ギルドの金色魔法使いーーサーは天使を召喚し、ヴィアの召喚した悪魔騎士と戦わせていた。
天使の剣と悪魔騎士の剣がぶつかり合う度、周囲はその衝撃に破壊される。
「なあヴィア先輩。あなたは生き返ったことで嬉しかったですか?」
天使と悪魔騎士が戦闘を繰り広げている間に、サーはヴィアへ問う。
「嬉しい?別に、特別そんなこともなかったよ」
「じゃあ何のために戦っているのですか?」
「君は難しいことを訊くね」
「操られているわけじゃないんだろ。だったらなぜ戦うのですか?戦う意味なんてないんじゃないのですか」
「確かにそうかもね。まあ実際、君たちと戦う理由なんてないよ。というか君のような人物が私のことを知ってくれているなんて感激だよ」
「当たり前ですよ。あなたは私の学園の先輩ですから。知らないはずはない、というか、さりげなく話を逸らさないでください」
「理由ね。戦う理由はないさ」
「それでもあなたは立ち塞がる」
「私だって自分がまさかこんなにも強情な奴だとは思っていなかった。だがこの戦いを私は無視することはできないと思っただけさ」
「どういうことですか?」
「理由はないというのは嘘だ。だが私が今君と戦っている理由は極めて曖昧なものだ。だから私は君に理由を言うことはできない。言葉にできないんだ」
「それがあなたの
悪魔騎士は天使によって落とされた。地面に転がり、悪魔騎士は剣を手離していた。
「ヴィア先輩、私があなたを殺します」
天使は悪魔騎士の首を斬り落とした。
その後、サーが折り曲げた腕をヴィアへと向けるとともに、天使の剣はヴィアの心臓へ向けられた。
「先輩、あなたは一度死んでいる。そんなあなたを再び殺さなければいけないなんて、世界は相変わらず不条理に不平等で、相変わらず……虚しい」
「良いじゃねーか。きっといつか、その虚しさが晴れる時が来る。私も、そうだったからな」
そう言って、ヴィアは温かい笑みを浮かべた。
サーは躊躇いながらも、悔やみながらも、それでも天使の剣を一直線に進めさせた。
「さようなら。ヴィア先輩」
ヴィアの心臓は貫かれた。
ヴィアは血を吐き、天を仰いだ。そして静かに倒れていき、地に横たわる。
「ああ。また戻ろう。天国に、私がいるべき場所に……」
ヴィアは白い光の粒となり、天へと上って消えていった。
「さようなら、ヴィア先輩。あなたのおかげで決心がつきました。私は、この虚しさが消えるまで戦い続ける。たとえ悪魔となっても」
そう言い、サーは強く拳を握りしめた。
「私に救世主はいない。だって、私は罪を背負っている。一生消えない大罪を。彼女を……ブレイドを護れなかった大罪を……」
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