第298話 枯雪島奇襲

 枯雪島。

 その島の玉座に腰かけているゼウシアに、ヘラヘラは笑みを浮かべながらとある報告をした。


「アポレオンちゃんが死んだよ」


「そうか。奴には魔法牢獄を内側から突破するために魔法牢獄へ囚われてもらったから、そこで腕が鈍ったのだろうな。まあここまで兵が集まれば一人や二人倒されたところで支障はない」


を成すために、今は無慈悲にも兵を使い捨てるしかないからな」


「なーるほど。でも残念なお知らせがあるんだけどさ、聞きたい?」


 ヘラヘラは上目使いでゼウシアへ視線を送る。ゼウシアはそれほど動揺はせず、「何だ?」と聞き返した。

 するとヘラヘラは言う。


「魔法ギルド、並びに名士四十一魔法師の連合がこの島に向かってきています。恐らく、あと十秒ほどで着くでしょう」


「魔法要塞で足止めをしろと伝えておけ」


「既に伝えておきましたが、恐らく容易く突破されるでしょう。というかもう既に、何者かによって魔法要塞の一部分が機能を停止しています」


「まあ良い。なら戦力をそこへ集結させろ。敵を追い払え」


「了解しました」


 ヘラヘラはそう言うと、大鎌を振り回しながらその場から離れていく。

 その頃、既に魔法ギルドと名士四十一魔法師の連合が機能を停止した魔法要塞から枯雪島へと上陸していた。


「敵はこの島の最北端にあるタイヨウ帝国の遺跡にいるであろうゼウシアだ。そこに囚われているノーレンス聖を解放し、ラグナロクを絶対に阻止せよ」


 先陣を切るクレナイの叫びとともに、一斉に魔法使いは枯雪島を駆ける。


「ノーレンスをも捕らえる力を持つゼウシア……それでも、何としてでもお前を倒さなければならない」


 クレナイは北を目指して駆け抜ける。だが彼女目掛け、二人の女性が足を振るいながら降りてきた。クレナイは咄嗟に火炎を纏わせた刀で弾き、敵を拝む。


「五神か。いつまで経っても成仏できないのか。お前らは」


 クレナイの前に現れたのは、五神のスーウェン=イーストとスーザン=サウスであった。


「死ねないさね。あと一歩で世界を征服できそうだったのに、邪魔が入らなければ侵略していたさね」


「傲慢極まりないな。過信、軽率、それがお前らの敗因だというのに、それを分かっていないようだから思い知らせてあげるよ。君たち五神は魔法聖には敵わないと」


「言ってくれるじゃないか。なら、とくと味わうさね。五神の力を」


 スーウェンとスーザンはクレナイと激しく衝突する。

 クレナイが五神の二人を相手している間に、魔法ギルドと名士四十一魔法師が枯雪島の中へ中へと入っていく。

 そして魔法ギルドの最上級の階級である金色魔法使いの一人であるサー=ヴァントは、天使を召喚して次々と敵を倒していた。


「サー。歴代屈指の召喚魔法の持ち主。だから君の相手は私が努めよう」


 暴れるサーの前に立ち塞がるは、かつて召喚魔法の使い手として名を轟かせた魔法使いーーヴィア=オルフェウスであった。


「嫌だな。どうして立ち塞がるのですか」


「お前の相手をしてやるためだ」


「結構ですけど。正直、あなた方と戦うのは嫌なんですよ。だから速攻で決着を着けてしまいましょうか」


 サーは更に血を流した。

 それにより、サーの召喚している天使の力は増した。


「さあ終わりにしましょう。天使よ、全てを破壊しろ」


 その指示の下、天使は剣を天高く振り上げた。その剣には激しい閃光が纏わりつき、暴風のような威力の風を引き起こしていた。


「振るえ。閃光竜巻斬」


 天使が剣を振り下ろした瞬間、閃光と暴風が入り交じる攻撃が枯雪島内の要塞を破壊した。

 その一撃によって巨大な煙が周囲を舞う。その中に、何者かが堂々としたたたずまいで立っていた。


「あの一撃に耐えるか」


「サー。少しぐらい楽しんでいけ。楽しませてやるから」


 ヴィア、彼女は全身漆黒の鎧を纏い、漆黒の霧を纏い、黒い剣を構えている謎の騎士によって防がれていた。


「それがーー」


「これが私が召喚した悪魔ーー〈暗黒魔天騎士ディオ・デビルズ〉。君のと相性は良いと思うよ。まあ、私の悪魔が勝つけどさ」


「それは面白いことを言うね。でも大丈夫。私の天使が負けることは絶対にないからさ。さあ〈深紅血贄天使ブレイド・リエル〉、殺してしまえ。我々に挑んできた哀れな召喚魔法の使い手さんを」

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